――空手をやられているのですか。財木さんの、ヒーローらしいたくましい雰囲気はそこから来ているのかもしれません。

父親が沖縄古来の流派「心道流空手」の先生で、2人の姉といっしょに幼稚園の年少のころから教えてもらっています。それから上京するまで、ずっと空手は続けていました。

――お父さんとしては、息子である財木さんの心と身体を鍛えようという思いがあったのでしょうね。

自分としては、厳しく育てられたと思っています。子どものころは父が恐くて恐くて……(笑)。ふだんは優しいんですけれど、怒るときは鬼のようになるんです。父からは空手を通じて、肉体的にも精神的にもいろいろなことを教わり、鍛えてもらいました。

――財木さんが演じられる今生勇道、幼なじみの蓮太郎が仮面ライダーシノビであることを知らず、大好きな紅芭をめぐるライバルだと思っている大会社の御曹司という、ユニークなキャラクターですね。役を演じてみて、勇道にどんな思いを抱かれましたか。

お高くとまってはいるけれど、少しヌケている男ですね。紅芭を慕うあまり、工作や策略を仕掛けて、最悪のパターンに陥ったりするけれど、なんだか憎めない。やっていることがすべて可愛く思えるような人物だと思いました。演じていてとても楽しかったです。

――蓮太郎役の多和田任益さんは、かつて『手裏剣戦隊ニンニンジャー』でスターニンジャーとして活躍されていた経験のある"ヒーロー"の先輩ですから、変身のときに何かアドバイスがあったりしましたか?

多和田さんとは、以前『テニスの王子様』のミュージカルで「同じ役(手塚国光)」を演じたという接点がありましたので、このような形で共演することができたのはうれしかったですね。ハッタリの変身ポーズを練習しているとき、多和田さんから「イッチー(勇道)はお金持ちなんだから、お札をばらまきながら変身したらどうかな?」なんてアイデアが飛び出しました(笑)。

――柴崎監督からは、勇道の役柄についてどんな指導がありましたか?

明るい男を演じてほしいと言われました。いくつかの場面でのテンションについて細かな指示がありましたが、基本的に僕の好きなように演じさせていただきました。

――初めてハッタリに変身したシーンを撮影したとき、どんな気持ちになりましたか。

それはもう、変身ベルトを着けた瞬間に「いま俺は、仮面ライダーに変身しているんだ!」と、ものすごく実感がわいたんです。今回のドラマでは、エキストラとして多くの子どもたちが参加してくれましたが、僕がベルトを着けて出てきたのを見たとたん、それまでと雰囲気が変わって、何も言わずニコニコしながら近づいてきて、僕の太ももに抱きついてきたことがありました。そのとき「うわ、可愛いな!」と叫んでしまい、改めて仮面ライダーの、ベルトの"力"のすごさを実感しました。本番前に、変身ポーズの練習をしていたときも、見つめている子どもたちの目の輝きが違うんです。

――シノビには、「『忍』と書いて刀の心、仮面ライダーシノビ!」という決めゼリフがあって、『仮面ライダージオウ』のテレビシリーズに登場したときもカッコよく言い放っていましたが、ハッタリにもそんな決めセリフがありますか?

あります! 敵に向かって「お前を片腕5秒で倒す。ハッタリじゃなくてマジでな!」というセリフです。「5秒で」というのがカッコいいんですよ。

――ご自身が変身した姿である仮面ライダーハッタリに初めて出会ったときのお気持ちを聞かせてください。

それはもう、カッコいいという思いしかなかったですね。姿はシノビに似ているのですが、シノビとは色が違っていて、顔についている手裏剣の形も異なっているんです。いかにも忍者の仮面ライダーという趣で、気に入っています。

――仮面ライダーならではの、アクションシーンについてのご感想を聞かせてください。

僕自身が生身で行うアクションはそれほど多くなかったのですが、多和田さんと2人で動きを合わせて、敵の攻撃をよけつつこちらから仕掛ける、みたいなアクションがありましたね。変身後のアフレコでも、僕が"声"を入れる際に「俺はハッタリなんだ」と頭の中でイメージするよう、心がけていました。

――戦闘のかけ声をアフレコで入れるのも、たいへんなのではないですか

初めはやはり難しかったですね。でも、敵と戦っているハッタリに僕(勇道)の声が入ることによってキャラクターが完成するわけですから、気合いを入れて挑みました。アフレコのときに感心したのは、ハッタリがやられたときに思わず「クソーッ」と叫んだとき「それはNGで」と言われたことです。子どもたちのことを考えて、つかわないようにしている言葉があるなんて、ほんとうにすごいなって素直に思いましたね。

――蓮太郎の妹であり、シノビに憧れる紅芭を演じる華村あすかさんとも、早いうちから打ち解けられたそうですね。

短い期間の撮影でしたし、初共演の方と"壁"を作ってしまうのはもったいないですから、できるだけすぐ仲良くなりたかったんです。話すきっかけを作ろうとして、木の実を枝に挿してみたり(笑)。撮影の合間をぬって、自分なりの遊び心を出してみました。そういうのが少しでもあったら、周りが笑顔になれるんじゃないかって思ったんです。ふだん黙っているとクールな奴だと思われてしまうことが多いので、そんなんじゃないよ~恐くないよ~っていう部分をどうやって出そうか、いい雰囲気作りに努めていました。

――今回は勇道の会社が主催した「忍術大会」が主体となった3つの連続エピソードが作られましたが、もともと2022年のテレビシリーズとして作られた設定の『仮面ライダーシノビ』だけに、このあとも物語がどんどん続いていきそうな雰囲気ですね。

そうなんです。今回は全3話と短いですから、あっと言う間にお話が終わって、撮影自体もあっと言う間でした。正直、これからもっと『シノビ』のエピソードが作られたらうれしいな……と思うんです。まだまだ勇道/ハッタリを演じたいので、観てくださる方たちが『シノビ』のキャラクターそれぞれを愛してくださり、応援していただければありがたいです。

――最後に、今回の『仮面ライダーシノビ』で財木さんがおすすめする"見どころ"を教えてください。

仮面ライダーの見どころはやっぱり「変身」なので、勇道と蓮太郎の「同時変身」シーンのカッコよさには注目してほしいです。そして、紅芭のことがすごく好きで、エピソードの中ではどうしようもない男に見えることがあるかもしれない勇道ですが、「こいつ憎めないな、可愛いな」と思ってもらえるとうれしく思います。『仮面ライダーシノビ』は僕にとって特別な作品になりました。ファンのみなさんには、ぜひハッタリの決めゼリフをマネしてみてほしいです!

『RIDER TIME 仮面ライダーシノビ』は、「東映特撮ファンクラブ(TTFC)」にて、全3話が3月31日、4月7日、4月14日の3週連続で配信される。

(C)東映特撮ファンクラブ (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映