ICLP(インテル コネクテッド・ロジスティック・プラットフォーム)とは
ICLPについては、インテル執行役員 インタストリー事業本部長の張磊氏が説明しました。鈴木氏も言及したように、インテルでは産業ごとに最適化したデジタルトランスフォーメーションの導入を支援していますが、ICLPは“ロジスティック”という言葉が示すように、物流業界におけるデジタルトランスフォーメーションの導入を促進するのが目的です。
張氏によると、物流業界では世界的に輸送品質の問題に取り組んでいるといいます。実は輸送貨物全体の30%が輸送中の盗難や損傷によって被害を受けているのです。その解決において、輸送貨物の位置と状態監視をリアルタイムで実施することは大きな経済効果があると期待されています。
ICLPは、この輸送貨物の位置と状態監視を可能にするソリューションとしてインテルが開発し、物流業界に提案しています。張氏は、倉庫やトラック、貨物機、貨物船など物流ラインのスタートからゴールまでを監視して可視化するのに、コスト効率に優れていると訴求します。
このような、物流ラインにおける輸送貨物の位置と状態を可視化するソリューションはすでに存在しています。張氏は既存ソリューションとICLPの違いについて、コンテナ単位ではなくダンボールといった梱包パッケージ単位という計測密度の高さやリアルタイム監視対応、セキュリティ強度の高さ、そして、より低いコストを挙げています。
ただし、梱包パッケージ単位の計測や独自に衛星通信を用意したリアルタイム監視など、対応しているソリューションもあります。
そこで張氏が特に訴求するのがコスト。データ通信を実行するゲートウェイとパッケージに組み込んで状態監視を記録するセンサータグをそれぞれ別なユニットとして用意することで低コストを実現します。
センサータグでは温度や湿度、衝撃、傾き、照度、そして位置に関する記録をリアルタイムで記録していきます。一方のゲートウェイは倉庫や貨物集積ポイント、トラックの運転席、貨物船のブリッジ、航空機のコックピットなど、電力が供給可能でネットワークに接続できる物流要所に搭載して、センサータグからダウンロードした記録データをネットワークを介してエッジやクラウドに送信します。
梱包パッケージに組み込んだセンサータグは「使い捨て」なため、既存のソリューションにあるセンサーと違って回収する必要がありません(既存センサータグは回収してから記録データをダウンロードして輸送中の貨物に何があったのかを確認できる。それゆえ、盗難や流出、全損などセンサータグを回収できない場合は原因が追究できない)。この回収不要がコストを低くできる理由として張氏は説明しています。
ICLPで、インテルはセンサータグとゲートウェイに組み込む半導体と記録データをクラウドやエッジに送信するネットワーク、そして、これらを制御するAPIを用意します。
ユーザーが記録データを参照して可視化するアプリケーションなどは、物流企業や物流ソリューションアプリ開発企業がICLPの上に実装し、ユーザーに提供します。このアプリケーション部分の開発を日本で早期に手掛けた日本通運の担当者が、ICLP導入のケーススタディを紹介しました。
日本通運取締役 執行役員で航空事業支店長の松本義之氏は、インテルと協力してIoTを活用した輸送状況可視化サービス「Global Cargo Watcher Advance」(以下、GCWA)を開発しています。
松本氏は既存の輸送状況可視化サービスでは輸送貨物に極端な温度変化や衝撃があったことは確認できても、輸送段階のどこで発生したかの特定が困難で、責任の所在が明らかにできなかったのに対して、ICLPの導入で異常が輸送段階のどこで発生したかが特定可能となったことを紹介しています。
また、特定が可能となったことで責任の所在ができるようになっただけでなく、以上を把握した時点で対応するアクションが取れるようになったことで輸送品質の向上も実現できたとしています。
松本氏によると、GCWAの導入で輸送品質が向上したことで高度な温度管理が必要な医療薬物流が可能になったり防振輸送サービス「Logivision」とGCWAとの組み合わせで振動を抑制した輸送サービスが可能になったりと、提案できる場面が増えたといいます。
このような日通の導入事例は、インテルが提供したソリューションによって導入企業のビジネス機会が増えることを示す典型的なケーススタディということができるでしょう。