――最終回は主人公の真実に迫る物語になっていると思いますが、錦戸さんはダークな演技がより魅力的だと思うので、どんな演技を見せてくれるのか楽しみです。
やっぱり彼は影がある役が似合うというか、色気もあるし、その部分が魅力だと思うので、そこをうまく引き出せるといいなと思っています。ちょっとしたとき見せるしぐさだったり表情だったりが他の役者さんには出せない独特の個性だなって思いますね。
――新木さん、船越さんの印象はいかがですか?
新木さんはノンナという役を演じるにあたり、いい意味で明るくおバカさんで、真野という心に壁を持っていて、これまで科捜研の人にも閉じていた人物でもずけずけ入ってくるから、真野もついていかなくちゃいけないキャラクターになっている。それは新木さんが本来持っている明るさや天真爛漫(らんまん)さが反映されていて、いい関係性になったなと思いますね。
船越さんは、もう抜群ですよね! カッコよく決めるところからおちゃめなところ、お芝居の技術も素晴らしいですし、このセリフをこう広げてくれるんだというのがあるし、一番いろんなことを試してやってくださいます。なので安心感というものがすさまじいなというのを現場でいつも感じています。
■テクノ音楽を使用する理由
――松山監督が携わった作品の音楽と言えば『LIAR GAME』や『信長協奏曲』など、 “テクノ”がお馴染みですが、やっぱりテクノはお好きなんですか?
いや実は僕、普段音楽を全然聞かなくて、テクノも聞かないですし、EDM系の人たちのことも全然詳しくないんです(笑)
――意外です! てっきりテクノが好きで、CAPSULE(『LIAR GAME』の音楽を手掛けた中田ヤスタカのユニット)のファンなのかな?と思ってました。
よく音楽に詳しい人だと思われて(笑)。だけどまったく詳しくないですし、むしろ生活の中で音楽がかかっているのが嫌いで、リズムに引きずられるのがすごく気持ち悪いと思っちゃうんですよ。テクノ系の音楽を使う理由は、僕は作ってもらった曲をかなり編集するんです。例えば、決めセリフに合わせて曲のサビが来るように…みたいな編集をかなりするので、そういう場合はやっぱりデジタル系の音楽の方が切り貼りしやすいんですよね。
あと元々そういうデジタル系にいったのは予算の問題もあって、僕が初めてメインのディレクターとして携わったのが『LIAR GAME』で、サブのディレクターをやっていたときから音楽をもっとカッコよくできないかな思っていて。『LIAR GAME』の時は渋谷ビデオスタジオの時代で、その通り道にちょうどHMVがあって、当時CAPSULEがニューアルバムを出して曲がかかっていて、こういうのいいなと思ってお願いしたら…その後すごくブレイクされましたね(笑)。23時台のドラマだったので、フルオーケストラの厚い音楽っていうのはお金がかかってなかなか作れなくって、だから同じ時間同じ予算であれば1人でパソコンで作れるものの方がハイクオリティーなものになるのではというのもあり、そういうところから入ったのでこんな作風になった感じですね。
――監督の作品は『鍵のかかった部屋』は“白”で、『失恋ショコラティエ』は“ピンク”で…と、テーマカラーがあるような気がしています。そして今回はポスターなどにも出てくる手袋やマスクの“紫”が印象的です。いつもテーマカラーを決めて作られるんですか?
そうですね。『失恋ショコラティエ』の時は、“赤”や“白”を基調にしようと思って作ったんですが、今回は実は広報担当が“紫”がいいねって言って決まりました。衣装合わせの時はどれにしようかはまだ決めなくて、その後のポスター撮りも何種類か手袋があってどれにしようかっていくつか試したんです。それからポスターが紫に決まってどんどんそれで進んでいって、意外と紫いいな!って。結果的に『トレース』のイメージカラーにぴったりの色になりましたね。
■真野&ノンナの恋愛模様は…?
――では最後に、松山監督が担当される最終回の見どころを教えてください。
先ほどの話でもしましたが、真野は真実を知らないことが一番つらい、どんなつらい真実であっても人は知ることによって前向きに進めるんだということ一貫して言ってきました。その行動が最後自分に向けられたときにどうなるのか、彼自身が言ってきたように、真実を知ることで前に進んでいけるのか…というのが全体のクライマックスになっているので、真実によって真野の心はどうえぐられるのか?など、そういう部分を見てもらいたいですね。
――ちなみに、真野とノンナの恋愛模様は進展するんでしょうか?(笑)
真野とノンナはちょっとずつ近づいていくとは思うんですけど…やっぱり、どちらかというと、真野と虎丸の方がラブかなと思って作ってます。でも、2人のキスシーンがあるわけではないですよ(笑)
●松山博昭
1973年生まれ、岐阜県出身。上智大学卒業後、98年にフジテレビジョン入社。『LIAR GAME』で初めてチーフ演出を務め、『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』『信長協奏曲』『人は見た目が100パーセント』、現在放送中の月9ドラマ『トレース~科捜研の男~』などを担当。
・対象局:NHK Eテレを除く地上波6局(NHK総合、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)
・サンプル数:関東1都6県、男性480+女性480=計960
・サンプル年齢構成:「10~19歳」「20~34歳」「35~49歳」「50~79歳」各年代男女120サンプル
・調査方法:朝帯からゴールデン・プライム帯のレギュラー番組について月に1度、満足度と感想を収集するウェブ調査
・採点方法:最高点「5」、最低点「1」の5段階評価