アイドルグループ・関ジャニ∞の錦戸亮が主演するフジテレビ系月9ドラマ『トレース~科捜研の男~』が、18日(21:00~22:24)の放送で最終回を迎える。テレビの視聴状況を独自に調査している「テレビ視聴しつ」の満足度によると、初回3.37(5段階評価)だった数値が、1月月間調査で3.63、2月調査では3.65とクライマックスに向けてジワジワと上昇。同調査の視聴者数でも、2月調査では『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)に次ぐ第2位の高数値となっている。

このメイン演出を務めるのは、『LIAR GAME』『鍵のかかった部屋』『失恋ショコラティエ』『信長協奏曲』など、多くのヒット作を手掛けてきたフジテレビの松山博昭監督。個性豊かな同局のドラマディレクター陣の中でもより独創的で、常に新しい映像世界を見せてくれる人物だ。そんな監督に「テレビ視聴しつ」の室長であり、自称・テレビドラマの作り手に精通しているドラママニアが、今作にかけたこだわりを聞いた――。

  • 『トレース~科捜研の男~』に出演する新木優子(左)と船越英一郎 (C)フジテレビ

    『トレース~科捜研の男~』に出演する新木優子(左)と船越英一郎 (C)フジテレビ

■“痛み”や“つらさ”を意識

――今回の作品は事件解決ものですが、通常であれば解決編が説明ばかりの“おまけ”みたいなドラマが多い中、この作品は第1話で解決編を30分以上かけてじっくり描いたように、解決編の分量がものすごく多い、そこのドラマをしっかり描いているなと感じました。

“どうやったのか”や“誰がやったのか”よりも、“なぜ事件が起きたのか”の部分を抽出しようと思っていたので、第8話(幼なじみ3人が関係する殺人事件)でも21時30分の段階で解決編に入りました。相当解決編を長くして、なぜその事件は起きたのかというのをメインに作っていこうとかなり意識しました。

それは作品のテーマとも関係していて、真野(錦戸亮)という過去に影を持つ人物が、それぞれの事件で真実を見つけていき、そこで関わった人たちは真相を知りたくて苦しむのですが、どんなにつらい真実であっても知った方がいい、つらいからといって知らない方がいいということはないという信念を持っている。その積み重ねが最後、真野自身にフィードバックする話にしたいなと思ったからなんです。

――これまでのストーリーは、DVだったり幼児が関係する殺人だったりと、事件の中身が月9じゃないようなハードさでした。

痛みやつらさというのも意識しましたね。真実にはものすごい痛みやつらさがあるんだけど、真実を知ったからこそちょっと笑って前にいけると思うので。その部分は月9っぽくないので見ている人は目を背けてしまうかもしれないけど、心の痛さつらさを感じられるようなものにしたいなと思って、そういう事件を選んだりしました。

特にそのテーマが凝縮されているのが第2話(父である大学病院の外科医が殺害され、娘の被害者遺族にとってつらい真実が待ち受けていたストーリー)です。関めぐみさん演じる被害者遺族にノンナ(新木優子)はつらい真実を突き付けてしまい、言わない方が良かったんじゃないかと葛藤します。だけど、最後に真野は「どんな真実であったとしても知らない方がいいことなんてない。遺族は真実を知ることではじめて前に進むことができる。それを手助けするのも科捜研の仕事の1つ。だからお前はよくやった」と言います。真野自身も同じところにいるので、自分自身にもかけている言葉なんです。全11話を通して真野はそれを体現するけれど、ノンナに言った言葉を最後、自分はどう受け止めるのか?というのを全体のクライマックスに持っていきたいなという思いで作りました。

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■本当に描きたいのは…

――私の中で前半のドラマの主役は、虎丸刑事を演じる船越英一郎さんだと思ってました(笑)。船越さんの乱暴なキャラクターには賛否両論もあったと思いますが、どんな狙いを込めたんですか?

船越さんに最初にお話ししたのは、月9というパッケージからしても、真野とノンナに恋愛線があるように見えるけれど、本当に描きたいのは男同士の真野と虎丸のラブストーリーなんだと。恋愛ドラマによくある「何だコイツは?」という最悪の出会いから始まって衝突するけれど、高圧的な態度の彼にも背負っているものがあるんだというのを知り、どんどん分かり合っていく。そして最終的に一番遠い関係性だった2人が恋に落ちる…じゃないけれど、寄り添う物語にしようと、そんな説明をしました。

――船越さんのあのキャラクターは、このドラマの特徴である後半の真相パートが“静”だとしたら、それを際立たせるためだけの“動”のキャラクターにしているだけかと思っていました。だけどそうではなく徐々に変化してくのが意外で、連ドラとしての面白さがあるなと思いました。「テレビ視聴しつ」に寄せられた視聴者の感想でも、最初は船越さんのキャラクターに否定的な視聴者が多かったんですが、徐々にマッチングしてきたという声も増えています。

それはよかったです。でもそうだとしたら、相思相愛になるのがちょっと遅かったかな?(笑)

――いや、後半の段階でようやく距離がグッと近づいてきたのは、最終回に向けてのアクセントにもなってて、ちょうど良かったと思います!