近年、男性のスキンケアへの関心が高まってきているのはご存知だろうか? 男性向けコスメティック分野の市場規模が拡大しており、化粧品といえば“女性が使うもの”というイメージは、古い考え方になりつつある。……とは言うもののまだまだ化粧への抵抗が少なくない人が多いのが現状だろう。そこで今回は、CM、雑誌等のヘアメイクとして活動し、パリメンズコレクションではリードアーティストも務める資生堂ヘアメイクアップアーティストの中村潤氏に、なかなか聞きづらい男性化粧の基本手順をお答えいただいた。

  • 中村潤氏(資生堂内では主に宣伝広告のヘアメイク、メンズビューティーの研究を担当)

    中村潤氏(資生堂内では主に宣伝広告のヘアメイク、メンズビューティーの研究を担当)

化粧品といえば“女性が使うもの”は古い

近年メンズコスメティックス市場規模は右肩上がりで成長し、企業が男性向けのスキンケア研修を行うほど、“清潔感”への重要性は年々高まってきている。

綺麗な肌の人は、食生活や普段の生活が整えられているという印象を受け、信頼感にも繋がるため、男性にもメイクを使ったセルフプロデュースは効果的だという。今後は、人と接することが多い営業職にもどんどん拡大すると予想されている。

男性メイクのメリットとは?

中村氏によると「男性がメイクすることで肌ツヤを良く見せたり、眠たそうなクマや色むらを隠したりできることができます。肌が整って見えると健康的に見え、それが素敵なビジネスマンらしい、誠実で清潔感のある印象を作り出せます」という。

また、眉の形やひげの形を変えると顔立ちも変わって見え、精悍な印象の眉、優しい印象の眉という風に少し形を変えることで、その人の性格まで表現することができるとのこと。

化粧は将来の自分への「美の投資」

  • 男性のメイクのメリットは?

    男性のメイクのメリットは?

中村氏は「男性は、その瞬間の効果に目がいきがちで、『10年後の自分』と言われてもピンとこないかもしれませんが、30代の後半ぐらいになると手入れを怠った“差”が出るはず」ときっぱり。

男性の肌トラブルで多いものといえば、10代の思春期や20代前半では「ニキビ」だが、30代を過ぎるとシミやシワに加え、10代の頃からスキンケアを疎かにしてしまったニキビ跡などのツケが、容姿にかなり影響してくるという。

「人生100年時代」といわれる昨今、長く自分を素敵に見せることの重要性は、必然的に男女共に高まってくるのだろうが、すでに若い世代を中心に男性の「カッコいい」を保つための投資として、化粧を選ぶことは当たり前になりつつあるという。

同氏は、インスタグラムやLINEなど、SNSの発展により、直接会わなくても濃密なコミュニケーションが取れる時代だからこそ、「直接会うことより情報が減った分、視覚(ビジュアル)の情報の重要性が上がる」と話す。

清潔感の基準

若い世代を中心に上記で記したが、30歳過ぎの男性には関係がないという話ではない。中村氏曰く「万人に共通する清潔感」は、「口元・目元・鼻の周り」という視線が集まりやすいパーツを気をつけて整える必要があるという。

また男性の世代共通の肌トラブルとしては、ひげ剃りで肌を傷つけることが多いとのこと。おでこや鼻といった脂が出やすい場所はテカっているが、普段ひげ剃りで肌を傷つけてしまっている顎や鼻の下の口の周りは、逆に乾燥し、「混合肌」になってしまうケースが多いという。

メイク活用の2つの目的

  • メイクの目的とは?

    メイクの目的とは?

「化粧は女性のもの」と思う人が多いが、そもそも女性のメイクの目的は2つあると中村氏は話す。

「自分のコンプレックスの克服」

「華やかに魅せる自己演出」

男性のメイクアップの比重は前者の傾向が強いという。20代前半のときに比べると、30代になったときに自分の肌が衰えてきたとか、毛穴が広がり目立ってきたとか、そういったときに化粧品を使ってもらうと男として“一段上がる”のだという。

また、後者の役割については、眉毛などを整えると強面の男性でも優しい印象に変わったり、頼りなく見られがちな人がしっかり見えたりする効果もあるのこと。自分の中で「衰えたな」と思うタイミングが前者。「憧れに近づきたい」と思うなら後者の考え方が、男性もメイクをする理由としては十分であろう。