――そのような撮り方は今まで経験したことあったんですか?
初めてのことでした。これくらい分からないことが多い役はなかったので。一颯が文香を携帯で撮影した証言映像のシーンは2~3分で済むこともあって、スタッフさんも「もはや文香はバーチャルのキャラクターじゃないか」と言うくらい、文香は謎めいたキャラクターでした。
――そういえば……菅田将暉さんとの直接の共演シーンはありませんよね?
確かに、ほとんどありませんでした。でも、あれだけ全身全霊で信念を貫こうとする姿は、観ている人の心に必ず何かが届くはず。放送のたびにそう感じます。そういう中でも、文香の動画を観ている様子や表情の変化を見ると、文香を演じる上でのヒントをいただいています。
■『3年A組』から学んだこと
――今田美桜さんは、一颯や生徒役から刺激を受けながら演じているそうで、生徒役と同世代のある役者さんはドラマを観て、別の意味での刺激を受けているという話を聞きました。土村さんは「教室の外」の役ですよね。どのようなお気持ちでオンエアをご覧になっているんですか?
私も教室の中から毎回ものすごいエネルギーを感じます。そのエネルギーをビシビシ感じるからこそ、教室の外にいる私もしっかりしなきゃなと。1つの作品をやる上で、自分も物語の中でちゃんと生きようというか。決して、発信するものが多い役ではないのですが、教室でみなさんが毎回すばらしいシーンを生み出しているので……そういう刺激は受けています。
――その繊細な作業を経て最終回を迎えることができたわけですね。
はい、私は「ひな祭り」に撮り終えました(笑)。
――つい先日じゃないですか! クランクアップはどのようなお気持ちでしたか?
今の自分ができることはすべてやったつもりなので……私の役目はここまで。そんな気持ちでした。あとはどのような仕上がりになっているのか、放送を楽しみにしています。
――いよいよ最終回ですね。詳しい内容は言えないと思いますが……どのような撮影でしたか?
そうですね(笑)。一颯が起こした事件に後押しされているので、10話は覚悟を決めて臨んだ回でもありました。
――ネタバレになってしまうので、なかなか語れませんよね。では、これまでで特に印象に残っているシーンは?
9話で、父と別れるシーンです。本当にさびしくて、悲しくて。今まで抱いていた疑念が確信に変わる瞬間でもあるので、恐怖も感じました。とっても優しいお父さんだったので、すごく切ないシーンでした。
――田辺誠一さん演じる武智先生と対峙するシーンも印象深かったです。
優しい雰囲気ですごく柔らかい物腰……でも、あれだけ怖いことをするので、ゾッとはしましたが、文香は正義感が強くて教師の理想像をしっかり持っている女性です。武智先生とのシーンでは、そういう「意志の強さ」というか、「教師としてこうありたい」という確固たるものが伝わればいいなと思っていましたし、それが武智先生によって覆されるので、文香にとっては重要なシーンだったと思います。
――貴重な経験になったと思いますが、『3年A組』からどのようなことを学びましたか?
一颯の言葉は今の時代に必要なことが詰まっていると思います。私の周りでは、道徳の教材に勧める声もあるくらいで。私はSNSにあまり触れずに生きて来たのですが、便利になればなるほど危険も比例しているような気がします。すごく考えさせられる作品でもありました。
――ドラマに込められたそういうメッセージも、最終回によって完結します。
そうですね。最後まで追ってくださっている方には、それぞれの推理があると思います。私の周りでも、「黒幕はこの子じゃない?」「意外とダークホースはこの人!」みたいに盛り上がっていて、本当に十人十色なんです。私も今日の取材でうっかり変なことを言ってしまわないか、ハラハラでした(笑)。
■プロフィール
土村芳(つちむら・かほ)
1990年12月11日生まれ。岩手県出身。子ども劇団に所属後、高校在学時に新体操でインタ ーハイに出場。京都造形芸術大学の映画学科俳優コースに進学し、数々の舞台作品や自主 制作映画に出演した。2013年3月に大学を卒業後、ヒラタオフィスに所属。これまで、 『カミハテ商店』(12)、『弥勒』(13)、『劇場霊』(15)、『何者』(16)、『去年の冬、きみと別れ』(18)などの映画、『コウ ノドリ』(TBS系・15/17年)、『べっぴんさん』(NHK・16~17年)、『恋がヘタでも生きて ます』(日本テレビ系・17年)、『GO! GO! フィルムタウン』(NHK・17年)、『女子的生 活』(NHK・18年)などのドラマに出演。『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)が2019年3月9日、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)が2019年3月10日に最終回を迎える。出演映画『空母いぶき』が5月24日に公開予定。