ワコムはこのほど、アニメーション映画「スパイダーマン:スパイダーバース」の公開を記念し、イラストレーターのjbstyle.氏によるライブドローイングイベント、および同氏と映画ライターのすぴ豊氏によるトークセッション、およびキャラクターイラストコンテスト「君だけのスパイダーマンを描き出せ! スパイダーマン:スパイダーバース キャラクターイラストコンテスト」の結果発表イベントを開催した。ここでは、その模様をお伝えする。

2019年3月8日に全国で公開される映画「スパイダーマン:スパイダーバース」は、マーベル・コミックの漫画を原作とする同シリーズでは初となるアニメーション作品。第91回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞するなど、公開前から話題となっている注目作だ。

  • イラストレーター・jbstyle.氏

同イベントで登壇したjbstyle.氏は、20分間の制限時間でアート制作を競うデジタルアートバトル「LIMITS」において現在、世界ランキング1位を誇るイラストレーター。名古屋を拠点に、ゲームやアパレルなどのアートワークのほか、国内外でライブパフォーマンス出演などでも活躍している。

  • 映画ライター・すぴ豊氏

また、jbstyle.氏とトークセッションを行うすぴ豊氏は、SCREENをはじめとする映画雑誌や映画パンフなどにコラムを執筆するアメコミ系映画ライター。東京コミコンやアメコミ映画の宣伝も手がけ、「スパイダーマン:スパイダーバース」の日本語吹替も監修している。

今回のイベントが開催されたのは、新宿マルイ アネックス7F。同館の3Fには、ワコムの常設体験型ストア「ワコムブランドストア新宿」を構えるほか、アニメグッズ専門店の「アニメイト」やコスプレ系ショップ、キャラクター雑貨など、アニメなどを好む層をターゲットにした店が多く入居しており、マンガやイラストを描くユーザー層との親和性は高い。今回のイベントでも雨天にも関わらず多くの参加者が集まり、会場は満席となった。

スパイダーマン:スパイダーバースの裏側にワコム製品が

まずは、jbstyle.氏とすぴ豊氏によるトークセッションからスタートした。すぴ豊氏は映画「スパイダーマン:スパイダーバース」を、アニメがアーティスティックであることに加えてストーリー性にも優れていることから、今年のアカデミー賞を獲得したと紹介。

また、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」の制作現場では、ワコムの液タブ「Wacom Cintiq Pro」シリーズが使用されおり、今回ワコムがこの映画のイベントを企画している理由として「この作品のアニメーターたちはワコムの液タブを用いて描いているから」と明かした。ちなみにYouTubeでは、制作チームのメイキングインタビュー動画が公開されている。

  • トークで盛り上がるjbstyle.氏とすぴ豊氏

続いて、jbstyle.氏が、アメコミ的な絵を描くようになった理由として「最初は日本の漫画から入ったものの、アメコミのモノクロ作品のメリハリがはっきりした絵に惹かれ、中学生の頃からアメコミを模写するようになった」と明かした。当時は、スパイダーマンをはじめ、バットマンやシン・シティなどの模写に励んだということだ。

また、すぴ豊氏はjbstyle.氏の絵に関して、「女性がセクシーなこと」がお気に入りであるとし、「いくら際どいポーズでセクシーに描かれていても、決して下品にならないこと」と解説した。

  • jbstyle.氏が使用した機材は「Wacom Cintiq Pro 16」+「Wacom Pro Pen slim」

これぞjbstyle.! 超速のドローイング

そしていよいよ、jbstyle.氏が来場者の前でイラストを描く様子を披露する「ライブドローイング」が開始した。今回、jbstyle.氏が使用する液タブは「Wacom Cintiq 16」で、ペンは「Wacom Pro Pen slim」だ。同氏は普段の仕事でも同製品を愛用しているという。

  • 会話を交えながら、もの凄い速さでスパイダーマンの登場キャラクターを描いていくjbstyle.氏

jbstyle.氏が描き始めるとともに、普段から「Adobe Illustratorの鉛筆ツールだけを使って描いている」ことを明かし、「これを使って描いている人は、国内外含めてほぼいない」と語った。そんな紹介をしながらも、もの凄い速さでスパイダーマンが描かれる様子を見て、すぴ豊氏は「そうこう言っている間に、もう輪郭が描かれているじゃないですか! スゴいなぁ!」と驚いた。

  • jbstyle.氏が描く様子を食い入るように見つめる来場者

会場に集まった参加者たちも、jbstyle.氏の早描きに興味津々で、その様子が映し出されるスクリーンを食い入るように見つめていた。jbstyle.氏は自身の描き方について「図形を描き、形を取っていき、削って人間にしていく」スタイルだと説明したのち、「液タブは直感で描けるので使いやすい」と語った。

  • Illustratorの鉛筆ツールで描くというユニークなスタイル

jbstyle.氏の描き方は特殊なため、描きはじめのうちは何が描かれ、どんな風に仕上がるのかまったく予想がつかないが、後半で次第に明らかになり、最後に見事な作品に仕上がる様子はまさに圧巻。わずか10分で作品を完成させると、会場からはどよめきの声があがった。

  • わずか10分程度で描き上げた作品がこちら

ちなみにjbstyle.氏は、4年ほど前までllustratorを使ってマウスだけで絵を描いており、液タブ歴は浅いことを明かした。もしそのまま液タブを使っていなければ、「LIMITS」の世界ランキング1位に輝くことはなかったのかもしれない。jbstyle.氏は、初期投資は必要であるものの「液タブを使うことによって、絵を描く人の伸びしろや世界を広げる可能性がある」と断言した。

jbstyle.氏は、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」について、「“漫画をそのままアニメーションにしたらこうなる”という、絵を描く人が見るのに最適な映画です」とし、「このような映画を観て、たくさんインスパイアを受けて下さい」と絵を描く人に対してエールを送った。