自己紹介もチームビルディングのうち?
料理に取り掛かる前に、まずは自己紹介からスタート。この段階で、すでにチームビルディングは始まっている。
チームとしての目的は、「おいしいティラミス・ミルクレープを作ること」だ。そのためには的確な役割分担が必要であり、そこをスムーズに行うには「どの程度料理ができるのか」「チームにおける立ち位置やキャラクター」などの情報が受け手に伝わる自己紹介が望ましいと言えるだろう。
男性メンバー最年少の大原は、ここぞとばかりに学生時代のアルバイトにおける調理経験をアピールするとともに、「ガンガンこき使ってください!」と実直な後輩キャラを前面に押し出す。その結果、最短ルートで女性陣の支持を獲得し、「肌キレーイ」とまで言わしめた。やりやがる。
料理ができるできないの前に清潔感が足りていない西田と富樫は、大原のライトなモテっぷりを目の当たりにして「こいつ本当はチョコもらってんじゃねぇの?」とブツブツ言いながら小鼻を膨らませる。「チョコが全然もらえない」という点で繋がっていたように見えた男性陣の結束は、早くも崩壊寸前だ。
そんな中、せっかちな富樫はMC的なポジションで自己紹介の順番を積極的に回していく。その後もタイムマネジメントを行う役割はそれとなく彼が担っている様子であった。
大まかな調理工程は、クレープ生地の材料を混ぜ合わせる→ティラミスクリームを作る→クレープを焼く→焼きあがったクレープとティラミスクリームを重ねていく、といった具合。
和気あいあいとレシピ通りに作業を進めていく5人だが、次第に各々の性格やキャラクターも輪郭がくっきりとしていき、役回りも確立する。周りの様子をうかがって指示を待つタイプもいれば、作業しながら全体を見て暇な人を出さないように指揮をとるタイプ、隙あらば調理台の上を片付けたがる人、つまみ食いしても許されるタイミングの見極めが上手い人など、いつもの業務の中では見られなかった面も顔を出すのが面白い。
男性メンバー3人の中だけで見ても、職場における上下関係を気にしすぎることなく自然にサポートし合う雰囲気が出来上がっていたのが印象的であった。大原(後輩)に対する西田(先輩)のジェラシーもいつの間にか消え去り、気付けば教えを乞うほどの関係性に。
そうこうしているうちに、料理はもう完成間近だ。男3人衆だけではここまで順調に事が運ばなかったことだろう。そんな気持ちの表れか、感謝の言葉やお互いを褒めるような口ぶりが明らかにいつもより多く飛び交っていることにも気付かされた。富樫のサイドクチビルに蓄えられていた泡の姿は、もうそこにはない。
慎重にカットして盛り付け、ついに調理は終了。男性メンバーはかなりの充実感に包まれているようだ。最後に、出来立てのティラミス・ミルクレープにかぶりつきながら今回の試みを振り返る。
もっとも多く挙がったのは、「シンプルに楽しかった」という感想。「チームビルディング」だの「研修」だのと聞くと眉間にしわが寄ってしまいそうなものだが、深く考えずに楽しみながら料理をするだけでも「チームがひとつの目的に向かって一丸となる」感じは出てくるものなのだ。料理スキルが立場と比例するとは限らないという点も、いろいろな意外性を生み出してくれた要因かもしれない。
今回のような形にプラスして、チームごとにプレゼンやフィードバックなども実施しながらチームビルディングの効果を高めるコースも用意されているとのこと。自分が所属しているチームをより良いものにしたいと考えている方は、チームビルディングの選択肢に「料理」を加えてみてはいかがだろうか。
バレンタインデーの経済効果に何の影響ももたらしていなかった3人は、女性陣に直接ヒアリングしたり、他のメンバーの振る舞いを観察したりするなどして、チョコをいただけない理由も自分なりに探れたようだ。
これで来年こそはチョコ獲得数ゼロを回避できるかもしれない。もしゼロでもティラミス・ミルクレープの作り方は学んだので、いざとなればチョコも自作できるという精神的な余裕が生まれる→自分に自信が持てるようになる→モテる→精神的な余裕が生まれる、という好循環が実現できるに違いない。ハッピーバレンタイン。