働きながら家族のために家事もこなすワーキングママ&パパにとって、冷凍庫は心強い味方。休日にまとめ買いした肉や魚を冷凍して、日々の食卓に活用している人も少なくないだろう。だが、多くの人は冷凍&解凍について誰かから学んだ経験なんてないはず。我流ゆえ、実は誤った方法で食材を保存している可能性もある。

そこで今回は「冷凍王子」こと冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏に、上手な冷凍法のコツやテクニック、そして調理の幅も広がる時短術「下味冷凍」について教えてもらった。

  • 「冷凍王子」こと冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏

冷凍の基本3原則とは

西川氏は、大学在学中から冷凍食品に興味を持ち始め、冷凍食品会社に就職し、商品開発などを担当。現在はその経験を生かして独立、冷凍を切り口にさまざまな生活のアドバイスなどの活動を行っている。

そんな西川氏に冷凍のコツについて伺うと、「どんな食材でも、まずはこれが鉄則です」と以下のような「冷凍3原則」について解説してくれた。

1. 鮮度の良い状態で冷凍する

「とりあえず冷蔵して、傷み始めたら冷凍」というのは、家庭でよくみられる光景だろうが、西川氏は「冷凍はキープする技術ですから、元の鮮度が落ちていれば、冷凍してもやはり鮮度は落ちたままです」と力を込める。傷んだり、おいしさが損なわれたりする前に冷凍してしまうのがベストなので、その日のうちに使わないものは冷凍してしまおう。

2.空気をできるだけ遮断する

冷凍庫は温度が低いため空気中の水蒸気も凍ってしまい、霜などになる。「非常に乾燥した環境になるため、そのまま凍らせてしまうと表面からすぐに乾燥してしまいます」。ラップやジップロックなどのジッパー袋を活用し、できるだけ空気に触れない状態で冷凍するのが、鮮度を保つコツだという。

3.できるだけ素早く凍らせる

ブロック肉などの大きな塊を凍らせようとすると、中まで凍るのに時間がかかってしまい緩慢凍結になってしまう。「食材をなるべく薄く、均一な厚さにして平らな状態で冷凍すると、均等に素早く冷凍でき、品質を維持できます」。

食材別の冷凍テクニック

冷凍術の基本を押さえたら、次は肉、魚、野菜という家庭でよく使う食材のマル秘冷凍テクニックを学んでいこう。

肉⇒生姜焼き~ステーキまでの厚さが肝

「細かくカットされていると空気に触れる面が多くなるため、冷凍には向きません」と、ここでも3原則の1つが重要となる。細かくなるほど解凍したときに旨みのもとであるドリップが出やすくなり、パサついた食感になってしまうという。

西川氏によると、「ステーキくらいの厚さから生姜焼きくらいの厚さまでが冷凍向き」だそうで、大きなブロック肉などはカットしてから冷凍するのがベスト。「しゃぶしゃぶ肉くらいになるとちょっと冷凍に不向きになってきます」とのことなので、適度な厚さを心がけよう。

そして解凍は、常温解凍はせず凍ったまま調理してしまうほか、氷水解凍がよいそうだ。空気よりも熱伝導率がよいので、鮮度を保ったまま早く解凍できるという。

魚介類⇒丸魚の場合はそのまま冷凍が◎

魚については、「基本的に冷凍・解凍の方法はお肉と同じですが、魚は身がやわらかいのでややハードルが高くなります」。肉と違う点は

肉と違う点は「内臓などを取っていない丸魚の場合は、そのまま丸ごと氷漬けにした方が鮮度を保てるところです」。切るとその断面からドリップが出やすいので、可能ならばそのまま氷漬けにする方が好ましい。

また、貝類は実は冷凍向きの食材だという。「貝類はコンテナ容器に入れて水をひたひたにして凍らせます。ゆっくり解凍すると口が開かなくなるので、一気に加熱して解凍することを忘れなければOK」だそうで、冷凍すると出汁も出やすくなるメリットがある。

野菜⇒火を通す・通さないでポイントが異なる

火を通さずに食べる野菜であれば、塩もみや酢漬けにしてから冷凍すると、シャキシャキした食感が残りやすい。流水解凍で手軽に野菜を食卓にプラスできるのも大きなポイントだ。サイズは短冊切りや細切りなど、小さめで均一にしておくとよいという。

火を通す野菜については「冷凍前は火を通しすぎない」ことが重要。これは「ブランチング」と呼ばれるテクニックで「塩を入れたお湯に野菜を入れ、数十秒程度で上げてすぐ氷水で冷やす」というもの。野菜の色がサッと鮮やかになる程度までにとどめておくことで、解凍後の調理で火を通しすぎずおいしく食べられる。

生野菜も冷凍はできるが、消費期限は火を通したものよりも短くなることに注意してほしい。火を通したものが約1カ月、生のものは約2週間が目安となる。