■復路の富士急行線で「富士山ビュー特急」に乗車

富士急行線ではJR線からの直通列車に加え、自社車両による特急列車なども運転されている。大月駅まで戻るにあたり、時刻表を確認すると、ちょうどいい時間帯に「富士山ビュー特急」が運転されるようだったので、この列車にも乗ってみることにした。

  • 富士急行線の乗車券と特急券

今回乗車した「富士山ビュー特急8号」は河口湖駅13時0分発。使用車両の富士急行8500系は、かつて特急「あさぎり」で活躍したJR東海の特急形電車371系を改造したものだ。水戸岡鋭治氏のデザインにより、木質感豊かな車内にリニューアルされている。1号車は指定席で、当日は「スイーツプラン」のみの利用となっていた。2・3号車は自由席である。この列車は自由席でも特急料金が必要。車内販売員も乗務していた。

3号車の座席に座ると、運転席が大きく見える。この車両は河口湖駅から富士山駅まで最後部車両だが、富士山駅で進行方向が変わり、大月駅まで先頭車両となる。発車前に女性車掌によるアナウンスが行われ、往路と同様、英語のアナウンスも聞かれた。

  • 「富士山ビュー特急」の車内(2016年4月の報道公開にて撮影)

河口湖駅を発車した後、しばらく後ろ向きの座席で風景が流れ行く様子を眺める。富士急ハイランド駅を経て富士山駅に着くと、ここで運転士が3号車へ、車掌が1号車へ移動し、3号車が先頭車両に。進行方向を変え、13時7分に発車する。下吉田駅では14系寝台車が静態保存され、「富士」のテールマークが見える。「フジサン特急」で活躍した富士急行2000系の先頭車両も展示されている。元165系で、国鉄時代末期から「パノラマエクスプレスアルプス」として活躍した車両だ。

寿駅から三つ峠駅までの区間を走行中、富士山が美しく見える場所として車内アナウンスがあった。天気が良ければ進行方向右側に富士山が見えるのだが、当日はあいにくの曇り空。裾野がちらりと見える程度だった。

三つ峠駅で「フジサン特急」(富士急行8000系、元小田急電鉄20000形)と行き違い。発車後はスピードが出るものの、思ったよりは上がらない。先頭車両からだと勾配の角度がよく見えるため、抑速ブレーキを上手に使っているという印象だった。ここから見える急勾配と曲線は、山岳路線らしさを感じさせるものである。

都留文科大学前駅に停車した後、壬生駅を過ぎたあたりで車内アナウンスがあり、山梨リニア実験線の下を通る。運転席を観察していると、どんなに速くても制限速度の60km/hが限界だと感じさせられた。その速度を出せる区間が少ないのだ。

  • 「富士山ビュー特急」が大月駅に到着

  • 富士急行線の大月駅

「富士山ビュー特急8号」は13時46分、大月駅に到着した。

■ありがとうE257系「かいじ」

中央本線の特急「あずさ」「かいじ」はE353系の導入が進んだことにより、E257系による運行も少なくなってきた。大月駅14時4分発「かいじ112号」は、残り少なくなったE257系を使用する列車である。

車体には武田菱があしらわれ、車内も赤と紫を基調としたインテリア。戦国時代に武田氏の勢力圏にあったエリアを走る特急列車ならではのデザインだろう。E257系は今後、東海道本線に転用されるとのこと。戦国時代には後北条氏の勢力圏だったエリアを運行するにあたり、デザインはどうなるのか。気がかりでもある。

  • JR東日本の大月駅は山小屋風

「かいじ112号」は大月駅を発車した後、軽快な走りを見せる。曲線とトンネルの多い区間だが、線路改良によりスピードを出している。

車内を見て回ると、9号車の喫煙スペースの跡や、一部車両の公衆電話スペースの跡が気になった。この車両が登場した時期には必要だった設備と思われるが、いまでは必要がなくなってしまったのだろう。時代の変化にともない、役割を終えた場所である。このあたりも、東海道本線に移った後はどうなるのか、気がかりだ。

小仏トンネルを出るあたりでは雨だったが、八王子駅に到着するころには止んでいた。八王子駅では少しだけ下車する人がいた。立川駅では多くの人が下車したものの、乗車する人もいる。国立駅あたりではスピードが出ている。

  • E257系の特急「かいじ」も間もなく見納め

筆者は山梨出身のため、故郷と東京を行き来する際、この車両には何度も乗った。おそらく今回の乗車を最後に、もう乗ることはないだろう。そう考えると、名残惜しくなる。

「かいじ112号」は三鷹駅で快速を追い抜く。3月16日のダイヤ改正後、中央本線の特急列車はすべて三鷹駅を通過する。筆者は三鷹に在住していたため、当時はこの三鷹駅に停車する「かいじ」をよく利用していたが、実際はこの駅で「かいじ」を利用する人は少なかったのだろう。

中野駅を通過したあたりで、多くの人が降りる支度を始める。15時4分、列車は新宿駅7番線ホームに到着した。特急ホームではなく快速ホームに停車したのは、東京駅を16時15分に発車する「かいじ115号」に使用するため、東京駅まで回送されるからだろう。新宿駅到着後、早速、座席の転換と車内整備が行われていた。

  • 「かいじ」乗車時のきっぷ。「えきねっと」の割引も今後大きく変わる

2001年のデビュー以来、E351系「スーパーあずさ」の高速運行をバックアップする役割を担っていたE257系。中央本線はこの1年でE351系が引退し、3月16日のダイヤ改正で「スーパーあずさ」がなくなり、車両がE353系に統一される。特急列車の全体的な速達化が図られ、停車駅も減ることになる。

さらに「富士回遊」や「はちおうじ」「おうめ」の新設もあり、新たな着席サービスも導入される。一方で「ホリデー快速富士山」などの列車はダイヤ改正後の設定がなく、「中央ライナー」「青梅ライナー」は運転取りやめが発表された。3月16日のダイヤ改正による中央本線の変化は相当大きなものになると予想される。