――猫スーツを着こなして、もうマスターになってるのかな? と思いました。
着脱は時間がかかりますけど、僕がトラさんになってる時は皆さんにすごく優しくしていただいて。そのときはかわいがってもらえるんですよ。猫スーツを着てる時は!(笑) 実際に猫の動きは研究しましたが、そもそも僕、二足歩行だったでしょう。そこに猫の動きを入れすぎると難しくなってくるから、「ここは1回、猫を忘れた方がコミカルに見えるな」「ここは猫に入った方が、キャラとして肉付けできていくんじゃないかな」とか、いろんな塩梅で差し引きしていました。
猫の研究としては、猫動画を漁ったりもしていたんですが、もう、かわいいじゃないですか。デレデレしながら見ていました。ただ、自分が実際に猫の動画のように段ボールにスライディングしていくシーンでは、段ボールと猫スーツの毛の相性が良くて、するっと抜けてっちゃうので、意識して止めていました(笑)。
――思い返して、1番大変だったのはどんなシーンでしたか?
リビングで奈津子と実優が寿々男に対しての気持ちを吐露するのを、違う部屋で猫として聞いているシーンが、一番しんどかったかもしれないです。けっこう耐えられなくて、実は、泣いちゃってて。でも監督と、そのシーンはやっぱり泣かずに行きたいと話していて。2人が俺の話をしながら「会いたかった」と言ってるから、今すぐそっちに行って「俺だよ」と言いたいけど、言えない。自分はなんで今まで気づいていなかったんだ、という後悔や、いろんな感情が詰まって、1番難しかったです。
――猫スーツよりも、気持ちの部分が大変だったんですね。試写で見たときにすごく良い作品だと思ったのですが、監督の演出に北山さんが「おっ」と思ったところはどんなところですか?
僕は『トラさん』を実写化するにあたって、まず映像としての撮り方や、猫スーツと人間とのバランスが絶妙だなと思いました。あと監督って、猫ラップのアドリブも考えてきてくれるんですよ。自分なりにも考えたけど、監督のラップが一番面白くて、すごいと思いました(笑)。現場の空気感も決してピリピリする感じもなく楽しくて、自由に表現していいんだな、と思えました。例えばテストで1回、自分が思ったことをやってみると「それいいね」「そうきたか」と受け入れてくれるんです。
終盤、奈津子と2人で笑っているシーンも、あえて台詞なしにすることによって、観る側にもふくらみをもたせながら、切なさを演出する。2人の歴史だったりも、想像できますよね。あのシーンは、けっこう悩みました。
■これからの俳優仕事にもワクワク
――最近は猫とイケメンの組み合わせがけっこう人気なのかな? と思っているんですが、今回の北山さんの場合のアピールポイントをぜひ教えてください。
なんでしょうね、猫と一緒に撮ると、俺も……かわいいんだよなあ(笑)。相乗効果、すごいと思うんですよ。表情も自ずとかわいくなっちゃう。
――猫もかわいい、北山さんもかわいい、両方最高、ということですね。
そうです。……いかがでしょうか?(笑)
――ありがとうございます(笑)。最近は舞台の主演もされて、今回は猫の役もされて、演じることがますます面白くなったような感覚はありますか?
もちろん。楽しんでもらえている手応えもあるし、これからもいろんな作品に携わっていけたらと思います。今回は猫を演じたことで、「逆にこんなこともできるんじゃない?」と、好奇心を持っていただけるような気がしていて。僕も「あ、大丈夫です、1回猫やったんで」と言えるし(笑)。これから、どんなことができると思っていただけるんだろう? と、ちょっとワクワクします。
■北山宏光
1985年9月17日生まれ、神奈川県出身。2011年、Kis-My-Ft2として「Everybody Go」でCDデビュー。本作の主題歌「君を大好きだ」が発売中。さらに歌だけでなく、バラエティ、ドラマ、舞台と活躍の場を広げる。さらに歌だけでなく、バラエティ、ドラマ、舞台と活躍の場を広げる。13年には福田雄一監督のコメディドラマ『裁判長っ! おなか空きました!』の弁護士役でドラマ初主演を果たす。舞台では『美男(イケメン)ですね』(11)で初主演、その後『愛の唄を歌おう』(14)、『あんちゃん』(17)などに出演する。
(C)板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会