ボランティアやアルバイトの考え方

東京2020のボランティアは、都市ボランティア、大会ボランティアともに募集は2018年12月に終了しました。今後、応募者に対して面談・説明会等が行われ、2020年春には採用通知が送られるようです。また、その前後から順次研修も実施されます。

ボランティアに応募された方は、二度とないかもしれない貴重な体験に向けて心を躍らせていることでしょう。応募されなかった方でも、別な形でのボランティアやアルバイトの機会はあるかもしれません。

仕事という観点では、ボランティアはもちろん収入には直接つながりません。関連アルバイトもおそらく短い期間限定でしょう。ただ、就職に必要なスキルを身に付けるためのトレーニングと割り切る考えは「あり」でしょう。様々な職種やバックグラウンドを持つ人々と交流することで、見識やコミュニケーション能力を高めることができるかもしれません。外国語の習得や会話を練習する機会もあるかもしれません。

某コーヒーチェーンのアルバイト経験が「おもてなしの心」として就職に有利と言われているように、東京2020の経験は就活に活きるのではないでしょうか。

さらに言えば、あまり褒められた表現ではありませんが、開催が決定した2025大阪万博への踏み台と考えても良いかもしれません。2025大阪万博の準備はこれから始まるはずです。東京2020の会期は約1カ月間に過ぎませんが、2025大阪万博は会期が約半年間(185日間)であり、それだけ濃厚な経験ができるかもしれません。

外国人を相手にする仕事

さて、オリンピックと言えば、すぐに頭に浮かぶのは訪日外国人の増加です。観光と観戦を兼ねて世界各国から観光客が押し寄せるでしょう。もっとも、2018年の訪日外国人数は初めて3,000万人を超えました。東京2020の開催が決定した2013年には約1,000万人だったので、わずか5年で3倍増になった計算です。

2016年、政府は2020年の訪日外国人数の目標を4,000万人とし、以前から倍増させました。それでも、今のペースでは目標をクリアするのは難しくないでしょう。

東京2020を別としても、レストランや小売などのサービス業、観光・宿泊業で、訪日外国人を相手にする仕事は当然増えるでしょう。もっと突き抜けて考えて、語学が得意ならアジアなど外国の旅行会社に職を求めて日本ツアーを担当するというのは、さすがに突飛でしょうか。

どんな資格が望ましいか

ここまで様々な職種を挙げました。それぞれに必要な資格や、必要はないが持っていると有利な資格があります。例えば、警備なら警備業務検定が必要ですし、飲食関係なら調理師や栄養士の免許を持っていると有利でしょう。

語学に関しても、様々な資格があります。訪日外国人の観光・観戦をサポートする「通訳案内士」という、そのものズバリの資格もあります。これは、10言語に対応した国家試験で、語学力だけでなく、日本の地理や歴史、国際情勢などの幅広い知識が必要とされ、かなり難関なようです。

そこまで専門的でなくても、主要外国語なら検定がありますし、英語なら観光英語検定のほか、TOEICやTOEFLも一定の資格とみなせるかもしれません。また、正式な資格でなくても、東京シティガイド検定・鉄道検定・空港力検定など、外国人とのコミュニケーションに役立ちそうなものはあります。主要な都市や観光地にも検定はありそうです。

日本の歴史や64年東京五輪のことなどを学んで外国語で話せるのも、何かの役に立ちそうです。せっかくだから、参加国の国旗や地理を全部覚える、各スポーツの歴史や有力国、有力選手を調べる、なども面白そうです。

最後に

日本では少子高齢化が進行し、企業にとっては人材確保がますます難しい時代が到来するでしょう。そして今、政府が旗振り役となって働き方改革が進められています。東京2020がキッカケとなって、労働のスタイルや雇用の形態などに新しい流れが生まれるかもしれません。そうした視点で東京2020をフォローするのも興味深いのではないでしょうか。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして活躍。 2012年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトで「市場調査部レポート」「スポットコメント」「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、動画サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。