――今まさに『家売るオンナの逆襲』という続編を作っている小田さんですが、劇場版『おっさんずラブ』で初めての続編に挑む貴島さんに、何かアドバイスはありますか?
小田:アドバイスっていうほどじゃないですけど、『家売るオンナ』の続編をやりたいと相談したとき、主演の北川景子さんから「絶対にパワーアップしてないと嫌だ」と言われました。もちろんそれは私も大石先生も一緒で、このドラマを長く続けて行きたいからこそ、先ほど言った第2話と同じく、この第2シリーズが大事だと思いました。だから今回は準備期間も含めて、第1シリーズの倍くらい時間をかけているんですよ。去年1年間、ずっと動いてましたからね。
貴島:「続編の描き方」でぜひ伺ってみたかったんですが、『家を売るオンナ』第1シリーズの後に放送されたスペシャルで、三軒家万智(北川)と屋代課長(仲村トオル)が結婚した…のか!?ってところで終わったと思うんですけど、本当に結婚したんだ!って分かったのは、第2シリーズの最初ですよね。「ベッドへGO!」って言ってて爆笑しちゃったんですけど(笑)、第2シリーズを結婚した状態でスタートするというのは、いつの段階で決めていたんですか?
小田:それはすぐに決めていました。北川さんからも「『スペシャルの最後で万智が課長にプロポーズしたのに、やっぱりまだ結婚してなかった』なんてことは許しませんよ」って言われて(笑)。『おっさんずラブ』でもそうだったと思うんですけど、「どうせくっつかないんでしょ?」と視聴者が思ったら、そのまま踏み込まないと裏切りになるじゃないですか。それから、結婚してるか・してないか、どっちのほうが面白そうか考えたとき、結婚している方が意外性があると思ったので、第2シリーズはそっちを選びました。
貴島:「意外なほうを選ぶ」というのは、すごく分かります。
小田:でも私は、結局三軒家万智が仕事ばかりやっていて、家庭はうまくいっていないという話と決め込んでいて、それを監督や大石先生に話したときに、「いや、家庭も完璧にやり過ぎて夫が引いてるほうが意外じゃない?」と言われて。第1シリーズで三軒家万智がお見合いパーティーに前のめりに参加しているエピソードがあるんですが、それも、あのキャラクターなら男に興味なさそうじゃないですか。そうと見せかけて…という発想からなんですよ。
貴島:だから、サンチーがかわいく見えて、すごく面白いんですね。
小田:あと、あの2人の夫婦の“家”は絶対出さないというのを、初めに縛りとして決めたんです。そこを見せてしまったら、きっと生々しく見えちゃうから。夫婦生活の様子は屋代が飲み屋で話す愚痴や、2人がスーパーで買い物をするシーンの会話で、チラ見えするくらいにしようとなったんです。それは、これ以上スタジオにセットが入らないっていう事情もあるんですけど(笑)。劇中に登場するお客さんに売る家は、毎回建ててますから。
貴島:あれ、全部セットを建ててるんですか!?
小田:はい、全部建ててます(笑)。ネットカフェ(第2話)も、元力士の家(第3話)も、全部セットなんです。だからスタジオは、テーコー不動産はずっとあるけど、その他のスペースは建ててはバラシて建ててはバラシての繰り返し。
貴島:そうなんですか!
小田:もちろんロケで使える家を探すこともやってるんですけど、なかなか設定通りの家を見つけるのは大変で。台本に「デブが挟まる細い階段の家」ってあっても、そんな家ないから(笑)。それに、芝居場になったときに、いろんな角度から撮りたいというのもありますからね。
――『私のおじさん』は、ロケが多いですよね。
貴島:はい、オールロケなので、制作会社テレドリームのオフィスも、ビルの一角を借りて撮影しています。バラエティロケのシーンは、本当にバラエティの撮影場所を探すような感覚です。
■“逆襲”の本当の意味とは…
――いろいろお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。では、現在放送中の『家売るオンナの逆襲』『私のおじさん~WATAOJI~』の今後の見どころを、それぞれ伺えればと思います。
小田:『家売るオンナの逆襲』は、第5話で留守堂謙治が何者なのかというのが判明しましたが、今後、『家売るオンナの逆襲』というタイトルの本当の意味が、明らかになっていきます。
――それは、最初から決めていたシナリオなんですか?
小田:いや、途中で出来ました(笑)。大石さんに「『実はそうだった…』みたいな感じでいい感じじゃないですか!」って言って(笑)
貴島:「まるで伏線を張ってたみたいな感じになりますよね?」ってやつですね(笑)。私もそんなんばっかりです。
小田:そうそう(笑)。そういうのがこの先にもあるのでお楽しみにしてほしいのと、第2シリーズでやってる万智と屋代の夫婦の話も予想外の展開になります。ツンデレで噛み合ってないようでうまくいってるあの夫婦の前に、ある女が出現して…みたいなことが。
貴島:えっ!?ちょ、どうなるんですか…すいません、普通の視聴者になっちゃった(笑)
■「妖精おじさんとは何者なのか」の答えが…
貴島:『私のおじさん~WATAOJI~』は、もともとお仕事ドラマをやりたくて企画した物語です。理不尽な上司に怒られたり、悪くないのに謝る羽目になったり、我慢してるけど“心の2ちゃんねる”が大荒れ…っていう人は世の中にたくさんいるはず。そんなとき、自分にしか見えない“妖精おじさん”が全部隣で毒を吐いてくれたらちょっと幸せ…?っていうドラマです。舞台はバラエティ番組の制作現場の話ですが、どんな職場でも起こるお話になっています。第2話の「お局」の回も、“お局うざ~い”というテーマに見せかけて、本当は「女は全員いつか、知らず知らずのうちにお局になっていく。でもそれも悪くないかも?」というのがテーマでした。
小田:面白いね(笑)
貴島:3話は“40歳なっても才能が開花しなくて腐っている平社員”のお話。4話(今夜2月8日放送)は“上層部にいろいろ言われて謝りたくもないのに謝る中間管理職”のお話です。視聴率とは何か、面白くても数字がなければ評価されないのかっていう話にも切り込んでみたり…。この先は“家族と仕事の優先度“のお話や、仕事のモチベーションが急に分からなくなって転職する人の話、さらには週刊誌のウソっぱちにより番組が追い込まれる話も描いていきます。それから大きな裏テーマとしては「妖精おじさんとは何者なのか」。その答えとラストシーンは企画を出していたときから決めていたので、最後まで温かく見守っていただけたらと思います。
――お2人は今回が初対面でしたが、対談してみていかがでしたか?
小田:『新春テレビ放談』に貴島さんが出ているのを見ていたので、思ったとおりの話しやすそうな人だと思いました。『テレビ放談』は前の年に私も出たんですけど、貴島さんの服を見て「あぁ、赤い衣装だったら映えたなぁ」って反省してたんです(笑)
貴島:赤(笑)。いや、どんな服で行ったらいいですか?って聞いたら、番組の方に「赤とか黄色の明るい系で、結婚式の2次会の感じで」と言われたんですけど、そんなドレスで行ったらすごい気合入ってヤバいやつになるじゃん!と思って(笑)。友達のグループLINEに家にある服を写メって「こんなんどうかな?」って送ったら、「どこ行くつもりなの!?」って驚かれたり…迷走した結果がアレです(笑)
小田:私も友達に「これで出ようと思うんだけど」って送ったら「攻め過ぎだ」って言われた(笑)。でも、大好きな『おっさんずラブ』のプロデューサーにお会いできて刺激になりましたし、「ふどうさんずラブ」の許可も取れたので、良かったです(笑)
貴島:私も小田さんの『新春テレビ放談』や『深イイ話』の密着も拝見していて、そもそも小田さん作品の大ファンだったので、めちゃくちゃお会いしたかったのでうれしかったです! 純粋にどうやってドラマを作っているんだろう…という話も聞いてみたかったので、今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました。