■いつかイベントで歌いたい楽曲
――ジャケットのデザインも小岩井さんのイメージが表現されているんですよね。
小岩井 はい。ジャケットや歌詞カードのデザインは、全部私がデザイナーさんに発注しました。
――どういったイメージから作り上げていったんでしょうか。
小岩井 楽曲のイメージと並行作業で考えていきました。まず、羽が生えた女の子を出したいと思い、その子をどう出そうと。私がMIDI検定をきっかけにDTMステーションさんと出会って、そこから音楽の仕事をやらせてもらったり、声優としても機械が好きな女の子の役をやらせてもらったりというところから、私が羽をもらって羽ばたいて……というストーリーにしようかと。藤本さんは機械が得意だから機械工、多田さんは作曲家だから吟遊詩人だなって。それぞれ女体化して。そういったところからヒントをもらいました。
――随所にこだわりが詰め込まれているわけですね。いよいよ楽曲について。1曲めの「ハレのち☆ことり♪」。こちらが多田さん制作の楽曲ですね。
小岩井 最初の打ち合わせの段階で、すでにデモが出来ていたんですよ。明るくてかわいくて、元気が出る楽曲です。男性が作るかわいい楽曲っていいですよね。多田さんってすごくいい人なんですよ。歌詞や世界観がピュアで、私自身じゃ書けないなってくらい、純粋な女の子像を描いてくれています。私がラジオ番組で話しかけるようなイメージで作ってくださいました。
――レコーディングの際はどう表現していきました?
小岩井 私は最初、おとなしめでかわいらしいトーンを想定して練習していたんですけど、多田さん的にはもっと「元気をお届けする!」というイメージだったんです。なのでレコーディング現場でディレクションをいただいて、元気にはねる感じに歌ってみました。
――2曲めの「運命の輪を廻す者 XX」。小岩井さんの楽曲ですね。
小岩井 多田さんの楽曲とは違う方向性にしたいなと思っていました。せっかく「DTMステーション Creative」さんとやらせていただいているので、3人がイメージできるようにしたいなと。羽の生えた女の子が、機械工と吟遊詩人との出会いでいろいろなことが起きるような。
――そこで先ほどのジャケットデザインの話につながるわけですね。
小岩井 はい。楽曲的には民族音楽系にしたかったんです。「ハレのち☆ことり♪」とも被らないようにしたかったですし。
藤本 こちらからすると、めちゃくちゃ怖かったです。なかなか楽曲があがってこなくて(笑)。でも、最終的に間に合わせてくるので、さすがはプロだなと思いました。
小岩井 はじめて聴いてもらったのがレコーディングの日でした。いろいろと締め切りに追われていて(笑)。どんな楽曲を作っているか、ことばで説明するのは難しかったんですよ。「民族音楽系で、ナレーションのセリフや歌がいくつも被っていて、登場人物も何人も出てきて、全部私が演じて歌います」って。
藤本 わからないでしょ?(笑)。
――物語音楽ですし、たしかに効かないとイメージが難しいかもですね。詞と曲はどちらから作っていったんですか?
小岩井 基本的なリフのメロディを先に打ち込んで、詞とメロディを同時に考えていきました。歌っている部分はそれほど多くなくて、セリフで表現をしている部分が多いんですよ。ラップみたいなイメージの作り方でした。ゲームに出てくるような酒場で曲を弾いて、そこにみんなが乗っかって歌うみたいな自由な曲です。
――セリフや歌声が被っていますけど、レコーディングはどのように?
小岩井 前から順番に重ねて録っていきました。ラスサビの裏メロで、同時にふたつのメロディを歌っているんですけど、あと一歩表現が足りない感じがして、ここだけはレコーディングの後に足しました。「運命の輪を廻す者 XX」は分厚い本の中の数ページだけを表現している、いわば答えがない物語なんです。さすがにヒントが少なすぎるなと思って、最後に二重になったメロディを足しました。
――すべての構想が頭の中にあるわけですね。
小岩井 はい。今回の楽曲で主人公的に扱われるのは、羽の生えた女の子なんですけど、全体の中でいうと、違うんだろうなと。今後続いたら書けることもあると思います!
――各楽曲どういった方に聴いてもらいたいですか?
小岩井 収録の順番的には逆なんですけど、「運命の輪を廻す者 XX」でドラマのように最後ドキッとする展開で楽しんでもらって、「ハレのち☆ことり♪」でエンディングとして聴いてもらえたらなと。それぞれ聴くなら、「ハレのち☆ことり♪」は元気を出したいときに、「運命の輪を廻す者 XX」は物語音楽や考察、たくさんの情報を耳から取り入れるのが好きな人は楽しいと思います。いつかいろいろなイベントで歌えたらいいなと思っています。ぜひ予習してください!
■写真集も……?
――ここまでたくさんお聞きしましたけど、小岩井さんがなぜDTMやオーディオの道に進んだのかというところもお聞きしたいなと。
小岩井 私は声優の勉強の多くは独学なんですよ。何回かレッスンには行ったんですけど、しっかりと学校に行って学んでいないので、デビューして最初のころの現場ではできないことも多くて。そこで、自分で声を録音して練習しようと思ったのが、DTM機材に興味を持ったきっかけですね。
――声優として勉強するために。でも、DTMにまでいくのはすごいですよ。
小岩井 ほかに解決法が思いつかなくて。スタジオと同じ機材を買って練習してみるしかないなって感じでした。
――お仕事のために始めたら個人的にもハマッていったんですよね。
小岩井 同人音楽も好きでしたし、DTMへの憧れもあったんですけど、そうですね。
――機材の扱いで苦労とかは。
小岩井 小学生のころからパソコンをやっていたので、そういう人ならだいたい問題ないかと思います。最初に使ったのがCubase AIという機能制限されたバージョンのソフトだったんです。制限されてはいるけど、一通りのことはできるんですよ。フリーソフトも使っていろいろやっているうちに楽しいなと。
――すごい……。いまは自宅で楽曲制作からレコーディングまで全部出来る環境なんですよね。
小岩井 基本的に出来ます! 「完パケ納品できる唯一無二の声優」と言われていて、その肩書きは気に入っています(笑)。
――たしかに唯一無二ですね。そしていまはそれが仕事にもつながっている。「ポタフェス」(ポータブルオーディオフェスティバル)に出演したり、『GetNavi』で雑誌連載したり……。10時間かけてイヤホン・ヘッドフォン・DAPの100機種レビューなどをしていて、とてつもないなと。そして先日発表されていましたけど、メタルバンドとしてのデビューにDJ活動もスタートしますね。
小岩井 メタルバンドで一緒にやらせてもらうRYUさんも、DTMで楽曲を作っているんですよ。なので基本的にスタジオを借りて録音することがないんですよ。バンド名の「DUAL ALTER WORLD」は、「DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)」から取っているんですけど、その名前らしく「DAW」を駆使してやっていきます。DJもせっかくトラックを作れるので、自分で編曲をしてどんどんやっていきたいですね。
――今後チャレンジしてみたいことはありますか?
小岩井 写真集を出したいですね。
――写真集!
小岩井 私のかわいい機材たちを紹介する。
――機材の!?
小岩井 私が一緒でもいいんですけど(笑)。素敵に撮ってあげたいなあって。機械や趣味をフィーチャーしたものって需要があると思うんですけど、そこまで写真集とかは出ていないので、私も出来たらいいなと思います。
●『Harmony of birds feat.小岩井ことり』
01.ハレのち☆ことり♪
02.運命の輪を廻す者XX
03.ハレのち☆ことり♪(instrumental version)
04.運命の輪を廻す者XX(instrumental version)
●配信サイト
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