ゼンハイザーのフィロソフィーを詰め込んだドライバー
音質についてはこのあとレポートしますが、キモになるのが直径7mmのダイナミック型「SYS7」と呼ばれるドライバーです。ゼンハイザーの高級イヤホン「IE 800 S」(ヨドバシ.comでの価格は税込129,600円)にも搭載されています。つまり、ゼンハイザーのプレミアムイヤホンのフィロソフィーを注入した高音質ドライバーを内蔵しているのです。ハンドメイドで作りあげていたドライバーを量産できる体制を整え、MOMENTUM True Wirelessに採用しました。
Bluetooth接続は高音質・低遅延を特徴とするaptX LLのほか、aptX、AACにも対応しています。今回はGoogle Pixel 3 XLをリファレンスにして、aptXコーデックで音質を確かめてみることにします。
MOMENTUM True Wirelessのサウンドは解像度が高く、中高域の透明感に富んでいます。どの帯域もバランスよく鳴らしてくれますが、最もうまみを感じるのは鮮やかなミドルレンジです。ボーカルにピアノ、ギターが演奏するメロディがとてもエネルギッシュに聞こえます。
J-POPでボーカル系の楽曲はとても相性がいいと思います。2018年に音楽配信サービスで解禁されて話題を呼んだMr.Childrenのベストアルバム「Mr.Children 1992-1995」の収録曲から、『シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~』を聴いてみましょう。勢いのあるボーカルを前面に引き出しながら、声の表情の変化を豊かに再現します。バンドの楽器も定位が明瞭で力強く、まるでヘッドホンで音楽を聴いているみたいにゆったりとしていて、立体的な空間描写が楽しめます。
電気グルーヴの楽曲『MAN HUMAN』を再生してみると、低音への対応力の高さがよくわかりました。音の瞬発力が高く、冴え渡るビートの切れ味に圧倒されます。余韻も濁らず、音の消え入り際にミントのようにさわやかな後味が残ります。ボーカルやシンセサイザーのメロディに余計な付帯音が乗らないので、この曲独特の張り詰めた緊張感が伝わってきて、思わず背筋がゾクっとしました。
「Smart Control」アプリに搭載されているイコライザー機能は、上手に使うと低音再生を心地よいレベルに持ち上げたり、引き締めたり、あるいはボーカルの高域をより伸びやに響かせたり……ユーザーの好みに合わせた音に味付けできます。アプリの画面に現れる白いアイコンを動かせば、音の変化を確かめながら直感的に意中のサウンドへ調整できます。一度設定した値はイヤホンに保存されるので、セッティングを変えない限り持続されます。
外音取り込みなど、細かい機能も充実
「Transparent Hearing」は、本体内蔵のマイクで外音を取り込む機能です。音楽を再生しながら外の音を取り込むか、音楽を止めて外音取り込み機能だけをオンにするかを選べます。音楽再生の心地よいバランスが崩れない程度に外音が聞こえるので、とても実用的な機能といえます。
本体はIPX4相当の防滴・防汗設計としているので、外音取り込みの機能と合わせて、ジムでトレーニングしながら音楽を聴きたいときにも役立ちます。イヤーチップのノズルに十字ガードがついていますが、これは誤ってイヤホンを耳の奥深めに入れ込んでしまっても、ノズルが肌を傷つけないようにするゼンハイザーならではの気配り。歴代MOMENTUMシリーズのイヤホンで、脈々と受け継がれているものなのです。スポーツシーンだけでなく、さまざまなシーンで音楽に没頭できる安心感を得られるところがMOMENTUMシリーズの魅力でしょう。
MOMENTUM True Wirelessは、現在発売されている各社の完全ワイヤレスイヤホンに比べると値段は少し高めです。でもそれは、購入後もずっと満足感を得られるイヤホンだからであるということがよくわかりました。文句なしにオススメできるイヤホンです。