近頃はディスプレイに有機ELを採用するスマホが増えています。シャープの「AQUOS zero」は自社開発の有機ELディスプレイを搭載し、画質にこだわり抜いた端末です。しかも、ドルビーラボラトリーズの高画質・高音質体験を実現する技術もサポート。今回は、AQUOS zeroのエンターテインメント性能を中心にレビューします。

自社開発の有機ELディスプレイ、どんなメリットが?

シャープのAQUOS zeroは、2018年12月下旬にソフトバンクから発売されたAndroid 9搭載スマホです。メインプロセッサに採用するのはクアルコムのモバイル向けプラットフォーム「Snapdragon 845」シリーズ。サクサクと機敏な操作レスポンスを実現しています。

また、自社開発の約6.2インチ有機ELディスプレイ(1,440×2,992ドット)を搭載しました。アスペクト比は18.7対9と、長辺が長くてスリム。パネル全体が緩やかなカーブを描く独自のラウンドフォルムによって、片手持ちでの操作感を高めています。

  • AQUOS Zero

    背面パネルには、アラミド繊維のテクノーラという頑強な素材を採用。軽いのにタフなボディとしています

  • AQUOS Zero

    スマホの常識を覆すほどの軽さと薄さを実現。側面のフレームはマグネシウム合金で、強さも担保しています

スマホの有機ELディスプレイを自社で開発すると、どんないいことがあるのでしょうか。もちろん、シャープの技術力を世界に誇示する狙いもあるでしょうし、今後は他社に有機ELを供給するビジネスについても考えているはずです。ですが、なによりもAQUOS zeroの“画づくり”に注力していると想像できます。

たとえばケーキ作りをイメージしてください。でき合いのスポンジを買ってきてフルーツやクリームでデコレーションしてケーキを作るよりも、スポンジから自分で作ったほうが理想の味に近づける可能性は高くなります。

最新のディスプレイと電気回路を用意して組み立てれば、スマホやテレビに画を映すことはできますが、それだと映画にドラマ、ゲームやスポーツの映像体験で「感動」を呼び起こす領域まで到達できないと思うのです。

画づくりの工程として、ディスプレイなど、組み合わせるモジュールの特性に合わせて映像処理エンジンをていねいにチューニングすることも欠かせません。ディスプレイの開発から自社で取り組み、液晶テレビ「AQUOS」シリーズで培ってきた画づくりのノウハウも盛り尽くしたスマホがAQUOS zeroなのです。

なぜ最近は、有機ELディスプレイを採用するスマホがこれほど増えているでしょうか。有機ELは素子自体を光らせて映像を映し出すディスプレイなので、液晶と違ってバックライトモジュールが必要ありません。うまく設計すれば端末の薄型・軽量化、さらに省電力化をまとめて実現できます。ただ、液晶ディスプレイとは構造が大きく違うため、有機ELならではの画づくりが求められます。シャープ初の有機ELスマホの真価が問われるポイントがここにもあります。