レンズで印象に残ったのは、やはりソニーのフルサイズミラーレス用の単焦点レンズ。といってもソニー純正品ではなく、カールツァイスの「ZEISS Batis 2/40 CF」だ。
焦点距離は40mm。これは、どのカメラにも用意されている定番の焦点距離とは言い難いが、少し広めに撮れる標準レンズとして、また少しタイトな画角の広角レンズとして、古くから写真ファンに人気のあるスペックだ(ツァイス自身は、このレンズは標準域であると定義しているようだ)。
僕個人としても、40mmはとても好きな画角だ。広角の35mmでは間の抜けた広さだなと思う時や、標準の50mmでは狭さを感じるなという時でも、気持ちにスッとフィットする画角として使いやすく思っている。
この使いやすさをさらに増しているのが、製品名の「CF」にも表されているClose Focus。このレンズは最短撮影距離が24cmととても短く、クローズアップ撮影が可能。これ一本でスナップ撮影などに出かけた場合でも、ちょっとした小物がマクロ的にクローズアップ撮影できるのだ。ハガキの半分くらいの大きさのものが画面いっぱいに写せる、と考えていいだろう。
本体の仕上げの美しさも特筆できる。近年のZEISS製品と共通の、金属仕上げで管楽器を思わせるようななめらかなフォルムの鏡筒を持ち、生活防水機能を備える。ただ、Otusとは違ってフードは金属製でなく樹脂製となっているのがちょっと残念な点か。
マニュアルフォーカスリングは、ローレット刻みのないゴムリング。軽すぎずどこまでもしっとりと回転し、回していてもトルク変動がなくストレスを感じない。距離指標窓は有機ELによるデジタル表示パネルになっており、マニュアルフォーカス時にはピント位置の距離と、被写界深度の目安となる距離が並列で表示されるようになっている。細かなアナログの距離目盛を読んで目安にするよりも、ダイレクトに数字が表示されるので、ひと目でわかる良さがあると感じた。
画質も期待通りの仕上がりで、解像力の高さはもちろんのこと、繊細な輪郭と色のコントラストの高さで立体感のある描写が楽しめる。ディストーションも十分に抑えられているので、建造物の撮影などにも不安を覚えないし、高画質の単焦点レンズとしてはAFも静かでなかなかの速度を見せてくれる。逆光撮影時にフレアが若干発生し、コントラストの低下が目立つ場面があったので、フードは常用したいと感じた。
単焦点レンズでありながら、万能レンズ的に使える画角と近接性能を持っている。気軽に使える高性能レンズとしておすすめしたい一本だ。