2019年を迎え、冬ドラマがいよいよスタートする。従来のリアルタイム視聴率ではなく、“視聴者満足度”を研究してきた「テレビ視聴しつ」の室長であり、テレビドラマの脚本家や監督、音楽などの制作スタッフに精通している自称ドラママニアが、出演者はもちろん、制作スタッフが過去に手掛けた作品に焦点をあてながら、この冬注目のドラマを紹介する。
■注目の“高満足度脚本家”最新作
冬ドラマの“脚本家”で注目なのは、高畑充希主演『メゾン・ド・ポリス』(TBS系 1月11日スタート、毎週金曜22:00~)を手掛ける黒岩勉氏。テレビウォッチャーが行った満足度調査(データニュース社)によると、黒岩氏が執筆した16年4月期の伊藤英明主演『僕のヤバイ妻』(カンテレ・フジテレビ系)は、期間トップで年間でも2位となる高満足度4.04(5段階評価)を記録している(トップは『逃げるは恥だが役に立つ』)。
また、昨年4月期のディーン・フジオカ主演『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジ系)は、視聴率(関東地区)がゴールデン・プライム(GP)帯ドラマの期間最下位という結果だったが、満足度では第2位の3.84を獲得するなど、作品の質という点において近年注目を集める脚本家の1人だ。
中でも、黒岩氏が得意としているのがミステリー。15年4月期の相葉雅紀主演『ようこそ、わが家へ』(フジ系)では、視聴者のテンションを持続させることが難しい“誰が犯人か”をひも解く全10話の長編ミステリーを成功させ、期間2位となる満足度3.88を記録した。同じく相葉雅紀主演で、17年4月期の『貴族探偵』(フジ系)は、1話完結のストーリーでありながら、各話にさりげない伏線を忍び込ませ、全体を俯瞰(ふかん)したときに大きな物語が浮かび上がってくるという巧みな構成に挑戦。その難解さから、満足度は3.32と低調だったが、熱狂的な原作ファンを唸らせる作品に仕上げた。
今作は、新人の女性警官が主人公で、元警察官のおじさんたちと協力して事件を解決するという、これまでの黒岩作品にはないユーモアなミステリーが展開されそう。監督は、13年の竹内結子主演『ストロベリーナイト』(フジ系)や、昨年9月に公開された映画『累-かさね-』でも黒岩氏とタッグを組んだ共同テレビの佐藤祐市氏で、相性もバッチリだ。
■『鍵のかかった部屋』チームが月9に再集結
脚本・監督・音楽という“制作チーム”で注目したいのが錦戸亮主演の『トレース~科捜研の男~』(フジ系 1月7日スタート、毎週月曜21:00~)。脚本の相沢友子氏、監督の松山博昭氏、音楽のKen Arai氏という座組は、12年の大野智主演『鍵のかかった部屋』以来2度目となる。
『鍵のかかった部屋』は、満足度3.80という高数値で、視聴者数を示す“接触数”でもクールトップを獲得したヒット作。謎解きの面白さはもちろんだが、オリジナルキャラクターを登場させて主要メンバー3人の会話劇の面白さも加えた脚本、特殊な密室トリックを模型を用いながら分かりやすく解説した演出、マニアックで深夜ドラマのテイストにもなりがちな設定をエレクトロミュージックを使ってポップな月9らしい世界観を構築した音楽…それを実現したこの3人での“月9ミステリー”は、否が応でも期待が高まる。
昨年7月期の沢村一樹主演『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』、10月期の織田裕二主演『SUITS/スーツ』と、月9は3作連続の“非恋愛もの”かつ“事件解決もの”が続く。さらに、副題が沢口靖子主演の人気シリーズ『科捜研の女』(テレビ朝日系)を連想させるなど、大人の渋めのミステリーを予感させるが、直近2作や“沢口靖子版”とは趣の全く異なる作品になりそうだ。