――放送開始から3か月が経ち、子どもたちの間ではすでに、歴代仮面ライダーの力を受け継いだライダーアーマーで戦うジオウとゲイツはヒーローとして絶大な人気を誇っています。仮面ライダーが子どもたちに受け入れられる理由について、どんな風にお考えですか。

子どもに好かれるヒーローの条件としては「強い」というシンプルなものが絶対に必要です。『仮面ライダーディケイド』や『仮面ライダー電王』が人気だったのは、戦いに対して積極的だったり、勢いよく戦ったりという、にじみ出る「強さ」を感じさせるからなんです。極端な話、強ければワルくてもいいんです。

『仮面ライダー龍騎』(2002年)の仮面ライダー王蛇は完全な"悪"のライダーでしたが、すごく人気が高かった。その点、仮面ライダーゲイツがアナザーライダーにやられることが多くなってきたので、ちょっと心配ですね。主役ライダーに対する2番手ライダーの宿命といいますか、主役のジオウを負けさせるわけにはいかないので、ゲイツのほうが割りを食ってしまうときがあります。でもゲイツにもどんどん強くなっていってもらいたいですね。

また『ジオウ』を観ていると思うのは、タイムマジーンに代表されるメカ戦、ロボ戦がとても楽しいんです。ここ数年の間でも、CG表現やデジタル合成のレベルが非常に上がっているのがわかります。現場的に仕上げるスピードも、クオリティも申し分がないですね。CGや合成カットの使い方に詳しい、若い監督が育ってきているのも大きいと思います。

第11、12話の上堀内(佳寿也)監督回では、3日後のソウゴと現在のソウゴが同じ場所にいる画面がたくさん出てくるのですけれど、合成カットに違和感がまったくなく、自然に「2人のソウゴ」を見せているんですよ。現場の技術が向上して、監督のいろいろなアイデアを具現化できるようになり、どんどん新しい映像表現をやってみようという姿勢が感じられて、すごくいいですね。『ジオウ』では多彩な顔触れの監督たちに来てもらっていますが、みなさん作品に全力を注いでくださるので、毎回どんな映像が観られるのか楽しみにしているんです。

――スーパー戦隊シリーズにも携わっている武部さんにお尋ねしたいことですが、「スーパー戦隊」と「仮面ライダー」とでは作り方に違いがあったりするのでしょうか。

『ジオウ』の脚本を書かれている下山(健人)さんは『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015年)をはじめ、スーパー戦隊のほうを多く手がけている方で、仮面ライダーはあまりやっていないんですけれど、最初のホン(脚本)打ち合わせでは「それはライダーっぽくないです」みたいな議論をよくやりました。

微妙な線なのですが、スーパー戦隊と仮面ライダーでは対象年齢を少し変えようとしています。「戦隊」の怪人だと、人間をどこかに閉じ込めてしまうとか、別のものに変えてしまうけれど怪人が倒されたらもとに戻る、みたいなパターンで行くところを、仮面ライダーだともう少し生々しいというか、怪人の描写にもリアルな「恐怖」を盛り込んでいる傾向ですね。やはり仮面ライダーのほうが上の対象年齢を狙っていますので、できるだけストーリーや画面に「リアリティ」を持たせるようにしています。

――平成仮面ライダー20作を記念した映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』が公開されていますが、今回の映画の"狙いどころ"はどんなところでしょうか?

白倉が言うには、「平成最後の仮面ライダー映画なので、単なる歴代ライダー集合映画にしても仕方がない」と。ではどんな映画にすればいいのかということで、ホンの打ち合わせがいつまでも終らなくて苦労しましたね。まずプロット(あらすじ)をまとめるまでに時間がかかり、脚本も9稿とか、10稿とか、やってもやっても終らない……。準備稿を作って山口(恭平)監督に送ってはいるんですけれど、そこからどんどん内容が変わっていくので監督も大変だったと思います。

結局、骨子のところは「平成仮面ライダーを愛していただいた、すべての方たちのために」という部分ですね。『クウガ』から『ジオウ』まで20作品すべてを観てくださっている方は本当にありがたいですけれど、子ども時代に『龍騎』や『555』を観ていたけれど、大人になってからの最近の作品は知らないという方もいらっしゃいますよね。今回の映画は、平成仮面ライダー20作のうち、どれかひとつでも「思い出の平成仮面ライダー」がいれば、ぜひ観てほしいという作品なんです。『ジオウ』と『ビルド』のキャラクターがメインになりますが、2作品をあまり観ていないという方でも観やすいお話で、きっと満足していただけると思います。平成仮面ライダーを愛していただいたみなさんへの、作り手からの「贈りもの」になっていればうれしいですね。

――第2作『仮面ライダーアギト』からプロデューサーとしてシリーズに携わってきた武部さんに、改めて「平成仮面ライダー」ならびに「平成」という時代を振り返ってご感想をいただけますでしょうか。

今では『アギト』を担当した2001年から10年くらいの記憶があまりなくて、なんか一瞬で終ったような印象なんです。もちろん、毎年毎年さまざまに濃密な出来事がありました。以前、小林靖子(脚本家『仮面ライダー龍騎』『電王』『オーズ』)さんと2人で「私たちの青春はすべて仮面ライダーに捧げていたかも」って話をしていたら、田崎(竜太)監督が横で聞いていて「いや青春って年でもないでしょ」ってツッコまれましたけれど(笑)。

一作一作を皆で全力でやっていたら、いつのまにか「平成ライダー」と呼ばれるようになった、という感じです。「平成」と名付けられなければ、終わることもなかったのに、また新しい元号が決まり、新たな始まりを迎えるわけですよね。新元号になっても仮面ライダーシリーズが好調なままどんどん作られていって、将来的には平成仮面ライダー20人と「仮面ライダー大戦」ができればいいなと願っています!

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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