――『仮面ライダー555(ファイズ)』では、ファイズに変身できる者が乾巧だけでなく、ファイズギアを手にしたさまざまなキャラクターがファイズに変身していました。そのすべてを高岩さんが演じられているとうかがいましたが、同じファイズでも変身者が異なる場合の演技はどのようにされていたのでしょう。

乾巧役の半田(健人)の芝居が、ぶっきらぼうというかアウトローっぽいイメージだったので、巧が変身したファイズはそういった雰囲気で演じていますね。難しかったのは、オルフェノクの木場勇治が変身したファイズでした。自分では勇治のつもりで芝居をしているのですが、石田(秀範)監督からNGを出されまくっていました。何回も「それは巧だ」とか言われて、テイク10くらいまで行ったんじゃないかな。もう、あのときの石田監督は怖かったですね。後から考えると、巧と勇治は似ているところがあるから、1人で彼らを演じ分けようとすること自体が難しかったんじゃないかと思っています。

――お話をうかがっていますと、仮面ライダーの変身後というのはカッコよく怪人と戦うアクションはもちろんのこと、変身前の役者さんのイメージを受け継いだ「お芝居」の部分も重視して、出来る限りの表現力を駆使して挑まれている感じですね。役者さんとのイメージを合わせる作業で、もっとも気をつけられているのはどんなことですか。

変身前のキャラクターに強い特徴があったら、そこを活かして変身後の芝居に盛り込むことができるのですが、それほど特徴のない人物の場合、なかなか表現するのが難しくなってきます。主役ライダーなので基本はマジメで熱血、負けず嫌いとか、性格設定が限られてくる場合があるのですが、そういった設定以外の部分……つまり主役を演じる俳優の芝居に見られるクセだったり、ちょっとした仕草だったり、自分がつかめる部分が見つかればそこを拾って、変身後の芝居に活かすというのを心がけていますね。

――『仮面ライダーカブト』(2006年)の天道総司なんて、変身前のキャラが濃厚すぎるので、ああいった場合は高岩さんも変身後のカブトを演じやすいのではないですか。

確かにそれは言えますね。天道は常に堂々としていて、キャラがブレていない。あの手を指さすカブトの決めポーズは、最初は水嶋(ヒロ)が監督につけてもらったものなのですが、それをこちらで拾いながら、カブトの芝居を作っていきました。

――逆に、変身後のキャラ作りで苦労された仮面ライダーはいますか?

さすがに長年やってきていますと、キャラが被ったりする場合が出てくるんですよ。どうにも困ったときは、強引にこっち(変身後)側の動きでキャラを作ってしまって、役者のほうが僕に寄せてもらえるようお願いしたこともありますよ。

――映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』に登場する歴代平成仮面ライダーの必見ポイントがあれば、教えてください。

これまでに作られた「仮面ライダー大集合」映画では、歴代ライダーの戦いはサラッと流し気味でしたけれど、今回は仮面ライダーひとりひとりが往年の特徴をしっかりと捉えたアクションを見せるのが大きなポイントです。動きのほかにも、当時の映像エフェクトを再現している仮面ライダーもいます。映画をご覧になると「龍騎ってこんなアクションしていたなあ」とか「電王のアクションが懐かしい」とか、思ってもらえると思います。僕もジオウだけでなく、いくつかのレジェンドライダーを演じているんです。

――数々の仮面ライダーを演じてきた高岩さんにお尋ねしたいのですが、ライダーキックをカッコよく決めるコツのようなものはあるのでしょうか。

トランポリンを踏んで、空中でただキックの構えをするだけでは、カッコよくならないんですよ。なかなか言葉で表すのは難しいのですが、あえて言いますと、蹴り出すときの"勢い"と"キレ"でしょうか。足の裏を普通に見せて蹴るのではなく、空手の「足刀蹴り」のように足をお辞儀させ、蹴ったときの形がきれいに見えるように努めないといけません。

――仮面ライダーの世界がすべてテレビの中の"虚構"である、という視点が出てくる今回の映画のストーリーについて、いかが思われましたか?

これまでテレビで『平成仮面ライダー』を応援してくださった方たちの"思い"というものを重んじた、面白いストーリーだと思いました。「本当は仮面ライダーなんていない」みたいなところから「やっぱり仮面ライダーはいるんだ」という風に変わっていく、仮面ライダーファンの方々の気持ちを汲んだ映画になっていますね。

――高岩さんにとっての「仮面ライダーの魅力」とは何だと思われますか?

僕も昭和の仮面ライダーを観て育った世代なのですが、昭和も平成も共通していえる「仮面ライダー」の魅力とは、やっぱり「変身」なのではないかと思います。映像表現やキャラクターは時代と共に変化してきましたが、子どもたちがいちばん引き込まれるのは「変身!」と叫んで一瞬で人間からヒーローに変わるところでしょう。それだからこそ、歴代仮面ライダーの「変身ベルト」が人気を集めているのだと思います。

――改めて映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の見どころを教えてください。

まずは『ジオウ』と『ビルド』の共演ですね。そして、繰り返しになりますがクウガからジオウまで20人もの仮面ライダーが揃って立ち回る際のアクションスタイルにご注目ください。平成仮面ライダー20作の中でもっとも思い出深い仮面ライダーを見つけて、その雄姿をぜひご覧いただきたいです。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』は現在公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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