自分にとってはベストじゃないけれど、妙に気になって仕方がないモノってのがある。2018年のレンズでいうなら、シグマの「105mm F1.4 DG HSM」がそれに該当。なんだかハチャメチャなのがスゲーいいのだ。
この場合のハチャメチャってのは、適切な表現であるかどうかはともかく、最大級のホメ言葉だと捉えてもらって差し支えない。理想を実現するためになりふり構っていないところがオモシロイというか羨ましいというか人生かくあるべきと思わされるというかナンというか……。ああ、ワタシもこうありたいなんてコトまで思わせるレンズなのである。
フィルター径105mmというシャレみたいな前玉のデカさが醸し出すシルエットは一種、異様であり、構えると105mmレンズとしては常識外れに重い。でも、仕上がる画は繊細にしてシャープ。そして、ボケはとことん優しくおしとやか。うーむ、これぞまさしくキレイなジャイアン。やるなぁ、シグマ。
それと対極に位置する……という表現は少しハズしているような気がするけれど、焦点距離スペックからすると拍子抜けするほど小さく軽いのがニコンの「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」だ。シグマの105mm F1.4 DG HSMがオフの楽しみとして使いたいレンズだとするならば、こちらの500mmは仕事で徹底的に使い倒したくなるレンズだといえる。
F5.6という少しだけ控えめな開放F値とPFレンズの採用により、70-200mm F2.8クラスと同等の重さを実現。カメラを構えファインダーをのぞくと、500mmならでは画角の狭さと500mmとは思えない軽さの共演が過去の経験を木っ端微塵に吹き飛ばす新たな手応えとなって脳天を刺激する。今までの500mmとは明らかに異なる、とても新鮮な気持ちで超望遠撮影ができるのだ。もうそれだけで、このレンズの“勝ち”である。
ここに掲載の作例は、AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRとフルサイズミラーレス「Z 6」の組み合わせで撮影したもの。常識を裏切るといってもいいサイズと軽さゆえ、Zのボディサイズとの装着バランスもバッチグー。これ、とても今ふうの接し方だと思う。もちろん、マウントアダプター「FTZ」を介しての使用だったわけなのだけど、AFの動作を含め何ら違和感なく使うことができたのも好印象。ちなみにこのAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR、質量はシグマの105mmF1.4 DG HSMよりも200gほど軽い。いやはや、なんだか難しい世の中になってきましたなぁ(笑)。
著者プロフィール
落合憲弘(おちあいのりひろ)
「○○のテーマで原稿の依頼が来たんだよねぇ~」「今度○○社にインタビューにいくからさ……」「やっぱり自分で所有して使ってみないとダメっしょ!」などなどなど、新たなカメラやレンズを購入するための自分に対するイイワケを並べ続けて幾星霜。ふと、自分に騙されやすくなっている自分に気づくが、それも一興とばかりに今日も騙されたフリを続ける牡牛座のB型。2018年カメラグランプリ外部選考委員。