遅刻癖を直す方法はあるのか!?
――そもそも遅刻をしてしまう原因って、どういうところにあるんですか?
高木:まず、今回お集まりいただいた皆さんは違うと思うんですけど、精神科的に治療が必要だと言える遅刻の原因は「ADHD」と「睡眠障害」ですね。ADHDの症状のなかには、自分がどんなに頑張っても遅刻してしまうとか、締め切りが守れないとかっていうものもあります。もしくは、睡眠障害によって睡眠のリズムが乱れて、単純に朝起きられないとか。もし、日常生活や日々の仕事に支障をきたすレベルで遅刻をしてしまうようなことがあるのであれば、精神科で治療したほうがいいですね。皆さんの場合は、それに当てはまらない、普通の遅刻をしてしまうという。
真島:シンプルにだらしないっていうやつですか。
高木:でも、実は私も小学生のころから「時間にルーズだ」と担任に言われていたぐらいで。
武藤:本当ですか!? 一気に親近感がわきました。
浜岡:今日1番嬉しい。
真島:お医者さんも人間なんだなぁ。
高木:ですので、皆さんの言い分もちょっとわかる部分がありつつ。その観点から言わせていただくと、遅刻をしてしまう原因、そしてその改善策としては大きなキーワードが2つ挙げられるんですよ。それは、「責任感」と「モチベーション」。
――ひとつずつ解説をお願いします。
高木:まず、絶対に遅刻できないシチュエーションをイメージしてみてください。例えば、今日1億円の案件の契約をするとします。でも、1秒でも遅れたらもう契約はポシャりますとなったら、絶対に皆さんちゃんと遅れずに行くじゃないですか。
武藤:もう前日から寝ないですね。
高木:ですよね。その「責任感」があるかないか。私の同僚の先生にも、まあ遅刻がひどい非常勤のドクターがいたんですよ。でも、常勤になったとたんに突然ちゃんと時間を守るようになって。
真島:僕は今、何の肩書きもないんですけど、なにかしらの役職を与えたらいきなりちゃんとする可能性もあるわけですか?
高木:あると思います。簡単に役職をつけるわけにもいかないと思うので、失敗しても大きな問題にはならないプロジェクトを任せてみるとか。下に後輩を付けるとか。先輩側からできる対策としては、そのあたりが考えられますよね。
浜岡:僕、4月って全然遅刻しないんですよ。1年目の後輩が入ってくるからちゃんとしなきゃ、見本にならなきゃっていう意識があるんでしょうね。
――もうひとつ、「モチベーション」とはどういうことでしょうか。
高木:先ほどの対談で、「プライベートな遊びの予定は遅刻しない」みたいな話もあったかと思うんですが、要はそういうことです。自分が楽しみにしているものであれば、っていう。
浜岡:仕事においてもポジティブな意識を持つみたいなことですか。
高木:精神科的に言うと、「認知行動療法」っていう類の考え方です。わかりやすい例で、自分にばっかり仕事を振ってくる上司がいるとします。そこで「あの上司、超イヤなやつ」って思うのと、「上司は自分を信頼していて、自分ならできると思っているから仕事も任せてくれているんだ」って思うのとでは全然違うわけじゃないですか。
浜岡:その考え方の変化を上司なり周りがアシストしてあげられればいいってことですね。
武藤:僕も自分なりに遅刻癖は直そうと思っていて、何を改善したかって言ったら「前向きに考えるようになった」っていう部分なんですよね。前に勤めていた会社は今と比べて圧倒的に忙しかったんですけど、そのころは今より遅刻も多くしちゃってて。メンタル的にしんどいなっていうときのほうが遅刻しがちだったりするんですよね。
真島:それは間違いないです。
武藤:今は前より余裕を持てる環境だからっていうのもありますけど、仕事がたくさんあっても「楽しい」っていう前向きな気持ちで会社に向かえているかもしれないです。無理やりかもしれないですけど、自己暗示というか。
真島:その境地に入りましたか。
浜岡:悟ってますね。
真島:好きな子がいるから学校にいくのが楽しみ、みたいな。それに近いものがあるのかもしれないですね。
浜岡:朝に楽しみをつくるっていうのはいいですね。そういえば、「ちゃんと10分前に来てる、俺エラい! 」とか、当たり前のことでも自分を褒めてあげるっていうのはやってますね。
武藤:だから、僕らみたいに普段から遅刻するようなタイプじゃない人がいきなり遅刻しだしたら危ない気がします。そういう場合、その人はだいたい表情も楽しくなさそうですし、やっぱり会社も辞めていきますよね。
真島:そうかもしれないですね。ネガティブなバイブスは、まず遅刻に表れる。
高木:それは、うつ病のちょっと手前の症状としても言えることかもしれないです。
――ポジティブなモチベーションを持つことが、遅刻癖を直す糸口になるかもしれないと。では、遅刻したことに対して罰則を設けるというのはあまり効果的ではないんですかね?
高木:罰則が効果を発揮するかどうかは、人によりますね。「遅刻をしたら罰金」と言うことで時間通りに来ようと思う人もいれば、「時間通りに来たらご褒美をあげる」と言うほうが効果的な人もいるでしょう。
武藤:「遅れたら500円です」って言われたら、僕は全然500円払いますけどね。
真島:僕もそうですね。「遅れたら500円払わなきゃいけない」じゃなくて、「500円払えば許される」って思っちゃうんですよね。
浜岡:「遅刻したらプロジェクト外す」みたいな、そのぐらいじゃないと効果はないかもしれないですね。仕事をやりたいという想いはあるんで。
武藤:あとは言い方ですよね。「なんで遅刻するんだよ! プロジェクト外すぞ!! 」って怒られるよりも、「え、大丈夫? もし負担が大きいようだったらプロジェクトから一旦外そうか?」的な言い方をされたほうが「お、これはヤバい状況かも」ってなりますね。怒りから入るよりも心配から入るっていう。
――「責任感」と「モチベーション」、どちらもなかなか自分自身でどうにかするのは難しい気がしますね。
高木:あとはシンプルに、時間管理に対する意識を変えることですかね。私もそうなんですけど、遅刻が多い人って「これにこのぐらい時間がかかるだろう」っていう見立てが甘いんですよね。
武藤・浜岡・真島:そうなんですよ。
高木さん:だから、自分の見立てより最初から時間をプラスして考えて、そのうえで細かくアラームをかけておくのもいいかもしれないですね。起きる時間だけではなくて、何時までに着替えを済ませるとか、何時までに家を出るとか。
武藤:こないだ知人の家に行ったら、リビングにAIスピーカーが置いてあって。それが「ご飯を食べる時間です」とか「そろそろお風呂の時間です」とかいって、ことあるごとにお知らせしてくれるんですよね。その知人にとっては、時間管理をするうえでそれがけっこう効果的だったみたいで。
浜岡:僕それイヤですわー。
真島:ディストピアだ。
――皆さんは結局、自分の遅刻癖は自覚していて、直せるものなら直したいってことですよね。ただ、その直し方には合う合わないがあると。今回の座談会で、何かいい方法は見つかりましたか?
浜岡:個人的には、「部下ができる」っていうのが1番有効な気がしました。部下じゃないにしても、一緒にプロジェクトをやる人がいれば、1人でやるよりはよっぽどちゃんとすると思います。
真島:僕はそれでも遅刻してしまうかもしれないんですけど、そこで「心配から入る」というアプローチをされると、怒られるよりも反省するかもしれないですね。
武藤:時間管理の意識もこの機会に見直したいです。優先順位のつけ方とか、もっと細かく段階分けして締め切りを設けるとか。
――それでは最後に、この場を借りて言っておきたい遅刻魔側の主張などがありましたらどうぞ。
武藤:今日はさんざん責められ倒したような気もしてるんですけど、それでもこれだけは言っておきたい。デートに遅れてくるのはだいたい女性側なんですよ。
浜岡:我々もデートなら時間通りに行きますもんね。
武藤:デートはもはや待つものだっていう認識がありますし、べつにイラついたりはしないんですけども。
真島:待つのもデートの一部ですからね。
高木:なんの話をしてるんですか? (笑)
ビジネスシーンに限らず、周囲からの信頼を失う原因にもなりかねない「遅刻」。今回は、それをわかっていながらもついつい時間に遅れてしまうという「遅刻魔」の生態を座談会形式でお送りした。その結果、遅刻魔にもさまざまなタイプがいるということがわかっていただけたことと思う。一方で、何かしらの共通点も見えてきたはずだ。
自分で心当たりがあって遅刻魔を脱したいという人、身の回りにいる遅刻魔を更生させたいという人にとって、本稿が何か良いきっかけになってくれることを願いたい。
また、もし日常生活に支障をきたすほど遅刻をしてしまうという人は、1人で悩まず精神科医に相談してみよう。