世の中には、時間にルーズな人やいつも遅刻ばかりしてしまう人が一定数いるものである。そういった人たちは、自身の「遅刻癖」を一体どのように捉えているのか。そして、その癖を直すのに効果的な方法はあるのだろうか。
本稿では、自称・遅刻魔のビジネスマン3名による座談会を開催し、時間を守れる側の人間には理解しがたいであろう遅刻魔の生態をお届けする。さらに、その様子を精神科医の高木希奈さんに見ていただき、遅刻癖の原因と対策を探ってみることに。それではまず、遅刻魔トリオによる傷のなめ合い座談会の模様からご覧いただこう。
各々の遅刻魔度合いは?
――はじめに、自分が「遅刻魔」であるという自覚が芽生えたのはいつからかを教えてください。
浜岡さん(仮名/以下、敬称略):僕は新卒で入社したタイミングぐらいですね。その時期が1番遅刻してました。社会人1年目は生活リズムが変化したからというのもあるのかなと自分では思ってます。ちなみにプライベートでは全然遅刻しないタイプです。
武藤さん(仮名/以下、敬称略):僕はもう本当に、小学生時代から(満面の笑みで)。大事なテストの日だろうがなんだろうが遅刻してましたね。高校も出席率がよくなくて、ギリギリ卒業できたぐらいの感じで。社会人からはむしろマシになったぐらいですね。
真島さん(仮名/以下、敬称略):僕の場合も、もともときっちりした性格ではなくて、大学生になってひとり暮らしを始めてから特にひどくなりましたね。朝も一応起きるんですけど、家を出なくても誰に何を言われるわけでもないですし、大学もいつも午後から行って。社会人になってからは、単純に「遅刻したら誰かに迷惑がかかる場合はちゃんと時間を守る」っていうのをひとつのラインとして持ってます。
武藤:それは僕も同じかもしれないですね。取材とかは遅刻しないですけど、日常の出社に関してはけっこう遅刻しがちです。
浜岡:タスクがあるとか、忙しいときのほうが遅刻しないですよね。ちょっと余裕あるほうが油断しがちです。
真島:僕はその逆かもしれないです。
武藤:それに関しては僕も逆ですね。しんどい仕事があるときとか、やらなきゃいけないことが溜まっているときは眠りから覚められないです。
真島:やること多いなーと思うと腰が重くなりますよね。
――遅刻魔といってもタイプはさまざまなんですね。浜岡さんは、プライベートでは遅刻しないとおっしゃってましたが、他のおふたりはどうですか?
武藤:僕もプライベートは一切遅れることはないですね。むしろ早く着きすぎたりします。
浜岡:そうですよね。ワクワクが勝っちゃいます。
真島:いやー、僕ガンガン遅刻しますけどね。付き合いの長い友人や、そういうコミュニティにおいては「あいつはどうせ遅刻してくるから」と思われてるんだろうな、というか。そのキャラでゴリ押してるのは否めないです。
武藤:距離が近い相手に対してルーズになっちゃうのはわかります。
――遅刻が何かトラブルに発展したことはあります?
真島:トラブルってほどじゃないかもしれないんですけど、例えば交際相手と旅行にいくっていうシチュエーションがあるとするじゃないですか。そのときに、相手が旅行中のスケジュールをガッチガチに固めて提案してきたら、「おいおい正気かこいつ」って思っちゃうんですよね。それでちょっと気まずくなったりとか。
浜岡:たしかに僕も、相手によってそれはありますね。基本的に「行ってから考えよう」っていうスタンスなので。
武藤:時間に限らず、カチッと物事を決めて何でもスケジュール通りに進めたがる人とはぶつかることが多いかもしれないです。
真島:まず、飲みに行くのにお店の予約をするっていうこともめったにしないですしね。
武藤:女性とどこかに行くときだけはやりますね。でも、美容室とか歯医者は予約するのけっこう躊躇しちゃいます。
浜岡:昨日、髪を切りに行ったんですけど、本当は先週の予約だったのをすっぽかしちゃったんですよね。それもトラブルかもしれないです。へへへ。
――仕事でやらかしちゃったことは?
浜岡:遅刻というか、書類の提出期限を守れないとかはあります。バックオフィス系の書類の提出はどうも優先順位が低くなっちゃったりして。ギリギリでいざ手を付けたら、役所に取りに行かないといけない書類があって詰んだりとか。
武藤:ありますね。あとは、日々遅刻していることで純粋に周りからの信頼感が薄れていくっていう。でも仕事は割ときちっとこなしているので、「あれ、あんなに遅刻してくるのにそんなにしっかりしてるんだ」みたいなギャップは演出できてる気がします。
真島:下げて上げるやつ。追い込まれてからの帳尻合わせスキルはかなり培われてる気がしますよね。
――学生時代の夏休みの宿題とかは、みなさんどのように取り組んでました?
浜岡:中高時代は、ギリギリ徹夜して間に合わせるみたいな感じでしたね。大学に入ってからは、交渉すればなんとかしてくれる教授がいたりもして。それがもしかしたらダメな成功事例になっちゃってるのかもしれないです。
真島:これは過去に僕の遅刻魔仲間が言っていたことなんですけど、例えば、3日間で終わる分量の仕事を与えられたときに、5日間の期限が設けられていると。その場合、仮に最初の3日間で仕事を終わらせたとして、4日目から「さあ遊ぼう」ってときに何か事故にでも遭ったらどうするんだと。「だから俺は先に2日遊ぶ。むしろ3日遊んで仕事は2日で終わらせる」って話していて。本当にその通りだと思ってしまったんですよね。
武藤:僕は多分4日遊びますね。
真島:いつから我々はそうなってしまったのでしょうか。
――遺伝子レベルで遅刻癖がついているんですかね。ご両親は割とゆるいタイプの人ですか?
浜岡:母親はゆるいですけど、父親はきちっとしてます。家族の待ち合わせでも10分前集合みたいな。
真島:父親はガバガバですね。母親はかなりうるさくて。
武藤:うちは母親はゆるいんですけど、父親がきちっとしてるタイプ。ちょっと話は変わるんですけど、過去の彼女とかを振り返ると、けっこうそのへんきっちりしてる人が多くないですか?
真島:完全にそうですね。
武藤:僕は結婚してるんですけど、妻はものすごくキッチリしてるんですよ。同じようにルーズな人と付き合ったことってあんまりないかもしれないと思って。
浜岡:相手がルーズだと、こっちがちゃんとしなきゃと思うかもしれないですね。
武藤:旅行のスケジュールを決められたくないとか言ってるくせに、めちゃくちゃ決める人と付き合うっていう。なんなんですかねこれ。
――それも遺伝子レベルで惹かれる何かがあるんでしょうか。男性同士の付き合いにおいてはどうですか?
浜岡:遅刻魔仲間はいますね。社内にも。
武藤:仲のいい男友達はことごとく時間にルーズです。
真島:たしかに男の友人はだいたいルーズですね。ルーズであることに対してイライラしないからつるんでくれるんでしょうね。
遅刻魔に対して世間の声をぶつけてみる
――やはり類は友を呼ぶんですね。それではここで、「いつも遅刻ばかりする人の心理がわからない」という方々からの、遅刻魔に対する辛辣な意見を独自に集めてきましたので、それを聞いて少しでも反省していただこうかと思います。
真島:上等でございます。
――まずはこちら。「遅れるとわかった時点で連絡してほしい。遅刻魔の人が遅刻したときは、連絡がつかなかったり、『もうちょいで着く』みたいなテキトーなことを言っていつまでも来なかったり。あれはどういうつもりなんでしょう」だそうです。皆さんは遅れる場合、ちゃんと連絡してますか?
真島:僕は割と具体的な時間を連絡しますよ。
浜岡:「いま出ました」とか「いま電車乗った」みたいに、僕はちょっとボカします。たしかに、じゃあ何分に着くのって話ですよね。
武藤:仕事なら明確な時間を伝えますけど、プライベートだとあいまいになりますね。「30分以内には」みたいな。ただ、言いたいか言いたくないかでいったら、
武藤・浜岡・真島:言いたくはない。
――別の方からのご意見で、「自分が待たされる側になったときはどう思ってるんですか? 」というものも来ています。
浜岡:まったく苦じゃないですね。
武藤:僕も。
真島:僕もそうなんですよ。
(一同ニヤリ)
浜岡:さっきのご意見でもありましたけど、30分を超えてくるのであれば言ってほしいなという気持ちは少しわかります。言ってもらえれば他の場所で時間を潰せたりしますから。
武藤:僕は直立不動で2時間ぐらい待てたりするんで。全然イライラすることもないですね。
真島:本を読んだり妄想にふけったりしてれば何時間でも待てます。
武藤:連絡がつかなかったら「何かあったのかな」っていう心配をすることもあるかもしれないですけど、「あいつ待たせやがって」とか思うことはまったくないですね。
――これは根深いですね。次いきましょう。「こちら側が待ってあげてしまうから、待ってもらえるものだと思って遅れてくるのではないでしょうか。遅れてくる人はもう待たなくていいと思います」だそうです。
武藤:逆に気楽っすね。
真島:ですよね。むしろそうしていただけると、みたいな。
浜岡:追っかけますんで大丈夫ですー。
――怒られ慣れて皮膚が分厚くなってますね。だんだん腹が立ってきたので次でラストにします。「無人島を買って、日本中の遅刻魔をそこに閉じ込めたい。勝手に遅刻魔だけでやっといてくれ」 はい、どうでしょう。
浜岡:隔離してくれってことですね。
武藤:いや、もうねぇ……めちゃくちゃハッピーな国が出来上がりますよ。
真島:想像しただけで興奮してきました。
――だいたい予想通りの反応でした。もうけっこうです。それではここから、専門家の方に今の座談会の様子をご覧いただいたうえでのご意見をお伺いしていきましょう。よろしくお願いします。
高木さん(以下、敬称略):よろしくお願いします。