翔太郎の協力者として情報を提供する人物は、「風都イレギュラーズ」と総称されている。個性的な風貌をした情報通のウォッチャマン(演:なすび)、年中サンタクロースの格好をしているサンタちゃん(演:腹筋善之介)、大人がなかなか踏み込めない学生たちの情報や流行に詳しいクイーン(演:板野友美)とエリザベス(演:河西智美)たちが、街に暗躍するガイアメモリ犯罪の手がかりをつかんだことは数多い。また、翔太郎とは長い付き合いのよき理解者・刃野刑事(演:なだぎ武)、そして刃野の部下で翔太郎とはいつもいがみあっている若手刑事・真倉(演:中川真吾)も、風都を彩る人々として欠かせない存在となっている。
風都の人々にガイアメモリを密かに販売するのは、秘密結社「ミュージアム」である。街の名士というべき大富豪・園咲琉兵衛(演:寺田農)がミュージアムの総帥であり、テラー・ドーパントとして圧倒的な強さを見せつけたこともある。園咲家には冴子(演:生井亜美)、若菜(演:飛鳥凛)という姉妹がいるが、冷酷なキツい性格の冴子と、表向きは天真爛漫だが裏で闇の部分を抱えている若菜の仲は非常に悪い。
また、ガイアメモリのトップセールスマンとして名をあげた霧彦(演:君沢ユウキ)が、琉兵衛にも認められたことで冴子の婿として園咲家に迎えられている。冴子はタブー、若菜はクレイドール、霧彦はナスカと、それぞれドーパントに変身するほか、琉兵衛の愛猫・ミックもガイアメモリによってスミロドン・ドーパントになってWと一戦を交えている。
『W』テレビシリーズの第12話と13話の中間に位置する時間軸の物語として、2009年12月12日に映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』が公開された。『仮面ライダーディケイド完結編』と『仮面ライダーWビギンズナイト』という別々の2本の映画がクライマックスのアクションシーンでひとつになるという斬新な趣向の本作では、テレビシリーズの"前日譚"として第1話の冒頭につながる始まりのエピソード、つまり「ビギンズナイト」のもようが回想という形で語られた。
翔太郎が憧れる"おやっさん"鳴海荘吉には歌手・俳優として有名な吉川晃司がキャスティングされ、ハードボイルド探偵というキャラクターに十分な説得力を持たせる存在感と、重みと渋味を備えた名言の数々で『W』ファンをたちまち魅了した。荘吉がロストドライバーを使って変身した「仮面ライダースカル」のインパクト抜群の個性や、ファングメモリを用いてフィリップのボディをメインとする変則フォーム「ファングジョーカー」がテレビに先がけて披露されるなど、多くの話題性を備えた映画となっている。
第19話からは、風都署の超常犯罪捜査課の刑事として、照井竜(演:木ノ本嶺浩)が登場。甘いマスクに似合わぬ硬派な性格で、「俺に質問するな」という口癖のとおり他者との関わりを意識的に拒絶する傾向にある。謎の女シュラウド(声:幸田直子)からアクセルドライバーを与えられ「仮面ライダーアクセル」に変身するが、当初の彼の目的は父、母、妹の命を奪った者への復讐にあった。
「W」のイニシャルを備えたガイアメモリを持つ者、という情報のみを手がかりとして、時には翔太郎とも対立しながら独自の進む道を歩んでいた。やがて、ガイアメモリに憑りつかれた冷酷な医師・井坂深紅郎(演:檀臣幸)が憎き仇のウェザー・ドーパントであることが判明する。復讐心を乗り越え、人々を守る使命を再確認した照井は鳴海探偵事務所にもひんぱんに出入りし、翔太郎やフィリップ、亜樹子とも気さくに話す間柄となっていった。
2010年8月7日には、『W』単独の映画『劇場版 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』が公開された。ここでは、死から甦った者たちによる特殊部隊「NEVER」のリーダー・大道克己(演:松岡充)が次世代のメモリであるT2ガイアメモリとロストドライバーを使って「仮面ライダーエターナル」へと変身。最強の敵として、Wとアクセルを窮地に陥れた。
また、変身不能になった翔太郎がロストドライバーで全身真っ黒の「仮面ライダージョーカー」に変身するイレギュラー展開も、ファンの興奮を呼んだ。さらには、テレビ放送に先がけて後番組の『仮面ライダーオーズ/000』(2010年)より、仮面ライダーオーズ/火野映司(演:渡部秀)がいきなり登場し、「仮面ライダーは助け合いでしょ」と言いながらWに代わってルナ・ドーパントを粉砕するという、サプライズ演出も大いに話題を集めた。
対照的な2人の探偵が、息の合ったコンビネーションで難事件を解決していくストーリーの面白さと、フィリップの正体や園咲家=ミュージアムをめぐるミステリアスな要素、さらには風都という街に現実味を持たせるための凝りに凝ったディテール作り(風都マスコットキャラクター"ふうとくん"や、名物屋台ラーメン店"風麺"など)や、街で暮らす愛すべき多くのキャラクターたち……といった多くの魅力により、『仮面ライダーW』は熱烈なるファンを獲得した。
放送から9年もの歳月が流れた現在も、風都ではあの2人の探偵が難事件の依頼を受けているのではないか、と夢想するファンは数多い。漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)誌上にて、2017年より連載中の『風都探偵』(脚本:三条陸、作画:佐藤まさき)は、そんな『仮面ライダーW』のファンに向けた正攻法の「続編」コミックとして、高い人気を誇っている。
平成仮面ライダーシリーズに"新風"を吹き込んだ『仮面ライダーW』の後を受け、「個性的なキャラクター」「痛快なアクション」「観る者に夢と希望を与えるストーリー」といった3つの要素を打ち出した意欲作『仮面ライダーオーズ/000』(2010年)が作られる。次回はこの『オーズ/000』の魅力について、解説を試みたい。
映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』は12月22日(土)より公開される。
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