もちろん、カラリオの売れ筋モデルと比べ、不満に感じる部分もありました。

1つがデジカメプリントの画質です。写真用紙を使っても全体に色が浅めの表現となり、印画紙を用いるお店プリントと比べると明確な差が出ました。EW-M630Tは4色インクですが、デジカメプリント時は顔料ブラックを除く3色でプリントするため、色が浅めになったわけです。もちろん、必要十分な画質といえますが、デジカメプリントを重視する人には不向きといえます。

  • 写真用紙へのデジカメプリントは、全体に色が浅めとなった。カラリオのデジカメプリントの画質を見慣れた目には物足りなさを感じる

ちなみに、ブラックインクは顔料タイプとなるため(3色のカラーインクは染料タイプ)、文字が中心の文書の印刷はにじみもなく不満のないクオリティでした。インクジェットはがきへの年賀状印刷も、文字中心の宛名面と写真やイラストを用いる通信面のどちらも満足できる仕上がりになりました。

もう1つ気になったのが印刷時の騒音。特に、底面カセットから用紙を給紙する際は甲高い音が盛大に響き渡り、深夜は使うのがためらわれます。

  • プリント開始とともに排紙トレーが電動でせり出してくるカラリオとは異なり、手動で引き出す必要がある

  • 排紙トレーを引き出さなくてもプリントアウトはできるので、そのままでも問題はない

コストに対するストレスを感じずに済むのが魅力

EW-M630Tの実売価格は税込み40,000円前後で、税込み26,000円前後で購入できるカラリオの最新モデル「EP-881A」と比べると14,000円ほど高価です。しかし、EP-881A用のインクカートリッジ6色パック(増量タイプ)は税込み7,300円前後するため、これを2パック購入すれば価格差はほぼなくなります。印刷可能な枚数はEW-M630Tのほうが圧倒的に多いため、デジカメ写真以外をどんどんプリントしたい人ならEW-M630Tを選ぶ価値があります。

先に述べたとおり、EW-M630Tはインク代を気にせずプリントできることで、従来のプリンターにはない利便性が得られるのが魅力です。月間の通信量が1GBしかなくチビチビとしか使えないスマホから、数十GBの契約で通信量を気にせずガンガン使えるスマホに乗り換えたのと同じような感覚といえます。大容量インクタンクを搭載しながら、家庭にも置ける洗練されたデザインに仕上げたのも評価できます。

インクジェットプリンター最大の欠点であるコストに対するストレスをほぼ解消したことで、いったんはプリンターを手放した人も“出戻り”を検討する価値のある製品だと感じました。