iPad ProはApple Pencilを組み合わせて、iPadの新しい活用、特にクリエイティブ方面への活路を見いだすことができた。3年経った現在も、Apple Pencilは多くのクリエイターが評価し、さまざまなクリエイティブアプリも対応を進めてきた。
2017年のiPad Proでは、ProMotionと呼ばれる新しいディスプレイ技術によって、それまでの倍となる120Hzのリフレッシュレートを獲得し、可変レートによって省電力性も両立した。これによって、Apple Pencil自体の性能は同じでも、より早い追随性を実現した。昨年聞いた話では、Apple Pencilは240Hzで入力しており、まだ追随性の向上の余地がある、ということだ。
2018年モデルのApple Pencilだが、これを受け止めるiPad Proのディスプレイに技術的な変更はない。強いて挙げれば、ディスプレイはよりフチが狭いLiquid Retinaが採用されたが、機能面・性能面は維持されている。
Apple Pencilはこれまで、ペン先とは逆側にLightningコネクタが用意され、これをキャップで隠して使用するスタイルだった。完全に丸い軸できれいな形ではあったが、クリップなどはなく、iPad Pro本体にも収納の方法は用意されていなかった。
新しいApple Pencilには平らな面が用意され、充電と収納という2つの問題解決に取り組んでいる。iPad Pro本体の右側面、Smart Keyboard Folioを装着した場合は上辺にあたる位置にApple Pencil専用の磁石が2つ用意されており、位置を正確に合わせてピタッと固定できる。
同時に、この位置の中央部分はワイヤレス充電用の電極が装備され、アルミの側面が楕円形に切り取られている。ここにApple Pencilが当たる形で、ペアリングや充電ができるようになった。
今まで、Apple PencilとiPadを別々に収納して持ち運んでいたため、いざ使いたいときに電池がない、という場面が何度もあった。新しい収納方法は充電も兼ねるため、使いたいときにバッテリー満タンの状態で利用できる。
細い軸にぎっしり技術を詰め込んだ
Apple Pencil 2にはもう1つ、新たな機能が備わっている。ちょうど鉛筆を握るあたりの位置に、1周にわたってぐるりとタッチセンサーが入っており、握りながらダブルタップすることでツールを切り替えることができるようになった。
iOSの設定には、新たにApple Pencilの項目が加わり、ここで充電の状況を確認できるだけでなく、ダブルタップの際の挙動を変更できる。標準ではペンと消しゴムの切り替えだが、それ以外には1つ前のツールとの入れ替え、カラーパレットの表示、切り替え無効化が選べる。
Apple Pencilにはこれまでと同様、筆圧と傾きを感知するセンサー、バッテリー、Bluetooth通信のためのモジュールが備わっていた。これらに加えてさらに、本体とくっつけるための磁石、ワイヤレス充電用モジュール、そしてグリップ部分のタッチセンサーが入ったことになる。
Appleはこの新しいペンシルを「瓶の中の船」と表現する。細い口から瓶の中の船を精巧に組み立てるように、細い鉛筆と同じサイズの軸の中にこれだけのパーツを配置しているからだ。
ただし、注意が必要な点もある。新しいApple Pencilは、これまでのiPad Proで使用することができない。その理由は簡単で、Lightningポートがなくなったため、ワイヤレス通信機能が備わっていない古いiPadとペアリングできないからだ。
一方、同じ理由で、これまでのApple Pencilを新iPad Proで使うこともできない。そもそもLightningポートが用意されておらず、Apple Pencilをペアリングしたり充電する手段がないためだ。
久々に面白いハードウェアの進化が感じられた
iPad Pro本体は、非常にシンプルな、造形がほとんどない「板」になった。その一方で、Smart Keyboard FolioやApple Pencilにはより工夫を凝らした進化が見られた。
Appleは、iPad Proをコンピュータと位置づけ、Windows PCと競合させようとしている。
そのWindowsのモバイルPCは、タッチスクリーンを備えたモデル、キーボード部分を360度回転させてタブレットスタイルを実現するデザイン、キーボードとディスプレイを分離できるデタッチャブルなど、その形態の進化はここ数年で著しく進んだ。それを主導してきたのは、Windowsを開発するMicrosoftのSurfaceシリーズだったといってよい。
こうした多様な市場に対して、AppleはタブレットのiPadとノートパソコンのMacBookシリーズで対峙しているが、iPadをコンピュータと定義しなければ、Windowsが叶えるニーズを奪い取ることができない。
もちろん、Smart Keyboard FolioはAppleが考えるiPadのキーボードの最高の形かもしれない。しかし、サードパーティーからさまざまなアクセサリが出てくることによって、シンプルすぎるiPad Proを補完することになるはずだ。
サードパーティーによる製品の発展は、これまでのApple製品が実現してきた進化の方法であり、現在アプリで顕著になっている。ハードウェア的な補完が今後進むかどうかは、新しいiPad Proがどれだけ市場で受け入れられるかにもかかっている。