Appleが11月7日に発売したiPad Proは、ハイエンドノートパソコンに匹敵するパフォーマンスを備えるとともに、アクセサリの改善が施されており、非常に見どころの多いモデルへと進化している。今回はここに着目し、新しい使い勝手やハードウェア的な工夫について触れていこう。
新しいiPad Proは、登場以来3年間保ってきた基本的なデザインを刷新。角が落とされ、側面が垂直に立った厚さ5.9mmの板になった。カメラの突起こそ残されているが、前面からはiPadを象徴するホームボタンがなくなり、背面はアンテナラインと「Apple」ロゴ、「iPad」の文字、そのすぐ下に配置された3つの端子を持つSmart Connectorのみとなった。
後述する新しい「Smart Keyboard Folio」は、これまでのSmart Keyboardとは異なる装着方法となったため、キーボードを動作させるためのコネクタの位置が変更された。場所については「デザイン要素」として、均整の取れた配置を意識したそうだ。
ハードウェアに磁石を仕込むアイディアの集大成
Appleはこれまでも、磁石を用いた仕組みをiPadに提供してきた。例えば、液晶カバーを閉じると画面が消え、開くと点灯する純正カバーの仕組みも、本体とカバーに埋め込まれた磁石によって実現してきた。
このアイディアはiPhoneにも採用されている。iPhone X以降の機種で提供する純正のレザーフォリオケースは、やはりフリップを閉じると画面が消灯する使い勝手を実現した。フリップ側にはカードホルダーも用意されているが、この場所以外にカードを入れないようにという注意書きも添えられている。磁力によって磁気カードに障害が起きる可能性があるからだ。
iPhone X用のレザーフォリオケースをiPhone XSに試してみたが、装着しようとすると、カメラ部分のサイズ変更によってうまくフィットしない。それだけでなく、磁石の位置も変更されており、フリップによる画面の消灯や点灯は効かなくなっていた。磁石の位置は必ずしも規格化しているわけではなく、デバイスや対応するアクセサリごとに変更されているとみられる。
2018年モデルのiPad Proは、「ハードウェアに磁石を仕込むアイディアの集大成」ともいえる。iPad Proの背面には102個もの磁石が備わっているのだ。大きな磁石を配置するのではなく、小さな磁石を配置して均等な力で背面とカバーを装着するだけでなく、iPad Proとカバーの位置合わせを正確に行う役割も担っている。
多くの不満を解消したSmart Keyboard Folio
新しく「Folio」という名前が与えられたキーボードカバー。その理由は、iPad Proの背面までカバーし、包み込む形状に進化したからだ。これまでのSmart Keyboardは左側面だけで磁石によって固定されるスタイルだった。
1年間ほぼ毎日持ち歩いた筆者の10.5インチiPad Proを見ると、側面や背面が傷だらけになっていることが分かる。割とていねいに扱ってきたつもりだったが、膝の上でタイピングしている時に、不意な体勢の変化で本体とケースが空中分解するような形で落っこちる、ということもあった。
長くiPad Pro 10.5インチモデルを使ってきた筆者にとって、Smart Keyboardはキーボードと本体をくっつけておく磁力が弱すぎた、というのが個人的な結論だ。Smart Keyboard Folioは、この点をしっかり改善している。
側面ではなく背面全体でキーボードと本体を磁力で固定する方式になったため、ホールド感が増している。また、キーボードを使うために本体を立てると、側面とSmart Keyboard Folioの溝でも磁力で固定されるようになった。これによって、膝の上で使っても安定感が増した。
膝の上で使うラップトップでの快適さを感じた理由はそれだけではない。Smart Keyboard Folioは2つのポジションを持っており、ラップトップ用にはiPad Proがより寝たポジションが用意された。もう一つはデスクトップ用で、画面がより立ったポジションで利用できる。
しかし、進化ばかりではない。これまでのSmart Keyboardは、折りたたむことでスタンドとして利用することもできた。その際は、フットプリントをキーボードの半分以下の面積に抑えながら、iPad Proを安定させられた。
Smart Keyboard Folioでは、構造上、キーボードを開かなければ立たせることができない。キーボード部分の1.5倍、つまりiPad Proのサイズ分のフットプリントが必要になる、ということだ。
よりコンパクトに立たせたい場合や、デスクで異なるキーボードを利用したい場合は、別途スタンドなどを利用するのがよいだろう。