スマートフォンの夜景撮影機能もさまざまですが、例えば夜景に強いと言われるファーウェイの「P20 Pro」(P20シリーズ)では、連写した画像を合成することでノイズを低減、手ブレを防ぐ仕組みが取り入れられています。EXIFデータを見てもシャッタースピードが4秒などとなるのですが、通常の長時間露光とは異なり、実際に4秒間も露光しているわけではありません。
これに対してPixel 3の夜景モードは、連写はしても、画像を合成しているかははっきりしません。シャッターボタンを押すとしばらく露光をしているような時間がありますが、実際は露光しているのではなく、連写をしているのは間違いないでしょう。しかし合成についてはGoogle自身は明言しておらず、動作的にも連写合成っぽくない動きをしています。
強い手ブレのときにシャッターボタンを押すとそれを検知し「動かさないよう」という指示が出て、一定以下の手ブレになると撮影が行われるようです。シャッタースピードは大幅に遅くなり、ISO感度もかなり高くなるので、暗所でも明るく写りますが、そのぶん画像も荒れます。
暗所での夜景モード撮影は1/2秒というスピードになりました。Pixel 3の夜景モードは、この遅さで手ブレしないあたりに秘密がありそうです。
考えられるのは、連写だけしてAIが手ブレしていないカットを選んでいる可能性、もしくは、連写と”手ブレを消すための合成”が行われている可能性です。
後者であれば、シャッタースピードはなるべく遅めに、ISO感度はなるべく低めにして、夜景を明るく撮れるけど手ブレはしやすいシャッタースピードで連写。手ブレしている画像と手ブレしていない画像を比較し、手ブレしていない部分を合成することで、手ブレ部分を消去するような合成をしているのではないか、とも思えました。シャッタースピードが遅い方が撮影時間が長くなるのは、このあたりの処理がより難しくなるからかもしれません。
ファーウェイの「P20 Pro」は、露出を変えて連写し画像を明るくしつつ、ノイズのない画像と合成することで、ノイズを低減した夜景写真を撮影できます。これ対し、Pixel 3の連写(もしかすると合成も)は、ノイズ低減をしているにしては効果が薄いのと、撮影時の動きから、手ブレを消す目的に特化しているという印象でした。
いずれにしろ、Pixel 3の夜景モードは手軽に美しい夜景写真が撮影できる機能に仕上がっています。
夜景モードはインカメラでも使える
さらに、この夜景モードはメインカメラだけでなくインカメラでも使えるのが強みです。インカメラでは超広角撮影ができるので、夜景をバックにセルフィーを撮るなど、景色と自分の両方を撮影する場合に便利です。
Pixel 3のカメラは、いわゆる「Computational photography」と呼ばれるものです。日本語訳は難しいですが、「デジタル処理による写真」を指します。単なる現像のような処理ではなく、さまざまな撮影情報とコンピュータ技術をベースに、「写真をデジタルで作り上げる技術」と呼び変えてもいいでしょう。
モノクロ写真をカラーに色づけするAI技術もその一環といってもいいでしょう。実際、Pixel 3の暗所撮影では、暗闇から色を再現するためにそうした機械学習の成果を反映しているようです。
その結果、ボケ、ズーム、夜景撮影、ベストショット検出など、さまざまな技術が実現されているのがPixel 3です。その基本的な画質以上に、ソフトウェアとAIを駆使して、カメラの可能性を一段引き上げようとしていると言えます。
今後、さらなるソフトウェアとAIの力を追加した新機能が追加されることを期待したくなる製品です。