今秋登場したニコンの「Z 7」は、同社では初となるフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラです。同じジャンルで先行しているライバル機のソニー「α7R III」と比べて何がどう違うのか。外観、手ブレ補正、連写、細部表現力、高感度画質などを中心に比較してみました。

  • 左がニコン「Z 7」、右がソニー「α7R III」。ボディ単体モデルの実売価格は、Z 7が43万円前後、α7R IIIが34万円前後(いずれも税込み)

ボディを比較する

まずは2台の基本スペックを確認しつつ、外観をチェックしていきましょう。

Z 7は、撮像素子に有効4,575万画素の裏面照射型CMOSセンサーを、画像処理エンジンに「EXPEED 6」を搭載。記録メディアはXQDカードのシングルスロット。外形寸法は幅134×高さ100.5×奥行き67.5mm。バッテリーとカードを含めた重量は約675gとなっています。

  • ニコンZ 7に標準ズーム「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」(実売価格は税込13万円前後)を装着。この状態での使用時重量は1,175g

一方のソニーα7R IIIは、撮像素子に有効4,240万画素の裏面照射型CMOSセンサーを、画像処理エンジンに「BIONZ X」を搭載。記録メディアはSDメモリーカードなどのダブルスロット。外形寸法は幅126.9×高さ95.6×奥行き62.7mm。バッテリーとカードを含めた重量は約657gとなっています。

  • ソニーα7R IIIに標準ズーム「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」(実売価格は税込11万円前後)を装着。この状態での使用時重量は1,083g

  • Z 7(左)はニコンZマウント(内径55mm、フランジバック16mm)を採用。α7R III(右)はソニーEマウント(内径46mm、フランジバック18mm)を採用

  • ズームのワイド端の状態。Z 7(左)は天面に表示パネルを備え、各種の設定値が素早く分かります。α7R III(右)は天面右端に露出補正ダイヤルを備え、補正値が一目で分かります

  • ズームのテレ端の状態。外装はどちらもマグネシウム合金製で、防塵防滴に対応しています

  • 背面液晶は、Z 7(左)が3.2型TFT(約210万ドット)で、α7R III(右)が3型TFT(約144万ドット)。どちらもチルト可動式で、タッチパネルにも対応しています

  • EVFは、両機とも約369万ドットの0.5型有機ELを採用。ファインダー倍率は、Z 7(左)が0.8倍で、α7R III(右)が約0.78倍。実際に比較すると、見やすさはZ 7が一段上だと感じます

両モデルとも金属製の高品位なボディであり、しっかりとした剛性を感じます。サイズと重量は、α7R IIIのほうがやや小さくて軽め。わずかな差とはいえ、携帯性ではα7R IIIが勝ります。

撮影時のホールド感は、大きなグリップを備え、手にしっくりとなじむZ 7のほうが持ちやすく感じました。α7R IIIは、ボディの高さが低い分だけグリップの丈が短く、筆者のような手の大きなユーザーの場合、小指が余ってしまいます。

各種の仕様に関しては、記録メディアの違いが大きいといえます。α7R IIIがSDメモリーカードのダブルスロットであるのに対し、Z 7はXQDカードのシングルスロット。バックアップがしやすい安心感や、記録メディアの普及率という点ではα7R IIIが有利になります。

バッテリーフル状態での撮影可能枚数にも差があります。Z 7はEVF使用で約330枚、液晶モニター使用で約400枚。α7R IIIは、EVF使用で約530枚、液晶モニター使用で約650枚。両モデルともUSB充電に対応していますが、α7R IIIは充電に加えてUSB給電ができる点が便利です。

手ブレ補正を比較する

手ブレ補正は、両機ともイメージセンサーシフト式の5軸手ブレ補正を内蔵しています。それぞれどのくらいの効果があるのか、シャッター速度を変更しながらテストしてみました。

テスト方法は、標準ズームを装着して焦点距離を70mmにセットしたうえで、各シャッター速度ごとに手持ちで30枚を撮影。そして、PCのディスプレイ上で画像をチェックし、ブレのない写真の枚数を数えました。

結果は以下の通り。この撮影条件に関しては、Z 7のほうが手ブレに強いといえます。

Z 7
シャッター速度 ブレなしの枚数 成功率
1/15秒 30枚 100%
1/8秒 30枚 100%
1/4秒 14枚 47%
1/2秒 3枚 10%
α7R III
シャッター速度 ブレなしの枚数 成功率
1/15秒 30枚 100%
1/8秒 18枚 60%
1/4秒 10枚 33%
1/2秒 0枚 0%
  • 手ブレ補正の設定画面。左がZ 7で、右がα7R III

連写性能を比較する

続いて連続撮影性能をチェックするため、向かってくる電車を撮ってみました。

  • ドライブモードの設定画面。AF追従の場合、Z 7(左)は最大で約9コマ/秒(AE固定)、α7R III(右)は約10コマ/秒の連写ができます

撮影条件は、ドライブモードを高速連写に、AFをコンティニュアスAFに、シャッター速度を1/1000秒にそれぞれ設定。そして、電車が一定の区間を通過するまでの間シャッターボタンを押し続け、その間に撮影できた枚数を数えました。

結果は、両モデルともほぼすべてのカットで正確に合焦し、Z 7は15枚、α7R IIIは18枚の撮影ができました。連写ではα7R IIIが有利です。

  • Z 7で撮影。ドライブモードは高速連続撮影(拡張)を使用。この設定では、AFは追従し、AEは固定となります

  • α7R IIIで撮影。ドライブモードは連続撮影(Hi+)を使用。AF/AEともに追従します