ニート役3人の印象は

――撮影中の様子など、3人のどのような点が印象的でしたか?

安井くんがインタビューでどう答えているかはわからないですが、自信を持って撮影に入ってきてくれたという印象がありますし、現場では、具体的に確認しにくるということはありませんでした。

ただ、この作品だけじゃなく、僕は主演の人にあんまりオーダーをしないんです。事前のディスカッションで、主役のパーソナリティーやキャラクター、作品のなかでどこにたどり着かないといけないのかという、大きな地図は示すんですけど、あまり細かい事は言いません。今回も事前にキーワードだけ投げかけましたし、現場に入ってから細かい話はしませんでした。

――宮野監督の他のインタビュー記事も拝読したんですが、レンチについては気まぐれな「猫」というキーワードを出したというお話をされていましたね。

安井くんは「レンチは、猫だよ」と言われて、ポカンとした感じでした(笑)。主人公は、ダイナミックに演じてほしいんです。物語がどこにたどり着かなくてはいけないなのかということだけを理解してもらっていれば、どういうたどり方をしても良い。とにかく遠慮しないで突き抜けてほしいと思っていました。逆に他の演者さんには細かくオーダーしたし、森田くんはコミュニケーションを取りに来てくれたので、具体的な話をしました。

――3人にもお話を聞いたら、ごはんに行く時は監督から安井さんに連絡が行って、そこから連絡網みたいに回る……とおっしゃってたんです。それはやっぱり座長的な役割からですか?

たまたまかな(笑)。主役をやってもらったというところもありますし、そういう部分もあります。3人の中では、山本くんが一番ヤンチャな感じがします。でも、合うたびに印象が変化するところもあるんですよ。正統派な中に、男っぽい感じが見え隠れする、と言ったらいいのか。

森田くんは、撮影中ずっと不安そうでした。でも、森田くん本人としては、ある程度見えているからこそ、確認がしたかったのかもしれない、とも思うんです。安井くんはすごく大人で、気の配り方や空気の読み方が成熟している印象があります。現場でもとにかく気を配って、スタッフやキャストに声をかけて、という空気づくりを率先してされていました。

――取材していても、そんな印象を受けました。

そうですね。多分、自分が世間から何を求められているのか、すごく分かっているんじゃないかなと思います。だから、そこはどんどん裏切っていって欲しいです。良い意味で。

本人から出てきたものが表情に

――ライブ映像を観てキャスティングされたというお話でしたが、その時に思った印象は演技にも出ていたと思いましたか?

レンチという役に、反映されていたと思います。安井くん本人が持っている本質的な部分の裏側も、自然に出ていたのかな。

――それは作品から読み取るものだとも思うんですが、監督から見て、"裏側"というのはどういうポイントに表れていたと感じられたんでしょうか?

レンチという役柄は、表側に見せているレンチと、1人でいる時のレンチの間に、普段見せないなにかがあると思うんです。例えばレンチが他の人とやりとりをして、最後にどんな顔をするのか、といったところに、その「なにか」が出ていたんじゃないかなと思います。それは意識的に見せようというところではなく、安井くんから「出てきた」ものなのではないかと思いました。

――ちょっと話が変わりますが、原作を読んで、表題となっているダムド(the Damned)の「neat neat neat」という曲が流れるのかな? と思っていましたが、実際には使用されていませんでしたね。

もちろん使いたかったんですけど、ちょっと大人の事情が(笑)。だから、どうしよう……となって、「CALL」という曲を、安井くんと森田くんの2人バージョンで使わせていただきました。ファンの方にとっても、驚くところだし、喜んでいただけるんじゃないかなと思います。ぜひ、楽しみにしていただきたいです。

■宮野ケイジ
1965年1⽉3⽇⽣まれ、京都府出⾝。監督作品『CHIKANO LiveTour in Japan』(10)、『不良少年3000⼈の総番』(12)、『Moon☆Dream』(13)、『夢⼆〜愛のとばしり』(16)。最新作『殺る⼥』(18)が公開中。

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