始の正体が明かされるタイミング(第31話と第32話の間)となる2004年9月11日より公開された映画『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』では、テレビストーリーの進行とは異なる時間軸で「ありえたかもしれない『仮面ライダー剣』のもうひとつの"後日談"」が描かれることになった。
すべてのアンデッドが封印され、剣崎たちの戦いが完全に終わってから4年後、ふたたびアンデッドが解放され、バトルファイトが始まった。すでに変身することができない剣崎に代わって、仮面ライダーグレイブ/志村純一(演:黒田勇樹)、仮面ライダーラルク/三輪夏美(演:三津谷葉子)、仮面ライダーランス/禍木慎(演:杉浦太雄)という「新世代ライダー」が出現。しかし志村には、仲間も知らない恐ろしい秘密があった。ジョーカーの亜種であるアルビノジョーカーが、古代の巨大な邪神フォーティーンを復活させ、その生贄として天音(演:石田未来)が連れ去られた。天音を助けるため、ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルの4ライダーは再結集を果たし、巨大な敵へと立ち向かっていく。
クライマックスでメインの仮面ライダーがバイクに乗って疾走し、さらに彼らが力を合わせて戦うシチュエーションを持ってきたのは、平成仮面ライダーシリーズの劇場版では初めての試み。さながら『仮面ライダーV3対デストロン怪人』(1973年)や『五人ライダー対キングダーク』(1974年)をはじめとする初期の仮面ライダーシリーズにおける「ヒーロー共演」に近い高揚感を味わわせてくれる。
話をテレビシリーズのほうへ戻すと、第34話で剣崎はスペードの13枚のカードを融合させ、ブレイド キングフォームへの変身を実現したが、その強大な力はアンデッドの「ジョーカー」と同等であり、剣崎の肉体もまたジョーカーへと変化してしまう事実が発覚する。戦いを通じて心を通わせた始との友情によって強い精神力を取り戻した剣崎は、一時的にジョーカー化をまぬがれたものの、このままキングフォームの力を使い続ければ、いずれは完全にジョーカーとなってしまう運命である。
最終展開では、大量発生したダークローチによる人類の滅亡を防ぐため、そして始を人間の世界で幸せに暮らせるようにするため、剣崎が重要な"決断"を下している。あまり器用ではなく、すべての物事にガムシャラに取り組み、「人々を守る」という使命を果たすため命がけで戦い続けた剣崎の姿は、まさしく「等身大のヒーロー像」というべきもの。始と剣崎はお互い"永遠に会ってはならない"運命を受け入れるが、遠く離れていても心と心でつながっている。2人の「永遠の友情」を示唆するラストシーンは切ない余韻を残し、多くの視聴者の胸を打った。
4人の個性的な仮面ライダーたちが激しい戦いの中で悩み、苦しみながら精神的に成長し、さまざまな逆境を乗り越えていく姿を描いた『仮面ライダー剣』もまた、それまでの作品と同じように平成仮面ライダーシリーズの歴史に深くその名を刻み、いつまでもファンの心に残り続けていることだろう。そして次回は、平成仮面ライダーシリーズ屈指の異色作として名高い『仮面ライダー響鬼』(2005年)をご紹介してみたい。
映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』は2018年12月22日より公開される。
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