日本のドラマが、カンヌでワールドプレミア上映されることの意味も大きい。在京民放キー局の制作ドラマが、MIPCOMでのワールドプレミア開催されることは初めてのことだ。千葉も、このドラマに特別な思いを寄せている。
「20代最後に主演を務めさせてもらうこの作品に出会わせてくれたことに感謝しています。ドラマの舞台である原宿は僕自身がスカウトされ、今の活動につながった場所でもありますから、めちゃくちゃ縁を感じています。また、僕自身が“カワイイ”というイメージを持たれることもあり、主人公はそのトラウマを抱えている人物でもあるから、役に自分を投影できる。特別な作品です」
活躍の場を海外にも広げていく意向はあるのか。そんなことも尋ねてみると「日本にも型があり、世界にも型があります。やらせてもらえる機会があったら、興味があります。仕事だけでなく、海外を旅することにも興味を持っているので、世界の方とコミュニケーションをとることにも面白さを感じています」と、素直な気持ちを伝えてくれた。
デビュー作を見てくれた海外記者も
千葉は、ワールドプレミア上映前日にMIPCOM公式のレッドカーペットにも登場し、大きな声援を受けながら、注目を浴びた。レッドカーペットを歩く前に千葉は「派手な衣装なんですが、表現の仕方を大事にしている日本人のファッションを世界にも伝えることができたらいいなと思います。これまで培ってきたものを全て出したい」と話していた。
実際に歩いた直後に感想を求めると「僕の写真を何枚も手に持ってくれる方がいて。『サインをください!』と声をかけられて、10枚くらい書いたのですが、それがすごくうれしくてビックリしました。海外の男性記者の方は、僕のデビュー作の戦隊モノの作品を見てくれている人もいて、『外国にもファンはいるんですよ!!』と声をかけられて。歩く前は勇気を持つしかなく、外は小雨が降ってきましたが、今の気持ちは衣装のように青空でいっぱいです」と、笑顔を見せた。
続いて行われたワールドプレミア上映には、世界の業界関係者ら総勢300人の観客が集まった。舞台あいさつでは、流暢な英語で千葉が作品の魅力を語り、会場からは次々と千葉に質問が向けられ、それにひとつひとつ丁寧に答えていた。
舞台あいさつで、全て英語で答える経験そのものも初めてのことだったそうで、「今回のワールドプレミアに向けて2週間ほど集中して英語を勉強しましたが、後は気合でした」と、はにかみながらも、何よりドラマに対する海外勢の好反応を冷静に受け止め、うれしい様子だった。世界に向けて、カンヌでPR展開に臨んだ千葉。場所を選ばず、役割を全うする姿にドラマの役柄と重なるようなプロ根性が垣間見られた。
『プリティが多すぎる』は、中国の大手配信サイト「Mango TV」でも、日本と同日に配信スタートすることがカンヌで発表された。日本テレビの連続ドラマが中国本土で同時期配信されるのは初の試み。これにより同作は、日本を含めて、中国、韓国、台湾、カンボジア、香港、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイという世界10の国と地域で、同時期放送・配信されている。
制作からPR、展開まで、世界を狙うドラマは日本にも求められるものである。MIPCOMレポートの後編では、『おっさんずラブ』をはじめとする日本のドラマ各局がカンヌで挑んだ世界展開についてもお伝えする。
テレビ業界ジャーナリスト。2003年からテレビ、ラジオの放送業界誌記者。仏カンヌのテレビ見本市・MIP現地取材歴約10年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に多数媒体で執筆中。