Appleは10月30日に、米国ニューヨーク・ブルックリンにあるBrooklyn Academy of Musicの「Howard Gilman Opera House」でスペシャルイベントを開催した。
今回は、招待状のAppleロゴが人によって異なるデザインとされており、当日のパスや各所のAppleロゴにも独自のデザインが施されていた。クリエイティブをテーマに据えた今回のイベントは、ブルックリンという全米で最も創造的なエリアとされる場所を選んだことにも貫かれている。
そのクリエイティブを支える存在として登場したのがiPad Proだったが、Appleがまず披露したのはMacBook AirとMac miniだった。
Macの販売台数は、2018年第3四半期に400万台を下回り、それまで維持してきた堅調さを失っていた。根本的な問題として、販売台数の柱となるMacBook Airが長らく放置されていたことに原因があった。
今回、MacBook Airは第8世代のIntel Core i5プロセッサと128GBストレージを搭載したモデルに1199ドル(日本では13万4800円、税別)と意欲的な価格を付けながら、妥協しない仕様を実現した点で、再びMacBook Airを販売の柱へと押し上げる狙いが透ける。
待望のRetinaディスプレイ化
MacBook Airは、2008年に13.3インチの超薄型ノートPCとして登場し、2010年のモデルチェンジでさらに薄型化を進め、11インチモデルも投入した。その後は13インチモデルだけ残され、2018年まで同じデザインとフォームファクターを維持してきた、テクノロジー製品としては非常に珍しいほど息の長い製品となった。
MacBook ProやMacBookがRetinaディスプレイ化されるなか、MacBook Airは高精細ディスプレイが用意されず、プロセッサの刷新も毎年行われなくなり、「放っておかれている」「見捨てられている」という印象をユーザーに与えていた。
しかし、そうしたなかでも、ちょうどよい13インチというサイズ、低価格、持ち運びやすい薄型デザイン、1日持つバッテリー、そしてオールインワンで使いこなせる点から、販売台数においては最も人気のある製品であり続けた。
今回の刷新によって、Mac体験のスタンダードは現代的なモノへと大きく向上する。その象徴的な進化がディスプレイの高精細化だ。13.3インチのRetinaディスプレイを備え、解像度は2560×1600ピクセルへと向上した。ただし、高色域(P3)や環境光に応じていろ温度を変化させるTrueToneディスプレイは省かれ、MacBook Proと差別化されている。
iPhone 4以降に搭載されているRetinaディスプレイは、印刷のようなギザギザのない文字表示や、非常に細かい画像の表示などを実現する。長らくMacBook Airに慣れていた人が新モデルを見ると、世界ががらりと変わるような体験が待ち受けている。
サイズは目に見えてコンパクトに
Appleは、ベゼルを狭くする「オールスクリーン」デザインを、各種製品に採用している。2017年のiPhone Xで実現したベゼルレスのデザインは、2018年にiPhone XSやiPhone XS Maxに引き継がれ、液晶を採用したiPhone XRでもオールスクリーン化された。Liquid Retinaと名付けられた液晶を用いたオールスクリーンは、2018年モデルのiPad Proにも採用された。
オールスクリーンとまでは言わないが、MacBook Airはベゼルをこれまでよりも50%小さくした。画面サイズは13.3インチで同じだが、ベゼルが狭くなったおかげで、本体サイズは大幅に小さくなっている。
幅は2.09cm、奥行きは1.46cm小さくなった。この寸法は、MacBook Pro 13インチと同じフットプリントだ。厚みについては、MacBook Proが1.49cmで均一なのに対し、MacBook Airは手前に向かって刃のように薄くなっていくデザインを引き継いでおり、手前から奥へかけて0.41~1.56cmと変化する。
なお、重さは1.25kgと、これまでの13インチモデルより100g軽量化されており、MacBook Proと比較すると120g軽い。よりコンパクトになり、より軽くなったことで、MacBook Airからの乗り換えはもちろん、MacBookやMacBook Proからの乗り換えを検討している人にとっても魅力的な選択肢となりそうだ。
プロセッサの選択肢は少なく
現在のMacBook Airは、第8世代1.6GHzデュアルコアIntel Core i5プロセッサ搭載モデルのみを用意する。ターボブーストによって3.2GHzまで引き上げることはできるが、プロセッサの選択肢がない点は、MacBook Airの性格を反映したものだ。もしより高い性能を求めるのであれば、同じ13.3インチながらより高性能のRetinaディスプレイを備え、クアッドコアになったMacBook Proを選んでもらおうとしているのだ。
そこまでの処理性能はいらないが、あらゆる作業を快適にこなし、バッテリーは上位モデルよりも2時間長持ちし、価格が安いという特徴をより明確に打ち出しているのが、新型MacBook Airなのだ。
メモリについては標準で8GB、最大16GBまで増やせる。SSDは128GBもしくは256GBに加えて、512GBもしくは1.5TBを選択することができる。より長く使う前提でより大きなストレージを確保したい、というニーズにも応えている。