ここからは、幹事に必要な能力をそれぞれ掘り下げ、幹事を任された側が実際に何をすべきかを紹介していこう。

必要な能力その1:「企画力」

上司から幹事役を任されたら、まずはラフな計画を考え、方向性を確認する。この「ラフな計画」で、すでにその会が成功するか失敗に終わるかの8割が決まると言っても過言ではないという。

「このラフな計画を組み立てる能力が、イコール企画力です。企画力は、達成すべきことをぶれずに見つめ続ける目標管理能力と、それをいかに面白く実現していくかというアイデア力によって成り立っています。そして、飲み会における企画とは、飲み会当日の“演出”のことを指します。誰にどうスポットを当てるのか、出席者にどうやって満足してもらうか。まずは何のためにその企画を行うのかを定めましょう」

  • 企画作成前にチェックしておきたいポイントを挙げ、全体のイメージを整理しよう

    企画作成前にチェックしておきたいポイントを挙げ、全体のイメージを整理しよう

必要な能力その2:「スケジュール管理能力」

企画が定まったら、次にスケジュールを組み立てていく。スケジュール管理でポイントとなるのは、「開催日の決定」「準備の予定」「当日の進行スケジュール」の3点。

「スケジュール管理においては、遅れが発生した際の対応も非常に重要になってきます。これらは仕事におけるプロジェクト進行と似ており、『いつまでに何をするべきか』という短・中期的なスケジュール管理能力が問われる部分です」

  • おおまかな幹事の仕事の流れはこんな具合。50名以上など規模が大きい場合は、遅くとも本番1カ月半前には動き出しておきたいところ

    おおまかな幹事の仕事の流れはこんな具合。50名以上など規模が大きい場合は、遅くとも本番1カ月半前には動き出しておきたいところ

必要な能力その3:「リーダーシップ」

上記のような流れで「いつまでに何をするべきか」を洗い出したら、それぞれの仕事をプロジェクトメンバーに割り振る段階に入る。ざっと考えられるものだけでも、「案内状やポスターの制作」「参加者の募集」「会場側との打ち合わせや交渉」「金銭の管理」「当日の受付・クローク・案内」「来賓の招待」「司会進行」「照明や音響の担当」などなど、分担する業務は盛りだくさん。

「ここで、いかに適材適所に割り振りを行えるかがリーダーシップの見せ所。お客様に関わらないとは言ったものの、社外からの来賓を招く場合は、その宴会やパーティーの評価が会社の評価へダイレクトにつながってくると考えることもできます」

  • メンバーにはしっかりと感謝の意を表すこと。企画を成功させて、終わった後にメンバーたちと打ち上げをするところまでがプロジェクトの醍醐味とも言える

    メンバーにはしっかりと感謝の意を表すこと。企画を成功させて、終わった後にメンバーたちと打ち上げをするところまでがプロジェクトの醍醐味とも言える

「また、前提として、一緒に計画を進める仲間から信頼を得ていなければ全体の統率はとれません。逆に言えば、幹事としてその会をうまく運営することができれば、『あいつは同僚からも信頼されていてリーダー力もあるんだな』という評価を勝ち取れるかもしれません。もちろん、リーダータイプではない人においても、リーダーを誰にするかの判断やリーダーのサポートなど、重要な役割はたくさんあります。こういったところもデキる上司はしっかりと見ているでしょう」

必要な能力その4:「予算管理能力」

ビジネスで最も肝心な要素と言っても過言ではないのが“金銭面”。お金をかけさえすればある程度なんとかなってしまうのは、幹事も同じこと。場合によっては「君に幹事を任せるから、予算はあんまりないけどいい感じにやってくれ」という要望を投げられることもあるだろう。限られた予算の中でいかに良いパフォーマンスを発揮するか。ここもスキルが必要な部分だ。

そして、宴会やパーティーの成功を大きく左右するのが会場選び。座敷で和食がいいのか、立食のバイキング形式で洋食がいいのか、はたまた、円卓で中華料理を囲むのがいいのか。会そのものの目的や、参加者の人数・顔ぶれなどを考慮したうえで、大枠を最初に決めなければいけない。

  • 誰をどの席に案内するか、自分はどこにいれば全体を見やすいかなど、当日の動きを思い描きながら会場探しをしよう

    誰をどの席に案内するか、自分はどこにいれば全体を見やすいかなど、当日の動きを思い描きながら会場探しをしよう

「会場選びは、宴会・パーティーの収支に大きく関わってくる要素です。会費制で開催する場合がほとんどでしょうから、参加者がある程度納得のいく金額設定ができるような場所を選ばないと参加人数にも影響が出てきかねません。女性が多い、お酒好きが多い、お子様連れがいるなど、参加者の特徴によってベストな店も異なるでしょう」

会場を選ぶ際にも、やはりまずは会の目的を固めることが重要だ。大規模な記念式典なのか、くだけた雰囲気の送別会なのか、社内の簡単なパーティーなのか。それによって、ホテル・レストラン・居酒屋・自社の食堂といった具合に会場の規模や格式も見えてくる。その後、業者に料理を手配する必要があるかどうかを判断→会場費や飲食費の合計金額から1人あたりの予算の目安を考える→いつから予約が必要かを問い合わせる、という流れが一般的だろう。

  • 会の当日は参加者よりも早めに会場へ入り、事前に確認を済ませておこう。入り時間についても、前もって会場側へ相談しておくことを忘れずに

    会の当日は参加者よりも早めに会場へ入り、事前に確認を済ませておこう。入り時間についても、前もって会場側へ相談しておくことを忘れずに

「お店の人との交渉も幹事の重要な仕事です。きちんと担当者に挨拶をしておくのはもちろんのこと、会の目的や主役、予算などについてもできるだけ詳細に伝えましょう。また、お店側のことも考えて、お互いにメリットがあるように交渉するのも忘れてはいけないポイント。『またこちらを利用させていただきます』という姿勢を表に出すだけで、印象は大きく変わります」

料理は当然のことながら、飲み物も会の雰囲気を決める大切な要素となる。料理と違い、飲み物は当日の様子を見て追加注文が可能だという場合も多い。それだけに、予算が変動する部分にもなりえるというわけだ。ここに関しては、多少の余裕を持って予算立てしてもいいかもしれない。

  • 収支の実績は明確にし、精算報告書を提出する必要がある場合は可能な限りスピーディに処理すべし

    収支の実績は明確にし、精算報告書を提出する必要がある場合は可能な限りスピーディに処理すべし

「コストを削減できる方法もいくつか考えられます。例えば、『料理の発注を実際の参加人数よりも少なめにさせてもらう』、『食べ物の一部持ち込みを許可してもらう』、『お店にとって予約が入りにくい日程や時間帯を選ぶ』、『ゲームやイベントなどの時間を多めに設定し、飲食の時間を減らす』、『記念品や装飾などを関係会社に依頼し、協賛を募る』など、意外と攻められる余地はあるはずです。対外的な交渉力が必要なものもありますので、冒険しすぎない程度に節約を狙いましょう」

必要な能力その5:「危機管理能力」

宴会やパーティーにはトラブルがつきもの。お酒が入るとなると、なおさらトラブル発生の可能性は上がるだろう。さまざまな事態を想定してトラブルを未然に防ぐのが理想的だが、起こってしまったことにどう対処するかも幹事にとっては大きな試練であり、なおかつ腕の見せ所でもある。

「準備段階から当日まで、トラブルは考えだしたらキリがありません。『当日、会場に行ってみたら予約できていなかった』、『参加人数が予想を大きく下回った』、『会場側に迷惑をかけてしまった』、『予算をオーバーしてしまった』など、準備を進めながらメンバー同士でさまざまなケースをイメージし、それぞれの対策をあらかじめ話し合っておきましょう。先輩から過去の事例を聞いておくのもいいですね」

  • 当日は、自分の目が届かないところにもトラブルに素早く対応してくれる人員を配置しておこう

    当日は、自分の目が届かないところでもトラブルに素早く対応してくれる人員を配置しておこう

桜井さんからの話を伺い、1年目のM君もやる気を出してくれた模様。
「幹事を任された→俺は期待されている→成功させれば上司からの評価もアップ→気になるあのコにもアピールできるっしょこれ」という思考を巡らせているかのような目つきが気にはなったが、これなら忘年会当日を安心して迎えられそうだ。

  • 幹事をスマートにこなすことは、モテるチャンスにもつながるかもしれない

    幹事をスマートにこなすことは、モテるチャンスにもつながるかもしれない

忘年会に限らず、新年会や各種歓送迎会など、それぞれの催しごとに欠かせない「幹事」というポジション。今回は、その役割を全うするために必要な能力を伺ったが、結局のところは参加者全員がその場を楽しめるようにするための「気配り」や「思いやり」が求められているのだということが認識できた。そして、イベントや宴会などは、その部分が浮き彫りになりやすいシーンであることも改めて実感。幹事本人に限らず、サポートするメンバーや、幹事を決定する上司側、さらに言えば招かれた側全員も「気配り」や「思いやり」を忘れることなく、皆でプロジェクトを成功に導こう。