現在好評放送中の特撮テレビドラマ『仮面ライダージオウ』(2018年)は、平成仮面ライダーシリーズ20作目を記念し、2000年の『仮面ライダークウガ』から2017年の『仮面ライダービルド』までの"時代"をめぐる仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ(演:奥野壮)の物語が描かれる。

9月2日より放送を開始した『仮面ライダージオウ』は、10月28日で第9話の放送を迎える。9月30日放送の第5話、そして10月7日放送の第6話では、『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)の主要人物である乾巧(演:半田健人)と草加雅人(演:村上幸平)が登場。ソウゴが乾巧から仮面ライダーファイズの力を宿した「ライドウォッチ」を受け取り、これを仮面ライダーゲイツ/明光院ゲイツ(演:押田岳)が「ファイズアーマー」として使用した。

来たる12月22日より公開される映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』に向け、平成仮面ライダーシリーズ19作品をふりかえる企画の第4回として、ここからは『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)の作品概要を紹介していこう。

『仮面ライダー555(ファイズ)』は、2003年1月26日から2004年1月18日まで、テレビ朝日系で全50話を放送した連続テレビドラマである。『仮面ライダークウガ』(2000年)、『仮面ライダーアギト』(2001年)、『仮面ライダー龍騎』(2002年)と3年続いた仮面ライダーシリーズは、いつしか「平成仮面ライダー」と呼ばれ、ヒーローと怪人との戦いに熱狂する子どもたちと、複雑なストーリー展開や魅力的なキャラクタードラマに注目する大人のファンたちから絶大な支持を集めるようになっていった。3作目の『仮面ライダー龍騎』が、複数の仮面ライダー同士が互いに争うという「ライダーバトル」をテーマにしており、仮面ライダーから「正義の戦士」という要素を"廃した"野心的な作品だったこともあって、続く4作目の『555』はどのような仮面ライダーのドラマが繰り広げられるのか、大いに期待が持たれた。

『555』では、すべての仮面ライダーの原点・第1作『仮面ライダー』(1971年)の設定を見つめ直し、「ヒーロー」と「怪人」の存在意義を"破壊"した上で"再構築"を試みるという、興味深いストーリーが指向された。これまでの『クウガ』『アギト』『龍騎』で「仮面ライダー」からの"脱却"を図った平成仮面ライダーシリーズが、こんどは「仮面ライダー」の"基本"に立ち返った作品作りを目指そうとしたことになる。

『仮面ライダー』で悪の秘密結社ショッカーと戦う仮面ライダー/本郷猛(演:藤岡弘、)は、ショッカーによって「バッタ」の能力を植え付けられた改造人間である。本郷は改造の途中で脱出することに成功し、襲い来るショッカーの改造人間=怪人たちから善良な人々の自由と平和を守るために戦うことを決意している。つまりヒーローである仮面ライダーは、ショッカーの科学力で生み出されたという意味では蜘蛛男、人間蝙蝠、サラセニア人間などのショッカー怪人と「同じ」存在であるといえる。

『555』では、一度死を迎えた人間が"覚醒"し進化した「オルフェノク」なる怪物が、人間を襲って命を奪う「倒すべき敵」として登場する。このオルフェノクと戦う「ヒーロー」として活躍するのが、ファイズギアを使って仮面ライダーファイズに変身する乾巧である。ドラマでは、オルフェノクと戦う巧と、仲間の園田真理(演:芳賀優里亜)、菊池啓太郎(演:溝呂木賢)の日常を描きながら、一方でオルフェノクとなった木場勇治(演:泉政行)、長田結花(演:我謝レイラニ/当時の芸名は加藤美佳)、海堂直也(演:唐橋充)の苦悩や葛藤を描いていく。

死から甦った勇治だが、それまでの温かく幸せだった環境からすべて拒絶されてしまっていた。ホースオルフェノクへ変身した勇治は、自分を裏切り、罵った者たちの命を激しい怒りにまかせて奪ってしまう。学校でも家庭でも居場所を得ることがなく、虐げられた末に命を失った結花は、クレインオルフェノクとなって甦った。人間らしく生きようと思っている結花だが、自分を苦しめ傷つけた人間たちへの怒りは深く、時として残酷な殺戮を行うこともある。スクィッドオルフェノクに襲われたことがきっかけでスネークオルフェノクに覚醒した海堂は、恩師の裏切りによって夢を絶たれた青年。ひねくれた性格でワルを装うが、情に厚く仲間思いの一面を備えている。

この3人のオルフェノクは、すでに人間でなくなった時点で、人間社会での"居場所"を喪失している者たちである。それでも彼らはあくまで自分は人間だと信じ、人間を襲って同族を増やそうとする他のオルフェノクとは一線を画す行動をとろうと、もがき続けている。人間とオルフェノクの間で苦悩する彼らは物語を引っ張るメインキャラクターとして、最終回まで活躍し続けることになる。そして、自らの「夢」のために努力を続ける真理と啓太郎、自分自身の夢は持たないが、2人の夢を"守る"ためにオルフェノクとの戦いの道を選ぶ巧たちの物語と密接に絡みあうことで、魅力的なドラマが生み出された。

ヒーローサイドと怪人サイドのストーリーを均等に描き、いわゆる「怪人」であるオルフェノクにも視聴者が感情移入することのできる濃密な個性を与えたこと、それが原点『仮面ライダー』を見つめ直しつつ、より"深み"を持たせた部分だといえるだろう。