TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』などで知られ、現在は”けもなれ”こと、『獣になれない私たち』(日本テレビ系 毎週水曜22:00〜)も話題となっている脚本家・野木亜紀子。社会問題に切り込みつつ、クスッと笑える場面も満載で、エンターテインメント性の高い脚本は、俳優や主題歌のヒットも合わせ、毎回社会現象を生み出している。
そんな野木がNHKに初めて書き下ろしたドラマ『フェイクニュース』(後編 総合 27日21:00~21:49)は、大手新聞社からネットメディアに出向した東雲樹(北川景子)が、インスタント食品への青虫混入事件に端を発するフェイクニュース騒動に立ち向かう姿を描く。「他人事とは思えない」「リアルすぎる」と話題になった同作に込めた思いとは。
ネットメディアとお金の問題
――この作品を書くために、野木さんがいろいろなメディアに取材をされたそうですが、取材をする前と後では何か見方はかわりましたか?
そんなには変わりませんでしたが、お金の問題は大きいなと思いました。ネットメディアと一口に言ってもいろいろあって、ちゃんとしているところもあれば、ドラマの中に出てきた「イーストポスト」寄りのところもあるなかで、「取材になかなか行けない」ということは共通してあるようでした。行けたとしても、都内とか交通費がそこまでかからないところまでで、出張扱いになるような場所にまでは行けないという。私はドキュメンタリーを作っていて、取材ありきで作ることしか考えられなかったので、そういう現状に驚いて。
――映像は、どうしても行かないと作れないけど、文字はなんとかなるというところも大きいかもしれないですよね。野木さんは、誤報ができる過程に興味を持ったというのがこのドラマを作るきっかけだったそうですが、そもそも、この題材に興味を持った直接の出来事があったんでしょうか。
2012年くらいだったんですけど、日本報道検証機構という団体があることを知って興味を知ったんです。そこに寄付したら、理事会で活動内容を知れるということで、私も寄付しました。そこからどんどん忙しくなっていって、結局、理事会にはいけなかったんですけど、今回のドラマが決まって、シンポジウムに参加したりしました。
――その機構のことって、どこで知ったんですか?
ネットです。新聞でもテレビでも報道されていなくて。そこでは、記事のファクトチェックをするという目的があって。
――新聞でもテレビでも報道されていないけれど、問題意識をもって、周辺も取材して形にするって、ドキュメンタリーを作るのとすごく似てますよね。ノンフィクションにするか、フィクションにするかという違いがあるだけで。今も、ドキュメンタリーは見られますか?
最近は、なかなか時間がなくて、見ようと思って録画しているものがものすごく溜まっている状態です。
――この『フェイクニュース』の話題を聞いたとき、BS1スペシャルの「“フェイクニュース”を阻止せよ~真実をめぐる攻防戦~」っていうドキュメンタリーを思い出しました。ドキュメンタリーからなにかヒントを得るということはありますか?
その番組も見ました。面白かったですね。フランスの新聞社内での緊迫したやりとりや、ファクトチェックの大変さがわかりました。やっぱり最近は、ドラマを作るということが決まってから、そのテーマに沿ったものを見るということが多くはなっているので、ヒントを得るとか、きっかけになるというよりは、資料として見ることが多いですね。
――今回はフェイクニュースが大きなテーマではあるけれど、外国人労働者、差別、ブラック労働、セクハラ、政治と、本当にいろんな今の話題が入っているのに、全部がうまくつながっていて。
それが仕事ですからね。このドラマでは「世の中の分断」を書こうと思ったんです。それで今、世の中を分けるものは何かと考えると、差別や男女などいろいろなことが考えられて。その中で、プロデューサーの北野拓さんが、今であればやはり外国人労働者の問題が大きいのではないかということで、取材をしてきてくれて、そこから私も興味をもって書いていきました。