人間ドキュメントが魅力
一方で、eスポーツを「スポーツ競技」と位置づけることに対し、日本ではまだアレルギー反応も大きい。この原因について、門澤氏は「歴史の浅さだと思います。まだ社会をコントロールしているのはゲームになじみが薄い世代ですが、間もなくファミコン世代が経営陣に入ってくることになるので、理解してもらえる時期はかならず来ると思っています」と自信。鈴木アナも「“スポーツは汗を流すもの”という間違った解釈がされているんです。世界では、チェスなどが“マインドスポーツ”として成立しているので、そこも含めてテレビが伝えていかなければならない部分だと思いますね」と使命感を語る。
何より、eスポーツの主役は、ゲームのキャラクターではなく、“プレイヤー=人”だ。『いいすぽ!』では、プレイヤーを内面も含めて取材し、見ている人が感情移入できるような番組作りを心がけているといい、鈴木アナも「eスポーツの実況で一番ポイントになるのは、プレイヤーの表情だったり、対戦相手との関係性だったりするんです」と、一種の人間ドキュメントを魅力の1つにあげる。
すなわち、今後スタープレイヤーを生むことが、日本におけるeスポーツの大きなテーマになると捉えており、門澤氏は「例えば野球だって、みんな高校野球から追っているので、選手が持っている“物語”に思いを馳せるんですよね。うちのアナウンサーは『この人は就職目前です!』とか『彼は今、婚約を申し込んでいます!』といったプレイヤーが背負っているものも含めて実況してくれるので、見てる人も盛り上がると思います」と魅力を分析した。
2020五輪期間中も「なにか仕掛けたい」
eスポーツの魅力について、鈴木アナは他にも「逆転に次ぐ逆転があるので、最後の最後まで何が起こるか分からないのがすごく面白いですし、スポーツゲームだとゲームの中の選手たち全員が最大限ポテンシャルを引き出した状態のゲーム展開が見られるんです。判定への抗議もないですから、こんなフェアなスポーツはないですよ(笑)」と解説。さらに、「普通の競技なら男女別で行われますが、ゲームだったら性別問わず同じフィールドで一緒に戦えるんです」とも強調する。
それを踏まえ、フジテレビでは今後も、さまざまな企業・団体と連携しながら、番組『いいすぽ!』を中心にイベントなどを展開予定。前述の『RIZIN』はもちろん、フジが中継するプロ野球のヤクルト戦など、リアルスポーツとのコラボレーションも期待できそうだ。さらに、2020東京五輪の競技会場が密集する臨海副都心に本社を置く地の利も生かし、大会開催期間中に「なにか仕掛けていきたいと思ってます」(門澤氏)と鼻息が荒い。
こうしたeスポーツ実況の他にも、フジテレビのアナウンサーは、今年の夏にライブイベント『a-nation』に出演してパフォーマンスを披露するなど、ここのところ新たな試みに積極的に挑んでいる印象だ。鈴木アナは「我々は何でも挑戦するという姿勢を持っているので、これからどんどんいろんなジャンルに進出していきたいですね。それによって、テレビ局としての可能性も広げられるのではないか思っています」と意欲を示している。