人気漫画『銀魂』を小栗旬主演で実写化し、現在大ヒット中の映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』。パラレルワールドの江戸を舞台に、宇宙からやってきた"天人(あまんと)"と侍・坂田銀時(小栗)の間に起こるさまざまな事件を描く。
8月15日の公開から興行収入は34億円を超える(34億3,406万2,500円)大ヒット街道を爆進中だ。前作から1年での続編というスピード感に加え、三浦春馬、窪田正孝、勝地涼、夏菜、堤真一、キムラ緑子といった新キャストも「ぴったりすぎる」と話題に。とかく荒れがちな「漫画原作の実写化」において良い反響を呼んだ役者陣、そして全員主役級でありながら小栗、菅田将暉、橋本環奈らが2年連続で出演できたのはなぜなのか、松橋真三プロデューサーに話を聞いた。
続編のスピード感の秘密は…「その場で盛り上がったから」
――まさか1年で続編が作れるとは、と驚いたんですが、どういった経緯だったんですか?
パート1の撮影1~2日目がカブト狩りのシーンだったのですが、万事屋と真選組の面々のやり取りが面白すぎて、これは大成功すると思いました。特に(中村)勘九郎さんなんて、気合いを入れて、ほぼ全裸にハチミツを塗りたくるという。こんな大物がこんなことまでしてくれる『銀魂』って、と感動しました。小栗さんたちも「この勘九郎さんだけで1,800円払う価値がある」と大興奮でした。
この興奮を大切に、もし当たってから『銀魂2』 を考えて役者陣のスケジュールを押さえようとすると、絶対2~3年は経ってしまう。だから、「いける」と信じて、パート1の撮影の最中に、パート2の撮影スケジュールをおさえるという暴挙に出ました(笑)。
――それはやっぱり、続編を出すタイミングが大事だと思ってたんですか?
というよりも、その場で盛り上がった結果ですね(笑)。
――今回、真選組動乱篇と将軍接待篇が選ばれたのはどういう理由だったんですか?
パート2は元々、ひたすら将軍と楽しく遊ぶギャグ映画を作ろうという話でした。ただ、パート1が公開され、笑いの分量とドラマの分量のバランスを多くの人に評価されたということもあり、やはり縦軸となるドラマが必要だという結論に至り、福田監督の大好きな「真選組動乱篇」となりました。さらに言えば、監督のTwitterに「動乱篇をやってほしい」という声がバンバン来るので、やはり中心に来るのはこのエピソードしかないと思いました。
ただ、「真選組動乱篇」も妖刀の話で、前作柵の「紅桜篇」と重なるところもあるので、設定は少し変えています。将軍が狙われていることをギャグを通して紹介しながら、一つの物語になっていくというアイディアは福田監督が出してくれました。
どうしても妖刀が原因ということと鴨太郎の野望が結びつかず、2時間の映画にするなら、そこには因果関係があった方が面白いので、素晴らしいアイディアだと思いました。
――やはり真選組人気は実感されているのでしょうか。
痛感しますよ。実写映画『銀魂』で大事なのは、ファンと一緒に作ること。福田監督とキャストとスタッフとお客様がある種一体となって、いろんな目をかいくぐって、面白く作ろうとする、という構図が受けていると思うので、ワーさんナーさんの要望は申し訳ないけど、聞いていない時もあります(笑)。
――アクションシーンも大変そうで……。
もう大変でした。『マッドマックス 怒りのデスロード』みたいなカーチェイスもあれば、3両セット組んだ列車もあります。さらにみなさん本当に芝居が素晴らしい。特に今回はやはり真選組、近藤・土方・沖田と、伊東鴨太郎の芝居はすごいです。そんな素晴らしいシーンを撮影している翌日に、キャバ嬢のシーンを撮影したりしていますから、情緒不安定な作品です(笑)。
伊東鴨太郎の候補は「三浦春馬」のみ
――ぜひ新キャストのキャスティングについて伺いたいです。今回もかなり豪華でしたし、どの方も素晴らしいという感想をたくさん見ました。
パート1でもスターを大量に出したので、プレッシャーはありました。でもパート1が面白かったことと、福田監督とお仕事したい役者さんもたくさんいるので、話はしやすかったです。みなさん興味があって"出たい、でも"という前提でした。ただ撮影が直近になるので、スケジュールが空いているかが勝負でした。
さらに鴨太郎はどうしてもやって欲しい人が三浦春馬さんしかいなかった。リストに「三浦春馬」しか書いてないんですよ。ダメだったらどうするんだ、という(笑)。台本が出来たのも去年の10月ですから、本当に直近で。ただ一応スケジュールだけは事前に聞いていて、たまたまドンピシャだったので、余計に「三浦さんしかいない」となりました。
――伊東役について、「三浦さんしかいない」と思われていた理由はどこにあったんですか?
やはりあの高貴な佇まいです。知的で高貴で、でも腹の中で何か考えていそうな、鴨太郎の魅力は絶対に春馬さんにあっていた。本人はすっごくピュアでいい人なんですけど、不思議とそういう感じが出るんですよね。福田監督は「春馬さんで行きたい」と最初から言ってました。みんなでワイワイやっている作品ですけど、作品の核になるのは鴨太郎なので、春馬さんに来てもらわないと、成立しませんでした。
――河上万斉役の窪田正孝さんもびっくりしました。
パート1のクライマックスで対決したのは堂本剛さんでした。彼に対抗できる大物はそうそうおらず、また、大柄な小栗さんよりも強く見えるマッチョな人もそうそういません。ならば、きらめく若手でヘビー級を相手に、ものすごくスピーディーな攻撃ができ、銀時を追い詰めることの出来る人ということで、窪田さんしかいませんでした。
窪田さんも短期間ですけど、ものすごくシャープに鍛えられて、体もバキバキです。三味線も背負って、ヘッドフォンもつけて大変なのに、「スピーディーな動きが大事なんです」と言ったら、「怖いなあ」と言いながら、素晴らしい動きでした。