新しいジャンルを切り拓けると思った
――あらためまして、この番組はどのように立ち上がったのですか?
『ENGEIグランドスラム』のプロデューサーをやってる吉本の森(俊和)さんに紹介してもらい、『しくじり先生』(テレビ朝日)などをやっていた放送作家の樅野(太紀)さんの「親の恋をストーリーにする」という企画をうまくまとめて番組化してほしいと言われて引き受けたんです。共同テレビに来て、ちょうどドラマチームがすぐ隣にいるので、一緒にやりませんかとお願いしました。せっかくなので、自分としても新しいジャンルを切り拓けると思ったんですよね。
――藪木さんといえば、『ENGEIグランドスラム』や『爆笑ヒットパレード』に代表されるように、ネタ・演芸番組のイメージが強いですが、共テレさんに来たのをきっかけに新しいことをやろうと思っていたんですか?
いやいや、ネタ番組的なのも含めて、とにかく放送局の方にノックしまくって、いろいろ提案してます。この3~4カ月は名刺を配っては企画の話をして…みたいな状況をずっと続けてきましたね。できあがった番組に途中から参加するのは得意じゃなくて、やっぱり自分の色が出せる場所をと思って踏ん張ってきたので、ようやく『オヤコイ』が形になって、一発目としては手応えもあって良かったです。
――収録には共テレの港浩一社長も来ていましたが、期待をかけられていますね。
ビックリしました(笑)。目にかけてくれるのはありがたいですね。「初めはどうなるか分かんなかったけど、まとまってきたなぁ」って言われて、「あざーす!」みたいな感じです(笑)
――『オヤコイ』の次には、NHKで『NHK杯 輝け!全日本大失敗選手権大会 ~みんながでるテレビ~』(10月17日22:25~)という単発番組も担当されますよね。
企画は僕と同じくフジテレビからの出向組の小松(純也)さんで、僕は演出を担当します。『みんながでるテレビ』というのは、どんな方も等しく出るという意味を込めたサブタイトルなんですが、“とっておきの失敗談を語る”というお皿の上に、“NHKを遊ぶ”というエッセンスを加え、一般視聴者の方に出ていただいてとにかく笑うだけの番組をやるというのが目標です。
――視聴者参加番組というのは、最近ほとんどないですよね。
NHKさんという土俵の上でないと成立しなかったかもしれないですね。でも、そこに僕らが入った意味を出していかないといけない。NHKらしいけどNHKらしくないというところを、うまく見せられたらと思っております。
――NHKさんと共テレさんと言えば、最近はなんと言っても、小松さんがプロデューサーをされている『チコちゃんに叱られる!』のヒットですよね。
あれで共テレ的にも勢いが出てきたと思いますね。どこに行っても『チコちゃん』の話題になるので、それは会社として良いことだなと思います。
フジから出向…自分にとってプラスに
――共テレさんに出向されて半年弱になりましたが、印象はいかがですか?
制作部門はバラエティもドラマもワンフロアで収まっているので、このコンパクトさがいいなと思います。風通しが良くて、今回の『オヤコイ』がスムーズに進んだのも、そのおかげだと思いますし、フジテレビから出たことが自分にとってプラスになったかなと思います。自分ではフジテレビに在籍しているときもマインドを開いているつもりだったんですけど、やっぱり外に出てみると、各局で求めるものが違ったり、読売テレビさんのチームからも刺激を受けますし、井の中の蛙だったなと思うことがすごくあるんですよ。今47歳なんですけど、この歳でフィールドが増えるって本当になかなかないことだと思うので、貴重な経験ができてるなと思います。
――今、放送が決まってるのは、『オヤコイ』と『全日本大失敗選手権大会』の2本ですか?
はい。なので、自分の頭にあるものを企画書にして、売り込み中です。ちょっとした企画屋さんみたいになってます(笑)。小松さんがNHKさんや、TBSさん(『人生最高レストラン』)やAmazonさん(『ドキュメンタル』『FREEZE』)でやっているので、そことは違う放送局さんだったり代理店さんだったりに顔を出すようにして、最近は各放送局の若い人たちと企画会議もやったりしています。でも、編集していて映像の頭のクレジットに「読売テレビ」って出ると、いまだに不思議な感覚ですね。半年前までは「フジテレビは俺が背負う!」と思ってましたから(笑)
――『オヤコイ』放送の2日後には、『ENGEIグランドスラム』が初の生放送ですね。
切なる願いは、出る人たちが「出てよかったな」と思ってもらえる場所であり続けてほしいということですね。引き継ぎでも、『ENGEI』はそれを大事にしてきたという話をしました。視聴者ファーストはもちろんですけど、演者さんあってのパワーだと思っているので。幸い、『ENGEI』は「あの番組に出たい」と言ってくれる人が多かったんですけど、やはり出演者に対して引力がある番組を作りたいと思うんです。そのためには、焼畑農業で「後はどうでもいいや」と思ってるとつながらないので、種を植えて、肥料を与えながら、時には1回休んで土地を育てていくこともしながら、続いてほしいと思いますね。