きょう22日(19:00~22:00)にフジテレビ系で放送される特番『災害レスキューSP 未公開映像! カメラがとらえた救出の瞬間~“最後の砦”自衛隊・救助部隊の知られざる闘い』。災害現場での救助活動を自衛隊員が撮影した1,000時間にもおよぶ映像を中心に、携わった関係者の証言や再現ドラマを交えて構成された同番組は、常に緊迫感があふれ、心を打たれるシーンの連続だ。

この番組を制作するのは、嵐の櫻井翔が主演したドキュメンタリードラマ『神戸新聞の7日間』(2010年)などを作ってきたチーム。今回8年ぶりにタッグを組んだ、企画の立松嗣章氏(編成局アナウンス室長)と、プロデューサーの成田一樹氏(情報制作局情報企画開発センター部長)に話を聞いた――。

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    『災害レスキューSP 未公開映像! カメラがとらえた救出の瞬間~“最後の砦”自衛隊・救助部隊の知られざる闘い』より=フジテレビ提供(以下同)

数年前から“最後の砦”の映像に着目

近年、大きな災害が発生すると、自衛隊が撮影した救助映像がニュース番組で流れることが増えてきた。災害時の救助活動は、警察、消防、海上保安庁なども行うが、そうした組織の装備では対応できないケースでも、災害派遣要請があれば24時間どこにでも向かう自衛隊は“最後の砦”と呼ばれ、それだけに撮影される映像の迫力はケタ違いだ。

そこで、『神戸新聞の7日間』にも参加し、今回は演出・プロデューサーを務める制作会社・ライスの及川博則氏とともに、数年前からこの“最後の砦”の映像に着目。フジがドラマや映画で放送・上映した海保の『海猿』に対し、「空猿」と呼んで番組化できないかを水面下で交渉を進めたが、当時は自衛隊側と制作側のさまざまな環境が整わず、実現には至らなかった。

そんな中、「月日が流れ、災害発生の頻度が高くなってきていることも踏まえ、再交渉の末、自衛隊側から未公開映像を提供していただくことができた」(立松氏)ということで、今回はこの映像を中心としたドキュメンタリー番組を制作することになった。

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見たことのない映像が次々に

成田氏は以前、編成担当として『わ・す・れ・な・い』『自衛隊だけが撮った0311~そこにある命を救いたい~』など東日本大震災をテーマとする検証番組を担当してきたが、今回の映像は「見たことのない映像がたくさんあったので非常に驚きました」と言うほど。阪神・淡路大震災(95年)を機に、各自治体が災害時に、自衛隊へ災害派遣要請を積極的に行うことになったこと、さらに最近の自然災害の多発数も、膨大な映像量の要因にあるようだ。平成の29年間で、自衛隊が災害派遣要請を受けたのは約2万800件にものぼる。

自衛隊では、独自に災害の状況を把握するためにヘリからリアルタイムで被害状況を指揮所に中継し、被害状況をいち早く収集しており、映像を送る専門部隊もあるそうで、機材や実況の技術を含め、映像のクオリティは上がっているそうだ。

今回は、7つの災害・事故を取り上げるが、その中でも特に注目の内容を聞くと、立松氏は「東日本大震災での心打たれる秘話です」と回答。「自身も被災した宮城の松島基地の隊員たちが、自分たちの家族も津波に飲み込まれているかもしれないという極限状況の中で、ヘリや飛行機が水没したために茨城の百里基地に移動して、飛び立って助けに行くんです。これは、自ら被災した新聞記者たちが、市民のために1日でも早く情報を送るために奮闘する物語を描いた『神戸新聞の7日間』にも通ずる点が多く、苦しい思いをしながら奮闘する救難隊の皆さんの姿に注目してほしいです」と話す。

成田氏も同意しながら、「こういう番組だと、どうやって命が救われたのかに焦点が当たるのですが、今回登場する救難隊の皆さんは、たとえ救われなかった命でも、とにかくご遺体を何カ月も何年も探して、ご家族のもとに届けるということをやるんです。御嶽山の事例では、噴火1年後に行方不明者のご家族をヘリに乗せて、現場を見せてあげるという“心のケア”までしているのですが、そんな活動は私も正直知らなかったので、被災者にとことん寄り添う彼らの知られざる任務を伝えるのも特徴です」と語った。

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人間ドラマを強く描く

映像の提供については、東日本大震災や御嶽山噴火といった大規模な災害の場合は、番組側から素材を希望することもあるそうだが、今回取り上げる事例には、北海道・小樽での韓国船籍の巨大貨物船沈没(04年)のように、世の中では知られていないが、取材を進める中で「隊の中で最も忘れられない究極のミッション」と分かった救出作戦もあったそう。成田氏は「半分以上は僕も知らないケースでした」と語っており、巨大災害の風化防止に加え、自衛隊員たちのこれまで焦点のあたらなかった活動を伝える役割も果たす番組になるだろう。

このような「未公開映像」が中心の番組であると、“衝撃映像”と煽りがちになるが、この番組は、延べ100人という関係者にも取材することで、隊員たちの使命感をはじめ、その家族の心情、被害者の思いといった人間ドラマを強く描いている。今回は自衛隊の撮影映像が中心で、再現ドラマは実際の映像で伝えきれない背景を補足する役割であるため、これまで立松×成田タッグが制作してきた“ドキュメンタリードラマ”というジャンルには当てはまらないが、立松氏は「東日本大震災の松島基地の話は、ドキュメンタリードラマとしても描いてみたいです」と意欲を示す。