▼シナガワに花咲くシブヤとシンジュクのスタイルウォーズ
「WAR WAR WAR」のリリックを手がけたEGOが登場し、「Bounce」、そして「PINEAPPLE JUICE」で会場を盛り上げた後はいよいよライブも後半戦へ。
まずはシブヤ・ディビジョンから野津山が「3$EVEN」をパフォーマンスする。斉藤がVTRで「まさか野津山くんのフリースタイルが見られるなんて……」と言った際には「何の話だ!!」と反発していた野津山だったが、曲中できっちりフリースタイルをやってみせる姿が頼もしい。続いては、軽やかに弾みながら「目に映るすべてが手に入ってしまう」とエゴイスティックな歌詞を歌い上げる、白井の「drops」。水色とピンクのパステルカラーのライトが夢のようなステージを見せれば見せるほど、曲が持つ陰りが際立つ。「お姉さーん! お兄さんも!」と呼びかけ手を振る白井の姿に、ファンは黄色い声をあげていた。
さらに「Shibuya Marble Texture -PCCS-」で、シブヤ・ディビジョンが持つ甘い夢と陰の色をはより一層濃くなってゆく。会場は心地よい陶酔感に一体となり、クラップとともに体を揺らす。幻太郎のパートは白井と野津山の二人がかわるがわるラップしていた。曲が終わると、白井が自撮り棒を取り出し「よーし帝統、今日は自撮りして遊ぼ!」と野津山に提案。しかし、カメラのセッティングがうまくいかず、曲が終わるまでに撮り終えることができないハプニングが。「また今度!」と白井がステージに微笑みを残し去っていく。
続いて登場したのはシンジュク・ディビジョン。シブヤが残した甘い陶酔をガラリと変えるEDMサウンドにのって木島が「待たせたね子猫ちゃん!」と絶叫。「シャンパンゴールド」は会場中がきれいにそろったコールで盛り上がり、一瞬にして品川は歌舞伎町になった。「スキ!」というフレーズで横にいる伊東に絡みに行ったかと思えば速水のそばに寄りに行くなど、木島は奔放なステージングを見せる。
ゆっくりと横切る電車を模したシルエットがスクリーンに映し出され、次は伊東による「チグリジア」だ。「今日も世界に音が多すぎる」という始まりに呼応するかのように、木島が作り上げた熱狂が嘘のように消え、会場中が伊東のパフォーマンスをじっと見守る。的確にビートに乗りながら、奥底に秘めた独歩の思いを切々と吐き出す伊東のラップ。静かに、けれど激しく言葉を叩きつけるようなパフォーマンスに、ファンのみならず速水や木島までもが見入っていた。
そして白衣姿の速水がピンスポットの中に立ち「迷宮壁」が始まる。「御誂え向きの邪悪なるステージ。ここで一石を投じる」というラインがステージに立つ速水の口から紡がれると、まさにバトルに一石を投じる寂雷の姿が立ち現れてくる。速水が発する言葉ひとつひとつの重みが、ジワジワと身体に効いてくるラップだ。ひたすらボディブロー喰らわせ続けられるようなステージに、ステラボールは静まり返った。やがて新宿の街並みとともに流れ出した「Shinjuku Style ~笑わすな~」は、3人の濃密なステージを見た後では、まるで長編映画のエンドロールのよう。伊東が「ぶちかますぜ!」と吠え、ステージの前方でファンを挑発する。まさに「流れるシンジュク最強説」は伊達じゃない。
最後はシブヤ、シンジュクの6名がステージに集い、「BATTLE BATTLE BATTLE」が披露される。冒頭の速水との掛け合いに、白井がプイと首をそらす仕草がコミカルだったが、イケブクロとヨコハマ同様に緊張感の走るラップバトルであった。キャストと入れ替えに「まだスタミナ残ってますか?」と登場したのは「BATTLE BATTLE BATTLE」のリリックを手がけたKEN THE 390。漂っていた緊張感をほぐす「Funk U Up」で、会場を一つにした。
▼勝者と敗者が分かれ「悔しいのもはねのけてラップで返す」
再び全員がステージに登場すると、コミカライズ決定、TANITAやサンリオとのコラボレーションなどが発表される。今後の展開に嬉しい歓声が上がっているところ、突然、中王区貴賓席である2階席から「ずいぶん盛り上げたようだな、下郎ども!」と声が。勘解由小路無花果を演じるたかはし智秋がそこに立っていた。たかはしから、ファン投票により決せられる「「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Battle Season」」のバトル勝者が発表される。
イケブクロvsヨコハマは、ヨコハマが32,943票を獲得し勝利。そして、シブヤvsシンジュクは40,936票を獲得したシンジュクが勝利を収めた。11月14日に発売されるFinal BattleのCDはヨコハマvsシンジュクの対決になる。
結果を受け、浅沼は「ここからは素でいく」と前置きした後、「正直、イケブクロが勝たなくてどうすると思ってました。昴はこの作品をずっと引っ張ってくれました。ラップなんてやったことない俺たちにずっとつきっきりでラップを教えてくれて、イケブクロが勝たなくてどうする?って、二人(駒田、神尾)には言えなかったけどずっと思ってました。でも勝っちゃったからには、死ぬ気で頑張ります。Buster Bros!!! ありがとう。絶対お前らの思いも持ってくぜ!」と対戦相手のイケブクロへの思いを述べた。速水も、導いてくれた木村への感謝を述べつつ「シンジュクの3人は本当にいいチームなので、もうちょっと戦っていきたいと思っていまし。これからもシンジュクの応援をよろしくお願いします!」とコメントした。
フロアからは喜びの歓声と、すすり泣きの声が同時に聞こえてくる。木村が「悔しいな! シブヤ!」と語りかけると、白井が「でも、これで終わりじゃないからね!」と笑った。しかし、ひとつだけ彼にも心残りがあるよう。それは自撮り。ファンから「がんばれ!」と声援を受けながらリベンジする白井と野津山だったが、「はいチーズ!」と言いながら誤って動画ボタンを押してしまうというくだりも見られ、会場は和やかな空気に包まれた。
また、浅沼は「ブクロの女も、シブヤの女も悔しいと思います」とそれぞれのファンの悔しさに寄り添いつつ「でも、どのディビジョンも応援してくれたのがこのライブで何よりも嬉しかったです」と、ディビジョンを超えたファンの声援に感謝を伝えた。木村は「ヒップホップが好きでずっとこれまでやってきたんですけど、こんなに多くの方に楽しんでもらえたことに感謝です。どこから目線だよって感じですけど(笑)。ヒップホップ、面白いでしょ!」とヒップホップへの愛を叫ぶ。「ヒップホップはライフスタイルだから、悔しいのも嬉しいのもひっくるめてヒップホップ! 悔しいのもはねのけてラップで返す。これからもひとつお願いします!」と今後への希望をにじませた。
ゲストのEGOとKEN THE 390も再び登場し、最後は二人が 加わった特別バージョンの「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」が披露される。EGOはコウエンジ・ディビジョン、KEN THE 390は390ディビジョンとしてラップに参加。KEN THE 390からは「最近のHIP HOPはつまらねー/お前はフェイクこの文化は似合わねー/とか言ってんのは落ちぶれた証拠」などの攻撃的なリリックも飛び出し、大いにファンを沸かせた。最後は会場中がピースサインをつくって終幕。ファンの圧倒的な熱量と、キャストの情熱が一体となった、猛暑にふさわしいアツいライブであった。