男性声優によるラップソングプロジェクト『ヒプノシスマイク』のライブイベント「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-2nd LIVE@シナガワ《韻踏闘技大會》」が8月26日、東京・品川ステラボールにて行われた。昨年11月のファーストライブから9カ月、多くのファンからの期待が寄せられるなかでのセカンドライブ。熱狂の一夜をレポートする。
出演キャストは「イケブクロ・ディビジョン Buster Bros!!!」から山田一郎役の木村昴、山田二郎役の石谷春貴、山田三郎役の天﨑滉平、「ヨコハマ・ディビジョン MAD TRIGGER CREW」から碧棺左馬刻役の浅沼晋太郎、毒島メイソン理鶯役の神尾晋一郎、入間銃兎役の駒田航、「シンジュク・ディビジョン 麻天狼」から神宮寺寂雷役の速水奨、伊弉冉一二三役の木島隆一、観音坂独歩役の伊東健人、「シブヤ・ディビジョン Fling Posse」から飴村乱数役の白井悠介、有栖川帝統役の野津山幸宏。
▼割れんばかりの歓声に包まれて、バトルステージが幕をあける!
開演前の会場には、新旧とりまぜた日本語ラップの名曲の数々が流れる。シンジュク・ディビジョンにリリックを提供したラッパ我リヤが参加した、RHYMESTERの「リスペクト」、シブヤ・ディビジョンの楽曲を手がけたAvec Avecによる、唾奇の「Soda Water」など、作品との関連性も見せるニクい選曲が会場を温めていた。そこへ突如、木村による「ライブ諸注意ラップ」が。「お客さん同士のいざこざは禁止! 暴力なんてもってのほか/それでも解決しないようならラップで白黒つけるのはどうだ」というヒプノシスマイクらしい注意事項にファンは歓声を上げ、開演前から会場のボルテージが上がっていった。
やがてステージが暗転し「ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-」からライブがスタート。待ってましたと言わんばかりの、怒号のような歓声が響き、会場中が激しくバウンスする。ファンの勢いに負けじと煽りまくるイケブクロ、シンジュクの面々。対照的にヨコハマの3人は静かにフロアを威圧し、シブヤは白井が「そこに跪け 許しを乞え!」で床を指さして挑発。キャストたちも、早くも臨戦態勢だ。
続いて「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」を披露した後、キャストが一人ずつ気合十分な挨拶をしていく。ここで、夢野幻太郎を演じる斉藤壮馬もVTRで登場。「参加できないのは残念ですが、シブヤ・ディビジョンの二人が盛り上げてくれると思います」とコメントしつつ、「まさか野津山くんがあんなフリースタイルを披露するなんてね……」と野津山への無茶振りも残していった。
ライブの直前は、各ディビジョンのメンバーがファンに向けて意気込みを熱くアピール。「お袋、玉袋! 放蕩息子が帰ってきましたよ! 今日は身につけてきたスキルを見せつけたいと思いますのでよろしくお願いします」話すのは天﨑だ。浅沼は左馬刻らしい威圧的な話し方で「おいクソ女ども、具合悪くなったら隣のやつに言えよ。無理すんじゃねーぞ」と優しさを見せる。話し方と内容のギャップの大きさにクラクラしたのは筆者だけではないだろう。野津山は「ポ女とセンターGUYのみんな! ブチ上げていくぜ!」とファンに呼びかけ、木島は「やっと会えたね、子猫ちゃんたち。今日は絶対に楽しませてみせる!」と、勇ましく宣言した。
▼スキルを見せつけるイケブクロ、優しさを見せたヨコハマ
ここからはノンストップのライブパートだ。まずはイケブクロ・ディビジョンより、石谷が「センセンフコク」でトップバッターらしく会場をブチ上げる。ファーストライブの時よりも安定感と攻撃性が増した石谷のラップに、フロアが熱く揺れた。
続いて天﨑が巧みなリズム感とフロウをもって「New star」を披露。曲中で、山田三郎として「(石谷が演じる)二郎がブチ上げた会場の空気を三郎の『New star』がぶっ壊したぜ」とセルフボーストするさまもキマっており、さらに「これは挑戦じゃなくて勝つのは当然/僕たちがナンバーワンになるのは当然/頂点目指すぜ」とフリースタイルをする余裕も見せる。まさにライブ前の宣言通り、これまでに身につけたスキルを見せつけるアクトだ。石谷と天﨑の堂々たるステージは、ファーストライブから9カ月の時間の積み重ねを感じさせるものであった。
そして真打の長男坊、山田一郎を演じる木村が登場。「みんな手のひらを見せてくれ! それを思い切り振ってくれ」とファンに呼びかけ、迫力のラップを披露する。昨年のインタビューで「声優としてラップできることが嬉しくて仕方ない」と話していた木村。「I LOVE HIP HOP」というフレーズに、ひときわ力を込められる。「こんなにたくさんの人が見に来てくれてるよ」と感慨深くつぶやいたその顔は、ステラボールを埋める満員のオーディエンスを前にしてほころんでいた。
「じゃあ、いつものやつやるか」と木村が呼びかけ、3人がステージ中央に集まり、始まったのは「IKEBUKURO WEST GAME PARK」。ファンのクラップの音に乗せた三兄弟のサイファーから始まり、やがて大きな熱を生み出し会場中を巻き込んでいく。3人の全身からにじみ出る「ヒップホップの楽しさ」にファンも触発され、力の限り大きな声をあげていた。
高らかなファンファーレが鳴り響き、神尾の「What's My Name?」からヨコハマ・ディビジョンがライブをスタートさせる。神尾の「What's My Name?」という呼びかけに「理鶯!」とレスポンスする一体感が気持ちよい。続く駒田は「ベイサイドスモーキンングブルース」で曲名にちなみタバコをくゆらせながらラップする。ヨコハマはフロアの煽り方ひとつをとっても穏やかじゃない。浅沼がフロアに向かって「声出せオラ!」とドスの効いた声を浴びせていた。しかし、実はどこのディビジョンよりもファン思いなのもヨコハマ。駒田は曲の途中で、前方に詰め寄りすぎるファンに「言うことを聞け! 半歩下がるんだ! 前のやつ殺してぇのか? オマエらしょっぴくぞ!」と、安全を思っての注意を行う。ファンがそれに従うと「上出来だ」とアメを与えることも忘れない。
駒田がくわえたタバコから、浅沼がタバコの火をもらい、その煙をまといながらステージ中央に立つ。印象的なバトンタッチの演出から、浅沼の「G anthem of Y-CITY」へ。ナイフように鋭い浅沼の視線が、スモーキーな光の中で際立つ。彼の横に駒田と神尾が並び立つ、その姿はまさに理鶯、銃兎、左馬刻のMAD TRIGGER CREWとしての存在感を持っていた。続いて披露された「Yokohama Walker」の哀愁漂うメロディラインが、港町の潮風のようにステージに張り詰めた緊張を解いていった。去り際につぶやくように残した「ありがとよ」という浅沼の一言が、余韻を残す。
最後はヨコハマ、イケブクロの両ディビジョンが相対しバトルする「WAR WAR WAR」だ。一触即発の空気に包まれたステージで、両者にらみ合うようにラップする。フックの歌詞の通り「一歩も引けない」両者の意地を見せつけられたステージであった。