2017年9月から始まった特撮テレビドラマ『仮面ライダービルド』が、2018年8月26日に放送された「ビルドが創る明日」で、本編最終回を迎えた。地球外生命体エボルトと凄絶な戦いを繰り広げてきた天才物理学者・桐生戦兎/仮面ライダービルドと仲間たちの物語に一つの終止符が打たれた。ネットでは、1年にわたって魅力的なキャラクターたちを熱演したキャスト陣や、力を尽くしたスタッフへ感謝の言葉が送られるとともに、終わりを惜しむ"ビルドロス"の声も広がっている。

だが、戦兎たちの物語はまだまだ終わらない。9月2日より放送スタートする「仮面ライダー」最新作『仮面ライダージオウ』に戦兎と万丈龍我の出演が発表されているほか、万丈を主役に据えた新作Vシネクスト『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』(2019年初旬期間限定上映、4月24日Blu-ray&DVD発売)も控えている。さらに、テレビシリーズ第46話と第47話の中間に位置する物語『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』(監督:上堀内佳寿也)もただいま絶賛公開中である。

マイナビニュースでは、1年にわたって戦兎を演じ、ドラマをけん引してきた犬飼貴丈に単独インタビューを行い、この1年について訊いた。

犬飼貴丈(いぬかい・あつひろ)。1994年生まれ。徳島県出身。2012年、第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞し、芸能界入り。2014年のドラマ『碧の海~LONG SUMMER~』で俳優デビューを果たし、以後テレビドラマや劇場映画に出演。『仮面ライダービルド』(2017年)は、連続テレビドラマ初主演作となる。2018年9月から始まる『仮面ライダージオウ』にも桐生戦兎として出演することが決まっている。撮影:大塚素久(SYASYA)

――犬飼さんにとって、『仮面ライダービルド』に取り組んできて1年という月日が経った、と実感する出来事にはどんなものがありますか。

最終回に至るまでに、レギュラーひとりひとりがクランクアップ(撮影終了)していくという流れが、この作品がもう終わるんだなあという思いを強めてくれました。

――1年間『ビルド』の主役・桐生戦兎を演じたことによって、犬飼さんご自身にどんな変化がありましたか。

私生活のことでいうと、僕は朝がすごく苦手だったんですけれど『ビルド』の撮影に入ってからは、携帯の目覚ましアラームだけで起きられるようになりました。そういうのは、ようやく母親離れしたのかなってところですね(笑)。何しろ、撮影所の集合時間は毎日とても早いですから。大きな目覚まし時計を何個もかけておかないと起きられない……なんてことがなくなったのは、自分の中でとてもプラスになったことでした。

あと、やはり毎日の撮影スケジュールがハードなこともあって、体が急激に痩せましたね。しかも最初のころの戦兎は、クランクイン(撮影開始)が夏だったのにも関わらず、トレンチコートを着ていましたから。「え、これ死ぬかも……」ってくらい暑くて、ずっと汗が止まらない状態。みるみる痩せていきました。まさに「仮面ライダーダイエット」だと思いましたけれども(笑)。それでもタイトなスケジュールでやっていますし、熱中症で倒れたりしないよう、体調の管理に気をつけていました。スタッフさんたちもすごく僕に対して気を遣ってくださって、ちょっとカゼ気味だったらすぐ薬を持ってきてくれたりして、ありがたかったです。おかげで体調不良で撮影を休むこともなく、1年間やり通すことができたのは自分にとってもよかったと思っています。

――戦兎という役柄に1年間ずっと付き合ってきた犬飼さんだからこそわかる、戦兎という人物の魅力をぜひ教えてください。

何事に対しても受け入れる姿勢というのが、ものすごくあるなって思いますね。仲間を裏切ってスパイ活動をしていた紗羽さんであったり、殺人犯・脱獄囚として追われる万丈(龍我)を受け入れてかばい続けるとかだったり。そういった「慈愛」の心を持っているところは、すごくいい奴だと思っています。

――思えば、犬飼さんは記憶喪失の「桐生戦兎」を演じながら、元の人格である「葛城巧」に戻ったり「巧の記憶と融合した戦兎」になったりと、記憶や人格がエピソードごとに変化していくという難しさを経験されてきたと思います。終盤エピソードや映画では、犬飼さん演じる戦兎と、木山廉彬(きやま・ゆきあき)さん演じる葛城が心の中で会話をするシーンがありますが、犬飼さんと木山さんが"同一人物"として演技の打ち合わせをされた、なんてことはあったりしましたか。

それほどありませんでしたね。お互い、同一人物ではありますが人格が違いますし、演じ方も違いますから。監督を交えて木山さんとホン(脚本)の読み合わせをした、ということはありましたけれど。

――1年間やってきたことで、犬飼さんは戦兎としてのキャラクターを完全につかんでいると考えてよいですか。

どう説明したらいいか、わからないんですよね。この1年では、犬飼貴丈としてより、桐生戦兎として過ごしていた時間が長いので、どっちがどっちなんだ、って混同する瞬間があります(笑)。ふと気づいたとき、いま俺は戦兎としてものを考えていたのか、自分自身なのかって……。不思議な感覚ですよね。