新しいウォークマン、「NW-A50」(以下、A50)シリーズには4つの注目したい特徴があります。それぞれを順に紹介していきましょう。
筐体を変えたことで音質がさらによくなった
ひとつめはポータブルオーディオプレーヤーとして、最も大事な価値である「音質」がブラッシュアップされています。筐体の構造や内部の素材に改良を加えたことで、これを実現しました。
現行モデルのA40シリーズも、筐体にアルミニウムのフレームを使っていますが、新しいA50シリーズは、2017年秋に発売された上位モデルのNW-ZX300と同じく、アルミの押し出し材から削り出して作った一体型のアルミキャビネットをボディに採用したことで、音質と剛性の両方を高めています。
A40はアルミ押し出し材の外側フレームと、内側にメタルシャーシを組み合わせた2層構造でした。一体型のシャーシは密度が高く、抵抗値を低く下げられることから音質のグレードアップに効果をもたらします。IFAの会場で試聴したA50は、低域がさらにどっしりと安定して、中高域の透明度が高まったことで、広くクリアな音場感を再現できるところが、とても魅力的に感じられました。
内部にパーツを組み込むための土台となる基板、そしてバッテリー線材の接続部分にはソニーが独自に開発した、微量の金を練りこんだ高音質無鉛はんだを新規に採用しました。
本機を担当するソニービデオ&サウンドプロダクツの田中光謙氏いわく「透明感とボーカルの声の艶っぽさがアップしている理由は、このハンダに由来するところが大きい」のだそうです。
AIが、どんな音源もハイレゾ相当のいい音に変える
ふたつめのポイントは、ソニー独自の「DSEE HX」がA50シリーズからまた進化を遂げたことです。「DSEE HX」は従来のハイレゾ対応ウォークマンにも搭載されてきた技術。低音質のコンテンツを、アップスケーリング処理によってハイレゾ相当の音質に高めるものです。
今回はアップスケーリングのアルゴリズムに大きく手を加えています。具体的には、膨大な量と種類の楽曲データをAIに機械学習させて、アップスケーリング処理時の“勘所”をDSEE HXエンジンに覚えこませています。DSEE HXをオンにしている時に再生した楽曲に対しては、その曲に最適なアップスケーリング処理が自動的に行われるというものです。
AIが行う機械学習のデータベースに、ユーザーがウォークマンで再生した新たな楽曲を覚えこませる機能は搭載されていません。ウォークマンが内部に持つデータベースを使って処理を行うものと理解するのが正しいようです。なお、現行モデルのソフトウェアをアップデートして、DSEE HXの機能を最新バージョンに変更する予定は今のところないようです(残念)。
なお、A50シリーズがDSEE HXのような変換処理を行わずに、ネイティブスペックで再生できるハイレゾ音源は最大192kHz/24bitまでとなります。またはDSDについては11.2MHzまでの音源をリニアPCM変換しながら再生することが可能です。そして、まだ手に入る音源自体が少ないものの384kHz/32bitのリニアPCM音源のダウンコンバート再生にも対応しています。
アナログレコードのように豊かな音楽再生
3点目として注目したいポイントは、これも音楽再生を楽しむための新しいエフェクト機能になります。機能名は「バイナルプロセッサー」。バイナル、つまりアナログレコードを再生した時に得られる“良い音”を感じさせる音響現象をDSP(デジタル信号処理プロセッサー)の力で再現するというユニークなモードです。ウォークマンのホーム画面をスクロールさせると表示される「バイナルプロセッサー」をオンにすると、その効果を楽しむことができます。DSEE HXと同時にかけることも可能。
アナログレコード再生の魅力とは、つまり入力された音楽信号に対する高い感度、豊かな響きにあります。会場に展示されていた実機で確かめてみると、音楽再生の静寂感が高まり、音の広がりが豊かさを増す実感が得られました。
バイナルプロセッサーの効果はウォークマンの3.5mmイヤホン端子による有線リスニング時だけに使うことができます。Bluetooth再生、およびWMポートからパソコンにUSBでウォークマンを接続して、USB-DACとして音楽を聴く場合には無効になります。
スマホの音楽を、Bluetoothで飛ばしていい音で聴く
そしてラストは「Bluetoothレシーバー機能」が追加されたことです。どんな用途に使うのでしょうか?
たとえばスマホとウォークマンをBluetoothで接続して、スマホで再生中の音楽をウォークマンの高品位なデジタルアンプ「S-Master HX」や、先述のハイレゾ相当の音質へのアップスケーリング「DSEE HX」をかけて、ハイグレードなイヤホン&ヘッドホンで聴くことができるようになります。ウォークマンに付属するイヤホンであれば、デジタルノイズキャンセリングや外音取り込み機能も使えるようになります。
ウォークマンとスマホの間は、BluetoothのオーディオコーデックLDAC/AAC/SBCでの接続になります。aptX系のコーデックによる伝送には対応していません。また伝送遅延がある程度発生する可能性があるので、動画よりも音楽ストリーミングの再生に向く機能といえそうです。そして、ウォークマンからさらにBluetooth対応のヘッドホン・イヤホンにワイヤレスで音を飛ばすことはできません。
片手持ちでサクサク操作、しかもハイレゾ再生はベスト・イン・クラスという、ソニーのハイレゾ対応ウォークマンのニューフェースは日本上陸の際にもまた大きな旋風を巻き起こすことになりそうです。