iPadは、販売台数1,000万台を再び上回り、2017年第2四半期以降再び成長基調を取り戻すようになった。2018年第3四半期は、3月末にシカゴで開催した教育イベントで、329ドル(教育向けには299ドル)で投入された第6世代iPadの成果に注目が集まった。
販売台数は前年同期比5%増、売上高1%減という結果で、平均販売価格は411.08ドルと、前年同期比434.96ドルから20ドル以上低下した。このことは、低価格に設定したiPadの販売比率が上昇したことを物語っている。
AppleはiPadを教育機関に導入しやすいよう、299ドルの価格設定とともに、LogitechのスタイラスペンをApple Pencilの半額となる49ドルで用意し、低コストでタブレット体験が導入できるような環境を整えた。
これに対抗するように、Microsoftは8月1日、399ドルのSurface Goを発売したが、Surface Penは99ドル、またMicrosoft Officeやクリエイティブソフトウェアを追加購入する必要があるなど、コスト面ではiPadが優位に立っている。
一方、Google Chromebookは、低価格に加え、G Suite for EducationやGoogle Classroomなどの教育向けクラウドサービスによる優位性を誇っていた。そこでAppleは3月に、Schoolworkのほか、教育向けのApple IDの発行と200GBの無料追加ストレージを用意するなど、G Suite for Education/Google Classroomへの対抗策を発表した。
これまで、学校ではiPadを選ぶ場合でも、メールなどのクラウド環境を確保するためにG Suiteを利用し、iPadからGoogleのクラウドサービスを利用しなければならなかった。Appleがクラウドとアプリの環境を教育市場向けに強化したことで、iPadとAppleのアプリだけで、教室への導入が済むようになった。
そうしたシカゴでの教育イベントの成果は、今後のiPad販売に貢献していくことになる、と考えている。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura