つい30分前までは晴れていたのに、突如として辺りが黒い雲に覆われ、バケツでひっくり返したような激しい雨に見舞われる――。こういった状況に遭遇した経験を持つ人も多いはずだ。こういった局地的な大雨は「ゲリラ豪雨」とも呼ばれることがあり、近年増加傾向にある。

雨による被害と言えば、7月に広島県や岡山県などの西日本を中心に200人以上もの死者をもたらした「平成30年7月豪雨」が記憶に新しい。雨は私たちの生活に不可欠であると同時に、時には命を脅かす存在でもある。

そこで今回、気象庁予報部予報課の笠原真吾予報官に「局地的な大雨から身を守る術」をうかがった。

  • 局地的大雨はしばしば人々の生活を脅かし、時には命をも奪う(※写真と本文は関係ありません)

    局地的大雨はしばしば人々の生活を脅かし、時には命をも奪う(※写真と本文は関係ありません)

局地的大雨はどうやってできるのか

近年、さまざまなメディアでゲリラ豪雨なる表現を見聞きした人も少なくないだろうが、この名称は天気を表す正式な用語ではない。これは一般的に、「急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨」を意味する「局地的大雨」(局地的な大雨)を指すと考えられている(以後、本稿では局地的大雨で統一)。

この局地的大雨は発達した積乱雲がもたらすもので、積乱雲は夏にできやすいため、夏場は特に局地的大雨に注意する必要がある。それでは、局地的大雨の元凶となる積乱雲はどういった条件下で発達しやすいのだろうか。笠原予報官は発達した積乱雲ができる条件には、以下の2つがあると話す。

(1)大気の状態が不安定

(2)上昇気流がある

「大気の状態が不安定なことは、前日までに予報できます。そのため、テレビの天気予報でも『大気の状態が不安定なので雷や突風に注意してください』といったアナウンスが流れると思います。このキーワードが出てきたら、『局地的大雨に注意が必要なんだ』と思っていただきたいですね」

(1)の条件は前日までに予報できても、(2)の条件を正確に把握するのが難しいため、現時点では「いつ・どこで局地的大雨が降るか」は正確にはわからないという。ただし、風が山に当たると山に沿って空気が上昇するため、山沿いのエリアは上昇気流が生まれやすい=積乱雲が発生しやすいということは判明している。また、例えば内陸に向かって海風が入るような状況では、上昇気流が生じ積乱雲が発生しやすい。

積乱雲が連続発生する仕組み

積乱雲の寿命は短く、1時間ぐらいで消失してしまうが、ひとたび発生すると次々に新たな積乱雲を発生させるという厄介な性質を持つ。

「大気の状態が不安定な場合、上昇気流ができ、地面付近の暖かい空気がある高度まで上昇すると、上空の冷たい空気に向かって自動的に混ざるようになります。空気が上に上がっていくに従い水蒸気が凝結して水滴に変わり、水滴が成長すると雨粒になって落下し雨が降ります。積乱雲が成熟し雨粒が多くなると雨粒の落下に伴って上昇気流をつぶす形で下降気流ができ、積乱雲は寿命を終えます。この下降気流は、地面付近に達すると向きを変えて水平の風になり、風と風がぶつかるとまた上昇気流ができるという繰り返しになります」

積乱雲一つひとつは短命であるものの、ひとたびできると次々と発生してしまう。その積乱雲が風に乗って局地的大雨をもたらすパターンが多いという。