柳沢慎吾のまさかのミス

――みなさん現場で「笑いをこらえるのが大変」だそうですが、福士さんもこらえてらっしゃるんですか?

1回笑うと止まらなくなりそうなので、僕は撮影中はあまり笑わないようにはしています。突拍子のない事が来たとしても、対応できるハートだけは持っておこう、というのが、今回唯一主役としての自覚かもしれません。

でも1つ本当に危なかったのは、慎吾さんのセリフの中の名前間違いでした。基本コメディでテンション高く盛り上げていた慎吾さんが、初めて低いトーンで心をこめて「おい、心配しようぜ、八戸さん(徳井優)のこと」と周りをたしなめるハートフルなシーンで、「おい、心配しようぜ、八ツ橋さんのこと」と言ってしまったうえに、慎吾さんがキョトンとして、間違えたことに気付かず芝居を進める顔に面白くなっちゃいました。「心配しようぜ」と言っているのに、「八ツ橋さん」って、誰?(笑)

また、この間違いに、慎吾さんの思考回路がちょっとだけ見えるじゃないですか。数字の「八」までは見えていたのに、「八戸」に行けなかった。それがまた面白くなっちゃって、次のテイクでも引きずりそうになりました。「もう1回言うんじゃないか」と身構えてしまいました(笑)。

――その間違いは引きずりそうですね。

テンションが上がっているシーンで間違えちゃった、ということだったらまた状況が違うのですが、1番ハートフルなシーンで、ご本人も「いいよね、たまにはやりたいよね、心に来るやつ」と言いながらだったので、「どうしたらいいんだろう」と思いました(笑)。

――現場の様子が伝わってきます(笑)。今回は食べ物の話をおいしそうにすることが大事だと思いますが、何かコツはありますか?

自分が説明しようと思っているごはんを自分の中で想像して、腑に落ちるまで繰り返します。その方が、リアリティのある話し方になると思うので。でも今回少し難しいのは、しゃべりながらも回想やナレーションが入ることでしょうか。そのバランスは監督にお任せして、相談しながら行っています。

アミノ酸を消費する毎日

――先日は竜星涼さんの取材をしまして、その時に舞台『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極~』で共演されていた福士さんについて、すごく熱く語ってくださったんですよ。

お、嬉しいです。

――楽屋もずっと一緒だったので、もう「心がつながっている」と。

LINEは来ないんですが(笑)。もう、何日もずっと一緒にいましたからね。大好きですよ、本当に。

今回の「飯」の話につなげると、3カ月間ずっと一緒の楽屋にいて、2人で一番口にしたものは、「アミノ酸」でした。僕らの、アミノ酸の消費量は半端なかったです。もう体が欲しているから、箱買いして飲んでいた。でも、『極道めし』でアミノ酸の話をしても、誰も喉を鳴らしてくれないと思います(笑)。

――それだけ過酷な毎日だったんですね。

そうですね。本当に、共同生活をしていると、人って相手のことがわかるんだなと思いました。毎日朝から夜まで顔を合せて、舞台上でも向き合って、まるで恋人みたいですよね。今回の『極道めし』も共同生活をテーマにした作品なので、一緒に暮らしていて相手のことに気づくことがいろいろあるのだろうと感じました。

――竜星さんも、「相手のことがわかる」とおっしゃっていました。千秋楽では2人で泣いた…というお話を伺って。

ずっと「千秋楽は泣こうな」「いや、泣かないっす」「いや、泣く」と話していたんです。舞台が終わって楽屋前で待っていて、僕はすでに泣いていたのですが、竜星くんが入ってきたら一瞬で「えーん」と、僕からもらい泣きをしていて、「誠治さんが泣いたらダメっすよ!」と言われました。「無事に終わろう」と言い合っていた舞台だったので、感動しましたし、実感がわきました。