Nikon 1 V3を購入した当時、しかし私のNikon 1システムの使用頻度は緩やかに下降しつつあった。当方の写真生活、および写真家稼業において、Nikon 1のお株を奪うヤツが現れていたからだ。ソニーの「RX10」である。かたやレンズ交換式アドバン(以下略)、もう一方はコンデジのオバケ。常識的には両者、一見バッティングしない間柄に見えるけれど現実は違った。

  • 2013年11月に登場したソニーのレンズ一体型デジカメ「Cyber-shot DSC-RX10」。1インチセンサーと35mm判換算で200mmまでをカバーする光学8.3倍ズームレンズを組み合わせ、高画質と望遠性能を両立した点が話題を呼んだ

センサーサイズはどちらも1インチで一緒だ。でも、写りはNikon 1が単焦点レンズを振りかざさない限りRX10のほうが上。とりわけ、高感度画質には歴然たる差があり、高倍率ズーム搭載による利便性の高さを掛け合わせると、もはやNikon 1にこだわる理由は希薄だった。高速性では圧倒的にV3が優位も、使用する機会は限られる一方だったのだ。

世間でも同じ事態が起こっていたとは考えにくいが、メーカーラインアップの中におけるNikon 1推しのパワーが盛り上がりを見せることはなかった。そして、2015年4月に入門機「Nikon 1 J5」を出したのを最後に、ついに消滅。このことに、フルサイズミラーレスの登場と直接の関係があるのかどうかは分からない。でも、Nikon 1がなくなってしまったのは現実だ。

  • Nikon 1 J5以前まで、基本的にもう少しヌケの良さが欲しいと思わせる写りをすることが多かった印象だ。ド・ピーカンの下で撮っているときはあまり気にならなかったのだけど(Nikon 1 V2+1 NIKKOR VR 10-100mm f/4-5.6、ISO160、1/640秒、F4.5)

  • Nikon 1 J5からは画質がガラッと変わった。高感度画質も劇的に向上。今さらこんなコトをいうのもナンだけど、V2やV3がコレ系のセンサーを使っていれば、Nikon 1の評価ってもっと違ったものになっていたような気がする。あのタイミングであの高速性を得ることができたかどうかはさておき……(Nikon 1 J5+1 NIKKOR 18.5mm f/1.8、ISO160、1/2000秒、F4.0)

ソニーとのガチンコ勝負になるのは間違いない

さて、間もなく登場するニコンのフルサイズミラーレスなのだが、これもやっぱり私個人の中では、いや、これに関しては世間一般の捉え方としてもソニーとの戦いになることは確実だろう。そもそも、ソニーのフルサイズEマウント機を意識したモノになっている可能性は高く、放っておいても競合は避けられないはずなのだ。ソニーフルサイズEマウント機の見せる現在までの躍進ぶりと飛び抜け方は、数年前の予想を完全にブッちぎるレベルにある。まずはそこに追いつき、可及的速やかに追い越す流れを作らねば、ニコンのフルサイズミラーレス、いろいろとタイヘンなことになりそうだ。後発の強みをどんなカタチで示してくれるのか? とっても楽しみで、正直ちょっと心配だったりするのである。

  • 少しずつ姿を現してきたニコンのフルサイズミラーレス。Nikon 1のDNAは受け継がれているのだろうか