TVアニメ『マクロスF』のランカ・リー役で声優デビューを果たし、アーティストとしても精力的に活動している中島愛。ランカのキャラクターソング「星間飛行」をリリースしてから10年目というアニバーサリーイヤーを迎えた彼女は、8月1日に12枚目のシングルとなる『「知らない気持ち」/「Bitter Sweet Harmony」』を発売した。
今回、中島にこれまでの声優・アーティスト活動を振り返っていただきつつ、アニメダブルタイアップとなる本シングルの聞きどころ、そして今後の目標などについて聞いた。
▼毎日がファンタジーのよう
――『マクロスF』のランカ・リーとして声優デビュー、そしてキャラクターソング「星間飛行」をリリースしてから10年が経ちました。デビュー当時と変わったと感じる部分はありますか?
『マクロスF』のランカでデビューしたときは10代で、高校を卒業してからすぐにテレビ放送が始まりました。そのタイミングで茨城から東京に上京して一人暮らしも始めたので、正直、デビュー当時はあまり余裕がありませんでした。なので、その時と比べると一つ一つの仕事を噛みしめて楽しめるようになったと思います。
――その余裕のなさはデビュー作が長年続いているビッグタイトルだったというのも関係しているかもしれないですね。
オーディションに合格したときから生活……いえ、もう人生が変わったので、デビューから数年はその現状を受け止めるのに必死でした。しかも、頑張り過ぎていたのか、当時のことを所々覚えていないんですよね。そのくらいがむしゃらだったんだと思います。今は一つ一つちゃんと覚えていますし、何をやって、どういう風に見てもらいたいのかを自分なりに表現できるようになった気がします。
――なるほど。デビュー10周年ということなので、この機会に改めて声優とアーティストを目指されたきっかけについても教えていただけないでしょうか?
物心がついたときから音楽を聴くのが好きで、自然と家でも趣味で歌うようになりました。また、少女マンガも好きで、小さい頃はマンガ雑誌のキャラクターにアテレコして遊んでいたんですよ。
――つまり目指すきっかけは自身の趣味だった?
そうですね。とは言っても留守電などで自分の声を聞いて特徴がないと感じていたので職業にできるとはまったく思っていなくて……。それでも、声を使う仕事をやりたいと強く思ったので、オーディションを受けることにしました。
――そして、オーディションに合格した。
当時所属していた事務所のオーディションを受けるために履歴書を送ったのですが、「どの職業を目指したいか」という項目で「歌手」「女優」「声優」「ラジオDJ」など全部に〇を付けたんです。とにかくやる気あります、何でもやります! みたいな(笑)。それがよかったのかどうかは分かりませんが、オーディションに合格できました。
――合格して、実際にデビューしてからの活動はいかがでしたか?
先ほどお話した通りデビュー当時は必死でしたが、それでも憧れの業界で仕事をできているのが夢のようでした。テレビ局やラジオ局に行くだけで「おぉー!」みたいな(笑)。毎日がファンタジーのようで、現実味があまりなかったです。
――中島さんはアイドルがお好きだとうかがいました。そんな好きな方々が近くにいたらどうしてもテンション上がってしまいますよね。
今でも可愛い女の子たちと仕事が一緒になると遠くからずっと見ています。気持ち悪いですよね(笑)。元々、ミーハーなんですよ。ただ、そういう憧れや好きという気持ちは変わらずに持っていたい、ルーティンワークにはしたくないと思って10年活動してきました。
▼活動休止前とは違う自由さで活動できている
――ランカは作中で一躍有名となり一気に人気アイドルとなる「シンデレラガール」で、歌も好きでアイドルに憧れているという側面もあったかと思います。お話をうかがっていると中島さんとランカはリンクする部分が多そうですね。
オーディションを受ける際にランカは「アイドルに憧れる女の子」だと聞いていましたし、当時は年齢も近かったので共感できる部分は多かったです。
――私、実は『マクロスF』が大好きで。Blu-rayも持っているんです。
そうなんですね!
――2008年のTV放送から1年後に上映された劇場版シリーズで、歌も演技も磨きがかかっていくのが目に見えて分かったので、劇場で衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。
当時はテレビ放送を経ての劇場版だったので、明らかな成長をお見せしないといけないと思っていて……。怖かったですし、相当プレッシャーもありましたが、こうやって見ていただいた方に評価してもらえるのは本当に嬉しいです。
――感激して劇場に何度も足を運びました(笑)。すいません。私の思い出話を聞いていただいてしまって……。
いえ! むしろ久しぶりにこうやって『フロンティア』のことをお話できてよかったです。放送から年数が経っているからこそ、いまお話できるのが嬉しい。
――10周年なので、今後もこういう話題が関係者やファンの方からも出るかもしれませんね。
そうですね。楽しみです!
――『マクロスF』をはじめ、デビューしてから華々しい活躍をされていますが、中島さんのなかで転機になったと思う作品はありますか?
緩やかに変わりたい、もっといい自分になりたいという想いでずっと活動してきたので「これ!」というのを挙げるのは難しいのですが、『ポケットモンスター』の映画と『プリキュア』作品に関われたのは嬉しかったですね。私自身が子供の頃にアニメで救われたので、たくさんの子供が見てくれる作品に関われたことがとても感慨深かったです。夢の一つでもあったので、「頑張ってきてよかったな」と思いました。
――その2作品は今でも子供たちに大人気の作品ですね。
『プリキュア』は15周年で、『ポケットモンスター』は私が小学1年生のときからずっと続いている作品です。『マクロス』もですが伝統的な作品に関わらせていただくと一層気持ちが引き締まりますね。そういう作品との関わりによってアニメソングが生まれることもあるので、アニメ作品との出会いが全部私の転機になっていると思います。
――アーティストの面では一旦活動を休止されたのも転機のひとつとして挙げられるかと思いますが、休止前と今で意識することは変わったと思いますか?
変わったと思います。休止前はどうしても、デビュー時のがむしゃらにやっていた延長線上に自分の気持ちがあって……。ずっと青春時代をひきずっているような感覚だったんです。別に周りからそういうのを求められている訳でもなかったのに、10代の頃の元気さを持ち続けなきゃと自分に言い聞かせながら活動していました。ただ、一度休憩してリスナーとして音楽をもう一回聞ける機会をいただけたことで、勝手に自分を縛って活動しても楽しくないし、いいものは生まれないというのが分かって。だからこそ、今は活動休止前とは違う自由さで活動できていると思います。