――雨宮慶太監督が作り上げた「牙狼」ワールドの住人となったご感想はいかがでしたか。雨宮監督と出会った最初の印象もお聞きしたいです。
井上:雨宮監督は、ご自身の好きなビジュアルのバランスというのがあって、そういう部分を感覚的にこちらが理解しないといけない。そういうのを感じることが、「牙狼」との接し方の基礎だと思いました。最初の印象だと、とにかく衣装合わせが何回あるんだってくらい、多かったですね(笑)。
松野井:井上くんも私も、別の作品に出ていたのを雨宮監督が観ていて、それで「今度こういうのやるから出てくれない?」と声をかけてくださったようなんです。まず監督好みのビジュアルで私たちが選ばれたというわけ。最初に私たちがいて、井上や松野井にどういう役をやらせたら面白いだろう?という形で作品を作っていくんです。だからイメージが固まるまで、衣装合わせが何回も続くんでしょうね。
井上:衣装合わせのとき、雨宮監督からは「ここはこうなんだよな~」「ここはこうだよな~」なんて言葉が出てくるんだよね。
松野井:そのときにこぼれてくる「言葉」が大事なんですね。
井上:「ビジュアルで考える」人なんです。そういう意味では、雨宮監督は「デザイン」の人なんだなと感じました。
松野井:ジンガの髪をシルバーにしたのは、流牙との対比を考えて井上くんが提案したアイデアですけれど、そういうふうに役者のアイデアや意見を取り入れてくれる柔軟な現場でもありました。雨宮監督のイメージに合えば、役者のアイデアをどんどん使ってくれるんです。私も、ホクロをつけたらセクシーに見えますよ、とか提案しました。監督の言葉をもらいながら、私たちも監督の世界観になじんでいくという、独特な現場だと思っています。
――映画『神ノ牙』では、井上さんは流牙役の栗山航さんとクライマックスシーンで激しいアクションを展開していました。栗山さんとはやはり綿密な打ち合わせをされたのでしょうか。
井上:みっちり立ち回りの練習を2人でやりました。お互いにいい関係で、素晴らしい映画が出来たと思っています。アクションは1人ではできないんですよ。相手を殴る人がいる一方で、殴られるほうもいる。殴られるほうがうまくやられてくれないと、殴ったほうが強そうに見えないんです。相手を強く見せるために、どうやられるか、気遣いが大事ですね。栗山くんとは、ジンガがこう攻めたときには流牙がこう受けようとか、逆に流牙がこう攻撃したらジンガややられるとか、お互いの見せ方に注意しました。彼とは『-GOLD STORM-翔』で2クール(全23話)一緒にやってきただけあって、そのへんのキャッチボール、意志疎通はすごく充実していましたね。時間ができたら、あっちでアクション練習やろうぜ!といって、2人で立ち回りの手を確認していました。
――先ほどお話が出ましたが、アミリも莉杏との女同士の戦いが迫力満点でしたね。
松野井:ドラマとか舞台とかでアミリがキャットファイトをするときは、「このブス!」とか悪口を叫んだりするんですが、そういうことを何度もやっていると、ファンの方から次はどんな悪口言うかな、とか期待をされているようなんですね(笑)。
井上:『-GOLD STORM-翔』のとき、台本を読んだときのイメージと、雅が現場でアクションをやったイメージがぜんぜん違っていて、「そうか、こうやるんだな」と感心したんです。キャットファイトのシーンがシリーズで続いていき、人気になったのは、雅が自分自身で印象的なシーンにしようと努力したことが、結果につながっているってことだね。
松野井:本当に、いい現場ですよね。